第15話 フェニックス戦
(はっ!そんな温い攻撃で私の皮膚を貫けるわけないでしょう!!)
「きぇ!!!」
フェニックスはマグマの中でダイヤに向かって超高温の鉄すら一瞬で蒸発させる程の炎を吐き出すが、マグマでも傷一つつかないダイヤの皮膚にダメージを与えるには低温だった。
避ける必要もなく、炎を意に介さずそのままフェニックスへ体当たりした。
(はぁ、さっさと片付けないとボンベが溶けるなぁ。)
ダイヤは自身の魔力でボンベをコーティングして耐熱性を上げているが、それでも長時間マグマに付けていたら溶けてしまう為、あまり遊んでおく余裕はなかった。
ダイヤの世界にも魔力はあったが、その圧倒的な肉体と生存競争に巻き込まれる前に自分以外の殆どが絶滅してしまった上、自身の身体を魔力で強化する以外で使って来なかった為、まだ装備品に魔力を通すのは苦手だった。
「きぇぇぇぇ!!!」
(きぇ、きぇ、五月蝿い鳥だこと。さっさと・・・死ね。)
変わらず炎を吹くフェニックスに獰猛な表情を出すダイヤは体当たりをした瞬間、首筋に噛みつき頚動脈を噛み切った。
久しぶりの戦闘と生きた肉を噛む高揚感にダイヤは興奮していた。
「ギェぇぇぇ!!」
(へぇ、不死鳥にも血は通っているんだ。)
勢いよく首から血を吹くフェニックスに意外そうに見るダイヤは傷口が徐々に治っているフェニックスに対して、やっぱり再生能力持ちは面倒だなと口についた血を舐めて思った。
フェニックスの血は以外と美味しく活力が増す様な感覚は精力剤を飲んだ時に近いのではとダイヤは不思議な感覚を楽しんでいた。
(長引きそうなら変わろうか?)
(必要ないです。この程度の鳥、私程度で十分です。)
ダイヤがフェニックス相手に手こずってそうに見えた再生持ちの対処法も心得ているペンサーは手本を見せようかと提案するが、ダイヤは断った。
自分が召喚された中で実力が下である事は重々承知だが、この程度の鳥を殺せないと思われるのは心外だった。
(はぁ・・・大人しく死んでおいてよ。)
「キェ、キェ。キェェェェェ!!!!」
傷口を再生させていたフェニックスはマグマを勢いよく食べていた。
圧倒的な大地の力を吸収して己が力に変えていたのである。
その力に内部から自壊しているのを、持ち前の再生能力で無理矢理姿を留めていた。
フェニックスはマグマの力体内で圧縮、熱量を桁違いに上げた炎をダイヤに放った。
(マグマを食べれるのはお前だけじゃないんだよ。)
「キ、キェ・・・」
フェニックスは目の前に起きている現象を理解できていなかった。
自分が放った必殺の炎がダイヤが食されていた。
今まで見た事ない光景にフェニックスは唖然としながらダイヤを見ていた。
今までこれを放って死ななかった生物はいなかった。
ダイヤは前世で空腹すぎてマグマを食べて生き延びようとした時があったが、一切栄養になる事がなかった為、仕方なく死肉を漁って生き延びたのち飢餓で死んだ。
(お返しするわ。)
「キ・・・」
ダイヤの体内でより圧縮して放たれた分厚い熱線がフェニックスを呻き声を上げさせる事なく、一瞬にして身体を蒸発させた。
(ふぅ、この星のマグマは不味いね。)
口内から感じたマグマの味が前世より質が悪い事に文句を垂れていた。
何より食感がダメだった。
マグマとはドロっとしたところに歯応えの良い食感があってこそなのに、この星のマグマは温度が高い為、ドロっとした食感がサラサラとした液状になっていて不味くなっていた。
例えるなら果肉がなく水で薄められた激薄なジュースである。
(ふふん、やりましたよ。)
(上出来だが・・・再生持ちの獲物の場合、より生死を確認してから背を向けろ。)
胸を張ってマグマから出て来るダイヤの背後に近づいて来るフェニックスの姿を見逃さなかったペンサーは羽から斬撃を無数に飛ばしてフェニックスを一片も残さず粉微塵にした。
ダイヤは自分に掠りもせず、背後に立つフェニックスを正確に切り刻んだペンサーの実力に本当に自分の同じSSRか疑問に思うとともに上位陣との実力の差を悔しんでいた。
(すみません。)
(いや、さっきも言ったが、上出来だ。あのレベルの生物を一方的に倒せたのは流石、竜と言った感じだ。)
負けず嫌いなダイヤは褒めてくれるペンサーの言葉を素直に受け止める事は出来なかった。
フェニックスがあの一線を受けて生き延びたのも死を察知した瞬間に尾を自切して、そこから再生したのである。
(早く行くわよ。早くそのマグマを振り払いなさい。)
落ち込むダイヤをリルリルドールは背に乗せるのにマグマは邪魔だから。落としなさいよと注意した。
ダイヤは犬が水を振り払う様にマグマを振り払った。
(落ち込む必要はないわ。貴方はまだ成長期なんだから。私達の世界の竜でも貴方の歳で貴方ほどの実力を持っているのは少なかったわ。)
ラロラロドールは気を遣って言ったつもりだが、ダイヤにとって一番じゃないと意味はない。今はリルリルドールがラックにとって一番の配下である事を認めているが、今の立場で甘んじているつもりはなかった。
(必ず、私が一番になって見せる。)
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