第14話 南の地
(気をつけてな。)
(はい、必ずご主人様の元に無事帰ってきます。)
(私がいるんだから。死ぬ訳ないのに主様も大袈裟ね。)
(お姉様、仕方ありませんわ。ダイヤは死んだら暫くは生き返れないのですから。)
ダイヤの覚悟の決めた表情を裏腹にリルリルドールは気軽に行けと水を差す様な事を言って妹に注意されていた。
今回向かうのは南側。
熱風が常に吹き込んでくる為、マグマがあると狙いをつけて向かうのである。
因みにミスリーアダマンタイト鉱山があるのは北寄りの西側である。
今日の目的は宝石の加工及び周辺環境調査である。
編成メンバーは前回、ペンサー隊長、リルリルドール、ラロラロドール、そして、ダイヤの四体である。
(魔力装填完了だ。さっさと行くぞ。それとここからは念話で話すぞ。)
今回行く所はミスリーアダマンタイト鉱山から距離がある為、念話を阻害する物がないと現状予想されている。
その為、念話が阻害されればミスリーアダマンタイトの様な物や生物がいると分かるレーダーの役割が可能と、という事で今回の調査には念話を使う事にした。
エレベーターで地上に上がったダイヤが見た光景は血と鉄の同種の匂いで気分を害していた。
少し鉄が当たったダイヤだったが、ダイヤの体には擦り傷すらなかった。
(了解。)
(それにしても聞いていた通り、酷い光景ね。私の星の終わりよりマシだけどね。)
(ガチの死の星と化した星に比べてマシな時点でおかしいのよね。)
ダイヤが見た前世の最後の光景はまさにこの世に地獄だった。ダイヤの死後も大災害は続き、後世に再び生まれた文明の調査によればその時代に棲む95%の生物が死ぬほどの凄まじい大量絶滅が起きたのだ。
その地獄を見たダイヤからしたら、まだマシな評価だった。
ラロラロドールはそんな真の地獄と比べてマシレベルな星で生態系があるのがおかしいのではと不思議がっていた。
(そんな事より既に熱いわね。)
(そうですね。お姉様。砂の中にチラホラガラスが混ざっていますわ。)
南へと走り出したトナカイRX姉妹は数分進んだだけで環境が一変した事を肌で感じていた。
前回調査に行ったのは日が落ちてからだった。トナカイとペンギンどちらとも寒い土地に棲む種族だった為、暑さより寒さの方が活動しやすいと判断してのことだった。今回の調査も日が落ちてからの調査だが、少し南に行っただけ地上全てが熱された様な感覚に陥った。
(面倒ね!)
(あまり怒ると身体だけじゃなくて心まで暑くなるぞ。)
(隊長は黙って調査の事だけを考えてなさいな!)
南では本当に鉄の雨が吹き荒れていた。
拠点近くに降っている鉄は固体である。つまり、天候に例えるなら雨より雪が正確だった。
しかし、南側の熱波によって地表近くでも液体のまま風に乗ってくる鉄はまさに雨。
今まで角で弾いていた方法が使えなくなっていた。
だから、トナカイRX姉妹は力一杯角を振り回して風の防壁を最高速度に乗る前から作っていた。
リルリルドールが不機嫌なのは鉄への対処が面倒になったからではなかった。
雪が雨になったタイミングで運悪く角で弾こうとした為、自慢の角が鉄で汚れてしまったのである。その上、ラロラロドールは姉の当たる瞬間を見ていたので、瞬時に対処法を変えて角が汚れるのを免れて、自分だけ汚れたというのも不機嫌ポイントだった。
(お前な・・・じゃあ、こう考えろ。角が汚れたならボスに綺麗に拭いてもらえるじゃないかと。)
(・・・そうね!主様にいっぱい磨いてもらいましょう!!)
リルリルドールが不機嫌なままだと調査に支障が出るかもしれないとペンサーは考えてフォローした。
まんまと機嫌を戻したリルリルドールを見てダイヤは単純な奴と思った。
(止まって!)
(どうかしました?ダイヤ。)
(マグマの匂いがする。下!)
ダイヤが感じたのは前世で常に匂っていたマグマの匂いだった。
自身もマグマに呑まれて生死を彷徨った事によってマグマに対してどの生物より敏感になっていた。
その感覚を信じたトナカイRX姉妹は瞬時にその場から離れた。
その瞬間、皆がいた場所が噴火してマグマに包まれていた。
一瞬でもダイヤの察知が遅れていたら、マグマに呑まれる事はなくても無傷で済むことはなかっただろう。
(助かったわ。ダイヤ。)
(あぁ、まだ火山から離れているのに砂漠の下から噴火するとはな。)
(それはこの場所があの鳥の縄張りだからよ。)
リルリルドール達はダイヤに感謝しながら噴火場所から一切目を離してなかった。
それはマグマの中に生命を感じていたからだった。
ダイヤだけがマグマとほぼ同色の生物を見分けていた。
(フェニックス。予想していましたが、予想より厄介ですわね。)
(ラロ達は此処で待っていて。あれは私が狩ってくるわ。)
火山地帯に行くとなってラックが言っていた生物がいた。
それがフェニックスである。
ラックが初めて引いた原生生物であり、この星初めての外来種である。
もう既にゴトンに記載している情報の生態ではない可能性が高い生物であり、火山地帯で厄介な相手だと判断されていた。
トナカイRX姉妹を警戒してマグマから出てこないフェニックスはこちらの隙を伺っていた。
ダイヤはそんな弱腰の鳥に足止めされているなんて気分が良くなかった。
何よりラックに任された仕事を邪魔する者は誰であっても狩り尽くすつもりなのだ。
(この環境に適応して絶滅しなかった事には敬意を称するけど、私の邪魔をするなら折角生き延びたその血を絶滅させる事になるわよ。)
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