第13話 研磨と加工
シェルターの暗闇の中でシャコシャコとリズミカルな音がなっていた。
ラック達は今、ミスリーアダマンタイト鉱石を万能砥石で磨いていた。
トナカイRX姉妹やハヤサみたいな手のない種族も脚を使って器用に磨いていた。
(磨き終わったのは宝箱にしまっていってね。)
(分かりました。ボス。)
この会話は念話ではなく、手話やモールス信号などによる視覚と聴覚を使ったコミュニケーションをとっていた。
因みにこれは他の配下達も念話を極力使わずにしていた。
それはこの星の地上ではミスリーアダマンタイトがある上にこれからしていくガチャで同じ様な現象が発現する可能性がある為、会話方法は多様にしていく方が良いとのラックが判断して皆が賛成した結果だった。
(やっぱり磨いた鉱石の方が高値になっているな。)
(そのようですわね。これに基づくなら炉でインゴットに加工したら更に高値になりそうですわ。)
(リルや。あまりラック様の邪魔をするじゃない。)
(ふん!ヤーミ婆はさっさと水を見つけなさいな。)
(言われずともやっておるわ。お主こそさっさと他の者達と一緒に石ころを磨いておれ。)
(やめんか!馬鹿ども!バスの前で恥ずかしい!!)
頰を擦り合わせてラックにベタベタするリルリルドールにヤーミが注意すると、不機嫌を隠そうとしないリルリルドールは嫌味っぽく言った事に煽られていると感じたヤーミは少しカチンと来ていた。
その無駄に磨いている蹄でセコセコと石ころを磨いていろ。ワシはラック様に任された唯一の仕事があるんじゃとこれまた挑発したヤーミはバチバチとラックを挟んで睨み合っていた。
ラックはこの様な女の戦いに男が口出すのは無粋だと黙々と鉱石を磨いていた。
ペンサーは騒がしい馬鹿二人を叱りつけて黙らそうとした。
((五月蝿い!!))
(ペンサー。辞めておけ。女の戦いは何処の世界でも邪魔したら災いが降りかかるもんじゃ。)
触らぬ神に祟りなしとスッとペンサーの隣に場所を移動してラックが静かに止めた。
(ラック様。こんな感じかな?)
(クマ、良い感じじゃ。それでミスリーアダマンタイト鉱石は終わりじゃから。次は宝石の原石を磨いてくれ。)
(分かった〜)
マイペースなクマに癒されながらミスリーアダマンタイトが大体磨き終わった。
ラックはゴトンで売値を見ていたら一つだけ異様に高いミスリーアダマンタイトがあった事に気がついた。
(・・・・・・これか?確かに他と比べて少し違うか?)
まだまだ闇の中で微妙な違いを見分けるには視覚が強化出来ていない為、確かな自信はなかった。
でも、手触りとしてもこれと他のではちょっと違っていた。
(それはメタンが磨いていた物です。)
(ほう。こんな事も出来るのだな。)
ペンサーがラックの手に持つ物はメタンが磨いていた物だと隣にいたメタンが丹念に磨いていた事を知っていた為、他と何か違う可能性があるとよく観察して覚えていたのである。
ラックはまだミスリーアダマンタイトを磨いているメタンを見てみるとメタンは砥石を使わずに自身の肉体に取り込んで余分な物質を溶かして消化していた。
こんな事ができるって経歴に書いていたか?とラックは疑問に思っていた。
(これは私が教えた食物分解魔法の応用ですね。この魔法は食べ物だと心から思っていないと作用しない魔法なのですが、メタンはミスリーアダマンタイトを食物に認識しない代わりに他の物は食べ物と認識する事によってミスリーアダマンタイトだけを抽出したのです。)
圧倒的な毒耐性と部分的に意図して認識しない事ができる知能があるメタンだからこそ出来る芸当である。
分解速度は本能に任せている時とは違って使った事ない理性的な分解なので遅くなっているが、それでも続けていけば変わらない速度で分解ぎ可能になるとメタンは確信していた。
(これなら磨くのはメタンと他数名に任せて、ワシらは宝石の加工に着手するか。)
より良い研磨法が確立出来るなら積極的に伸ばした方が良いとして研磨のことに関してメタンに全面的に任せる事にした。
ラックはミスリーアダマンタイトは溶かす術がない為、まだ加工しやすいと判断した宝石の加工に人員を割く事にした。
(加工するにしても指輪にするにしてもリングは無いし、ネックレスにしようにも糸がないけどどうするか・・・)
(・・・私なら多分、時間さえ頂けたら加工出来ますわ。)
(マジで!ダイヤ!)
(五月蝿いわよ。ハヤサ。私が出来るって言っているんだから。出来るのよ。ですので、この加工作業の仕事は私に任せてくれませんか?ご主人様。)
(・・・分かった。許可する。何か必要なものがあるなら出来る限り協力する。)
(それなら次回の地上探索には私も同行させて頂く許可を下さい。)
ダイヤは何か考えがある様で凄く自信に満ちた顔でラックに許可を申請した。
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