第17話 下準備の下準備

(ヒヒヒ、これは魔力増幅機じゃな。)


(ヤーミ婆ちゃん。知っているの?)


(ヒヒヒ、滅ぼした星の一つにこれを使っている人類がいたのじゃ。見た所、このアクセサリーを付けた者は魔法使用時に補正が掛かるのじゃ。暴発した時の威力も増すのじゃが、ワシらなら問題ないじゃろう。)


 火山地帯から戻ってきた4体はラック達に今回の戦利品を見せていた。

 その中でもダイヤが自身たっぷりにラックに献上した例のアクセサリーは闇の中でも存在感を放ちながら魔性の光を強めていた。

 ラックが持った瞬間、飼い慣らされた負け犬みたいに光を大人しくした。それはまるでラックの事を怖がっている様だった。

 そんな意思を感じる様な反応をする宝石をヤーミは心当たりがあった。

 それは前世で生息地に改良した星の一つの人類がよく所持している物に酷似していた。

 自分の繁栄に邪魔な人類を消し消されの関係を続けてきたので、あの宝石の類が人類の攻略の鍵だとして徹底的に調べた時があった。

 ヤーミはこの宝石は壊れたり、所有者の手元から離れたら効果がない事を知ったのである。

 魔法や魔力についてはそこまで調べてなかった。そもそも、自身の生命力を超えて根絶やしにするほどの殲滅力は人類にはなかった。

 だからこそ、その殲滅力を獲得する可能性がある魔力増幅器を脅威と見て調べ上げたのだ。

 その一番の対処法が魔法の暴発だった。

 単純な暴発でも下手したら指一本吹き飛ぶ威力があるが、最悪、四肢欠損が、この魔力増幅器による暴発は即死レベルになる。

 例えると包丁で怪我するのと調理レーンで自身事故が起きるみたいな違いである。

 ヤーミはその事故を自分を巻き込んで起こす事で確実に人類にダメージを与えていた。

 ダイヤが持ってきたのはヤーミが見た中でも最高品質の物なので、そんな物がこのラック以外のメンバーで暴発しようものならここら一帯を巻き込む大事故になるだろうとヤーミは推測した。

 その自爆戦法の知識がこんな形で生きるとは前世のヤーミが聞けば笑い飛ばすだろうとヤーミは心の内で苦笑していた。


(・・・・・・)


(どうしたんじゃ?隊長。)


(あぁ、この宝石、私もどこかで見たと思ったんだが、この宝石とは少し色も加工されていて形状も違っているが、私の世界では銀の銃弾の様な特定の敵生物に対して特攻効果を持った銃弾に似ているな。)


 ペンサーの世界には摩訶不思議な特定の条件でしか完全に殺す事ができない生物も存在した。

 そんな生物の中に特定の材料が効く者もいた。この宝石はその材料で出来た銃弾に酷似していた。

 ペンサーの世界ではこの宝石に似た物質はかなり希少でコストが馬鹿ほど掛かるという事で代替品が完成してからは決して使われなくなった骨董品の類だったが、財産になるので持ち運び可能な換金アイテムとしてペンサーは所有していたので覚えていた。


(なら、このアクセサリーはとっておこう。)


(よろしいのですか?今回の戦利品の中で一番の高値の筈ですが?)


(確かにこのアクセサリーはかなりの高値がついているが、構わない。ダイヤがワシの為に拵えてくれた物だ。これは大切に使うよ。)


 ありがとう、ダイヤ。と大切に首に着けるラックを見てダイヤの心は自身の主人に喜んで貰える事がこんなにも嬉しい事なのかと歓喜に満ちていた。

 そんなダイヤを見てリルリルドールは嫉妬を表情を浮かべていた。

 自分もちゃんと成果を上げているが、それだけである。まだ、自分に相応しい栄誉を与えられるだけの成果を上げれていない自分に怒りを覚えながら、何をすればラックに喜んで貰えるか思考を巡らしていた。

 そんな姉の心を見透かしているラロラロドールは焦らなくてもチャンス必ず巡って来ると冷静に思考してチャンスを逃さない様にトレーニングメニューを考えていた。

 ラックはダイヤから貰ったアクセサリーを見て、昔、孫がビーズで作ってくれた手作りアクセサリーを思い出して懐かしんでいた。


(ダイヤもペンサーもリルもラロもよくやった。今回の遠征で大分、金銭にも余裕が出てきた。)


 ラックの真剣な表情に皆は整列して静観していた。

 主人の言葉を一言一句逃さない様に集中しているのだ。


(ワシがこの星に誕生して凡そ1ヶ月、ワシらはこれから本格的にクエスト遂行に着手する。)


 クエスト

 それは神から与えられる試練であり、通常は簡単なものから難しいものまで千差万別ある中、ラックに与えられるクエストは地獄から超地獄みたいな難易度になっていた。

 ラックは最低レベルのクエストでも下準備に年単位は余裕で掛かると予想していたが、ペンサー達の成果によって大幅に短縮する事ができた上に、ペンサー達の実力もラックが考えていた以上という嬉しい誤算があった。

 その為、計画を前倒しにしてクエストクリアに着手する事にした。


(さぁ、クエスト開始だ。)

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