第19話 異質な教会
ラロラロドールはリルリルドールを見つめながら自分の意見を語り出した。
(私はペンサー隊長の案を指示するわ。私とお姉様が主様のソリを引けばどんな道でも、敵でも障害にはならないわ。それに世界一周は前世での経験もあるわ。主様には傷一つ着ける事なく終わらせるわ。)
(確かに私達なら可能でしょう。でもね、主人様に万が一の事があったらいけないのよ。それにどれくらいの時間がかかるのか大体の予想しか出来ない現状で酸素ボンベも食糧も水も拠点組にどれくらい用意しておくのか、計算が狂ったら死ぬのよ。)
未だSSRの配下を復活させるだけの金を用意する事は容易くなかった。
食糧も、水も、酸素ボンベもラックが購入する場合、ラックの元に来るのだ。拠点組に渡す事が出来ない。
だから、その分を残しておく必要があった。
世界一周する場合、全員での移動がベストだが、それでも復活可能三体以外が死ぬ可能性もあるのである。
リルリルドールもクエスト達成率は世界一周が一番高いとは思っているが、犠牲ありきの達成は地盤が固まっていない今の状況では痛いという考えだった。
そんなリスクよりリスクが少ないかつ達成率が高いレアリティ上昇が良いと考えていたのである。
(そんな事はない。私達ならどんな困難も乗り越えられる。それに勝算はある。)
(ペンサー、何を根拠に言っているのよ。私は現状の戦力を見て誰か犠牲になると思ったのよ。それに復活可能な三体が犠牲になっても復活するのは拠点なのよ。合流まで時間がかかるわ。それに復活可能が犠牲になる事を前提に動いて万が一主人様が傷つく事があったら貴方は責任を取れるの?)
(・・・私は犠牲覚悟に動くつもりはない。言ったはずだ、勝算ならあると。)
ペンサーの自信のある発言にリルリルドールは何処からその勝算が来ているのだと思った。
その瞬間、リルリルドールはある事を思い出した。
そして、憤怒の顔を見せてペンサーを睨んだ。
自分が思った事を主人様にしようとしているのならペンサーの事を許すつもりはなかった。
(お前の思っている通りだ。)
(ふざけんじゃないわよ。あれはイかれた建造物よ!あの中に入ったら確かに力は手に入るわ!でも、何かを失う!貴方はそれでもそんな危険な事を主人様にやらせるつもり!!)
(それも私達が見て判断した事だ。ボスなら別の判断を下すかもしれない、それを見てからでも遅くないだろう。)
ペンサー達が言っているのはガチャで当てたあの曰く付き教会の事である。
ペンサー達は初めて地上に出た時、それを見た。エレベーターから少し離れた場所にそれは建っていた。
それは神聖と言うにはあまりにも異質。教会に選ばれた者に大いなる力を与えるが、あれはタダで与えてくれる様なお優しいものではない事はペンサー達は長年の経験から察していた。
それにあの教会はラック以外を拒んでいることも理解していたが、ラックには決して入らない様にと言っておいた。
そして、ラックは配下の判断を素直に受け止めたのだ。
でも、ペンサーはあの教会からは悪意も感じてはいなかった。ただ異質で身体も精神もあの存在を拒んでいるのだ。
(ヒヒヒ、いいじゃないさね。やってみたら。)
(ヤーミ、貴方分かっているの?あれは・・・)
(知っているさね。ワシはずっと地上であれの気配を常に感じているのじゃぞ。あれは世界から恐れられたワシですら霞む程の異質な恐怖を感じるが、隊長と同じくラック様への悪意は感じないぞ。)
リルリルドールはそれでもラックにとって危険な可能性が消えた訳ではない。
あの教会からはそこ知らぬ恐ろしさがあった。
(まぁ、良い。それもラック様が世界一周を選んだらとしたら良い筈じゃ。それよりワシにも話させてくれんかのう。)
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