第20話 下僕と麻薬

(お主らの意見よりワシの方が現実的じゃ。それにレアリティも世界一周も地盤が固まったら同時進行も可能になるクエストじゃ。それなら民の誕生は地盤固めに最適な上に犠牲も大丈夫になるじゃろう。)


 ペンサーはヤーミの発言を聞いて嫌悪感を表していた。

 民を守る軍人であったペンサーとして先の発言は民を捨て駒にすると言っている様なものであり、看過できるものではなかった。


(人類と敵対してきたお前がそう言う価値観なのは仕方がないと割り切るが、それをボスと私達に押し付けるのはやめてもらおう。)


(ワシは押し付けるつもりはないぞ。じゃが、手駒はある方が今回の三つ以外にも役にたつ。それは軍人である隊長も知っているじゃろう。この中で一番成果が出るまで時間がかかるかも知れんが、後々の事を考えればコチラを進めていく方が最終的に良い筈じゃ。)


 急がば回れというやつじゃと言うヤーミにペンサーは確かにマンパワーは何に対しても必要だと把握はしていたが、このままヤーミ主導の計画になれば必ずその民は哀しい運命を辿る事になると確信した。


(別にヤーミが今後出来る民をゴミとして扱おう知った事じゃないけど、私はそんな簡単に民が誕生するとは思えないわ。)


 リルリルドールはペンサー程ヤーミの提案に嫌悪感は覚えなかった。

 リルリルドールにとって大切な存在以外は生きようが死のうがどうでも良い存在だからだ。

 ただ、ヤーミの計画は民の誕生前提の話をしていたが、まだどうやって誕生させるかの話はしてなかった。


(リルよ、焦るんじゃない。ワシは前世で自分に適した環境にする為に邪魔な人類や生命を絶滅させたが、自分一種でその環境を維持できるとは考えておらんかった。)


 ヤーミは己の繁栄の為に滅ぼした星で色々と実験をした。

 その結果、自身が改良して生み出した自身の花の蜜が生物の脳に影響を及ぼして知能の質を変える事が判明した。

 そのまま経過観察すると人類のプロトタイプみたいな生物に変化した事を覚えていた。

 その生物は人類と同じになって自分と同じく自身らの生活のために環境を激変させる奴らだと面倒なため絶滅してもらったが、この経験を活かして自分の都合の良い生物を長年を費やして完成させてきたのである。


(前世では人類ぽくなれば、絶滅させてきたが、今回は民の誕生に役立つ力となるのじゃ。)


 人生とは分からないものじゃな。とヤーミは考え深くしているが、それを聞いていた者達は正直ひいていた。

 ただ、それだとプロトタイプだけでも数百年、その後、民になるだけでも数千年、手助けしなければ数万年掛かる所をラックが出したSSRの生物とクルの恩恵を利用する事で大幅に時間を短縮する事ができると推測していた。


(そして、そこにブーストをかけるのが、このアリアドネじゃ。)


 ヤーミは隣に置いてある植木鉢に向けて言った。

 アリアドネは種の状態でも外の状況をちゃんと理解している様で、芽は出てないが植木鉢の土に根は張っているので、植木鉢をカタカタと鳴らして返事くらいはしていた。


(お主らが地上で探索している間、ワシがセッセコと根を伸ばしているだけな訳がないじゃろう。ラック様に同じ植物としてアリアドネの成長に役立てるのではとアリアドネの情報を教えてもらったのじゃ。)


 通常のアリアドネの蜜はその圧倒的な甘味から病みつきなって再現なく売れると言われていたが、その実、アリアドネの蜜の甘味は糖ではなく、全く新しい麻薬成分から来るものだった。

 その成分は大麻の数倍の依存性を誇っているが、それは何も醸造しなかったらの話であり、麻薬として血液から摂取した場合、それは数百倍に跳ね上がる凄まじい幻覚症状と依存性を発揮する危険なものであるが、体を蝕む様な症状は一切起こさない不思議な症状が発現する為、精神のみ蜜の虜となって永遠に求めるゾンビと化すのだ。


(で、そんな危険な蜜を使ってどうするつもりなのよ。)


(ヒヒヒ、ワシの蜜も摂取を促すために依存性はあるが、前世の実験の結果、依存性があった方が成長が速かったのじゃ。)


(欲求を強くする程、それを得る為に考えを巡らすという訳か。)


 その通りとヤーミはペンサーの意見を肯定した。

 知能が高い、低い関係なく欲を満たす為に暴走する事は荒療治ではあるが、成長させる為に手っ取り早い方法だった。

 その欲求を強く、そして増やす事で更にブーストを掛けようとしていたのだ。


(ヒヒヒ、幻覚症状は神や妖精など目に見えないものを信じ込ませるのに役立つものじゃ。そこにラック様と言う幻覚じゃない。本物の神に等しい人を見せる事で人心掌握も円滑に進むと言うものじゃろう。)


 発展した人類にとっては厄介な幻覚症状や麻薬成分も使いようによっては役立つと長年の経験をヤーミは語った。


(まぁ、それをするかはラック様のご意志次第じゃ。)


 そんな事を言うヤーミだったが、自分の意見こそラックに選ばれる思っているのがありありと分かった。


(ボス、どうされますか。)


 まだ意見を出していない者もいるが、この時点でどうするかをペンサーはラックに委ねる事にした。

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ライフルガトリング世界のシェルター生活 栗頭羆の海豹さん @killerwhale

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