第11話 遂に!採掘!ミスリーアダマンタイト!

(これは凄いな。流石皇帝様と女帝様だ。素晴らしい走りだ。前世の戦場すら希望に満ちた天国と思わせるほどの銃弾の嵐をまるでそよ風のごとくあしらうとは。)


(ふふ、当然。こんなただの鉄の球。かわすのは容易いわ。)


(お姉様、強がらないで下さい。全方位から来る銃撃の障害なんて前世でも走った事ありませんわ。流石に疲れますわ。)


 専用の呼吸器を付け、酸素ボンベを背負ったリルリルドールとラロラロドールは背中にペンサー隊長を乗せながら鉄の嵐の中優雅に走っていた。

 全方位から襲いかかってくる銃弾を角で弾きながら進んでいた。

 それでは前方の玉しか防げない所を弾く角度から跳弾させて左右、背後の玉も見る事なく防ぐ事ができた。


(まぁ、もうすぐ最高時速でるからこんな小細工要らなくなるけどね。)


 リルリルドールとラロラロドールは更に速度を上げた。

 音すら容易に置き去りする速さは二体の身体を守る風の鎧を作り出す。

 風の鎧を突破出来ない鉄の銃弾は弾かれて霧散する。

 そう、鉄は・・・


(こ、ここ・・・か、)


 プチンとペンサーから念話が途絶えた。

 ペンサーが振り落とされた訳ではない。間違えなくリルリルドールの背中にペンサーは乗っている。

 この念話はペンサーの世界で考案されたもので、地上に昇る前にペンサーが皆に教えたものだった。

 ラックだけは技術と魔力不足でする事はできなかったが、他の者達の中にはラックの前世と同じく魔力が存在しない世界出身の者もいたが、そこはSSR以上に選ばれた人材だけあってすぐにコツを掴んで実践してみせた。

 特にトナカイRXの二頭は教えたペンサー以上の精度で念話を操る事を一瞬にしてマスターした。

 天才中の天才であるSSRだとしてもGRの才覚は格が違った。

 この念話は魔力を介して相手に言葉を送っている。

 それが途絶えたという事は魔力を妨害するものが発生したという事だ。


(思ったより近かったわね。)


(そうですね。お姉様。此処がミスリーアダマンタイトの鉱脈がある鉱山。)


 3頭が来たのはミスリーアダマンタイトの鉱脈だった。

 これはラックが提案した訳ではなかった。

 十体の総意で自分らの運用方法に悩んでいた主人に対して、己の価値を示すためにペンサーが提案した。

 地上にて自分たちの活動許可と換金出来る獲物を取ってくるというものだった。

 自分の食い扶持は自分達で稼ぐ。それが出来る能力も持っている事を主人に示す機会が欲しい。

 それが十体の総意である。

 この3頭が選ばれたのはラックが三体の配下までなら資金が無くても復活可能という縛り特典があるという事から3頭と制限した。

 本来ならより防御を固めて安全策を取ってから地上に送り出したかったが、そんな事を言ってる余裕がないラックは悩んだ末に賭けに出る事にした。

 貯金としていた鉱石も売って最低限の装備を3頭分揃えた。

 次に狙う獲物を指定した。

 アブリウルスなどの生物も良いが、銃弾が飛び交う中であの巨体を運ぶのはトナカイRXであっても状態良く持ち帰るのは厳しいと判断した。

 リルリルドールは余裕ですわ。と隠す気もなく不満げな表情を出していたが、ラックはそれを優しく宥めて頼んだ。

 目的はミスリーアダマンタイト。

 現状把握している中でキロ単価が一番高い獲物だった。


(やっぱり隊長と連携が取れないのは不便ですね。)


(仕方ありませんわ。双子である私達とは違って隊長ではミスリーアダマンタイトによる魔力妨害を掻い潜る手は現状ありませんから。)


 ミスリーアダマンタイトが念話を妨害する魔力妨害を発生させる事はペンサーが他の者に念話を教えている時に発覚した。

 ミスリーアダマンタイトは微量に魔力を放っていた。

 それが砂塵の様に細かく舞う事によって魔力妨害をする障壁と化す事をペンサーはミスリーアダマンタイトの特徴から予想出来ていた。

 だが、それは対して問題ではなかった。

 酸素ボンベを付けている状況では言葉を発する事は出来ないが、大半の動物は言葉を介してコミュニケーションを交わさないことは良くある事である。

 つまり、コイツらにとって何となく相手が何して欲しいのか察する事なんて産まれた時から出来て当たり前の芸当だった。


(隊長、出番ですわよ。)


 ペンサーはリルリルドールに言われなくても既に準備は完了していた。

 ペンサーの嘴に魔力が集まるとリルリルドールの背中から発射してペンサー自身が回転して鉱山に向かってドリルの様に掘削し始めた。

 掘削している面積はどう見ても小さいペンサーの身体より二回り以上大きかった。

 数分、鉱山の前で二頭が飛んでくるミスリーアダマンタイトの破片で角や蹄を器用に研いでいると、ペンサーが戻ってきた。

 その表情から鉱脈を掘り当てた事を理解した。

 リルリルドールはラロラロドールの背中に括り付けられていた四次元宝箱に器用にペンサーが鉱脈から出してくるミスリーアダマンタイト鉱石を入れていった。

 ただペンサー一匹では掘るのも限界があるので数時間続けた後に3頭は採掘作業を止めた。

 採掘した中にはミスリーアダマンタイト以外にも宝石の原石など価値が高そうな物もついでに放り込んでいた。


(ねぇ、帰りに何かいたら狩っていいわよね。)


(良いんじゃありませんか?主様もたまにはお肉食べたいでしょう。きっと喜んでくれますわ。)


 ラックに褒められる事を考えてウキウキで帰る二人をよそに今回の成果と鉱山までの道筋、そして、次回の編成を考えるペンサーであった。

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