第10話 これがSSR以上人材の経歴・・・

(嘆いても仕方がない。この状況を打破しないと。)


 取り敢えず厳選ガチャはもう引かない。とラックは決めた。

 これ以上、動物が増えたらそれこそ全滅エンドである。


(そもそもコミュニケーションはどうとる?会話は極力避けたい。)


 酸素が急激に減っている状況でさらに追い打ちをかける手は取りたくなかった。

 そんな悩んでいるラックの肩付近を叩かれた。


(?誰だ?・・・トナカイか?立派な角があるし、多分、そうだろう。)


 後ろを振り向くといつの間にか背後に立っているトナカイRXのリルリルドールが立っていた。

 絶対皇帝の異名を持つに相応しい存在感をこの暗闇でも放っていた。

 周りを見てみると他の動物は静止して極力酸素を消費しない様に行動している様に思えた。

 動物は空気を読むのが上手いと聞いたことがあるが、言葉を話さずとも今の状況をラックの姿から推察したのだ。

 前世の動物達と比べたら圧倒的な知的さを感じ取ったラックは流石、SSR以上能力はかなり高いと驚愕していた。

 そして、どうやら動物達間の格付けは済んでいる様でリルリルドールがこの群れのNo.2。

 つまり、ボスたるラックに一番最初に挨拶出来る権利を獲得したのだ。


(これはご丁寧にどうも。これから宜しく。)


 リルリルドールが暗闇でも分かりやすい丁寧さで頭を下げた。

 そこにはラックに対しての畏怖と忠誠が伺えた。

 その姿は騎士が王に忠誠を誓っている様な堂々とした立ち振る舞いがあった。

 前にも誰かに忠義でも誓っていたのかなとラックは思ったが、そんな事よりいきなり召喚されたのにこんなに忠誠心が高いのはどうしてだとラックは疑問を浮かべた。

 そんなラックの機微に気が付いたのか、リルリルドールはスタンピングして他の動物達に指示を出した。

 一踏みしかしていないのに動物達はリルリルドールの言いたい事が全て理解しているかの様にラックの前に整列し直してからリルリルドールと同じ様に頭を垂れた。

 一糸の乱れもない姿におぉ、と拍手を送りたくなったが、そんな事をしている暇はない。

 そもそも疑問の答えではない。全員が何一つ不満もなくラックに忠誠を誓っていることは理解できたが、より意味不明になった。

 アリアドネに至っては新芽すら土から出ていないのに首を垂れていることだけは何故か理解できていた。

 よく分からない集団と化している為、動物達には楽な姿勢になる事と待ってという趣旨だけをジェスチャーなどを使わなくても伝わった。

 賢すぎるだろうとラックは心中で賞賛した。


 SSR

 水兵特殊部隊隊長ペンサー

 水中戦にて無敵の部隊と言われたアクアン水兵特殊部隊。通称水獣部隊の隊長を務めたペンサーはペンギンという部隊ないでは非力な方だったが、類稀なる戦闘センスと柔軟な発想から一兵卒から隊長まで成り上がった実力者だったが、敵の策略によって戦死した。


 アリアドネ(変異種)

 清らかな水と豊かかつ聖なる土地にしか芽吹かないと言われているアリアドネだが、この種子の母体はアリアドネの蜜を狙った密猟団によって密猟された時に抵抗した母体は返り血を浴びてしまい、それを吸収してしまった。邪悪なものを取り込んでしまったが為にアリアドネ(変異種)の種子が誕生した。

 聖なる森の番人を代々務めているエルフの巫女によってその種子は回収と浄化を試みられたが、あまりにも邪悪に変異してしまった事によって件のエルフ巫女では浄化は不可能という事で種子は秘密裏に火葬された。


 金剛竜(幼体)ダイヤ

 金剛竜は竜種の中でも最高硬度を誇る肉体を持っている。

 ダイヤはそんな種族中でも産まれながら最高硬度の肉体を持って生まれた。

 金剛竜が唯一柔らかい時期である出産直後の時ですら圧倒的に硬い肉体で産まれた為にダイヤは難産で出産された。

 そんな穏やかな日常を送っていたが、ある日その世界で大量絶滅を引き起こす大地震が世界各地で起こった。

 棲家であった火山も噴火し、両親を含めた一族全員マグマの下に沈んでいった。

 ダイヤも一緒に沈んだが、圧倒的な肉体によってマグマすら耐え切ったのだが、植物も大半枯れ果てた星に肉食動物の生きていける場所はなかった。

 最終的に餓死した。


 テラーイーグル ハヤサ

 3メートル越えの鷲だった。

 最高速度は時速400kmにも達していた。ハヤサはその群れの中でも断トツで速かったが、星の寒冷化によって棲家に出来る場所と食べ物が激減した事によって絶滅した。


 ニョグ メタン

 スライム状と肉塊色の肉体は正に不気味。

 しかし、その見た目に反して通常草食であり、植物のない土地ではドクターフィッシュの様に生き物の体の毒素などを食べて過ごす生態をしていたが、その見た目から奇形害生物として人々から嫌われていた。

 その結果、環境保護という事を知らない人類はニョグ達を絶滅させる為に毒を散布した。

 その結果、唯一毒耐性が誰よりも高かったメタンが生き残りひっそりと寿命を迎えて死んでいった。

 ニョグ達が絶滅した世界では悲惨な環境被害が起きるのだが、それは知る必要のない話である。


 クマクマ クマ

 熊の中の熊であるクマクマは全長5メートル越えの肉体を持ち、巨木も一撃で薙ぎ倒す爪とパワーを持っていながら大好物かつ主食が蜂蜜である。

 因みに肉は嫌い。肉を食べるなら野菜の方が良い。それがクマクマである。

 クマクマのクマはある日の森の中であった少年と幼少期を過ごし、その後、久しぶりにあった少年がトラックに轢かれそうになったのを救った代わりに自分が轢かれ殺されるという異世界転生死をした希少なクマクマである。


 タンタンビートル 兜丸

 タンタンビートルは戦車と同等の巨体を持つカブトムシである。

 兜丸は特に角と頭が立派な所から飼い主であるお爺さんとお婆さんから付けられた名前である。

 その圧倒的な突進力によって魔物からお爺さんの畑とお婆さんの洗濯川を守って行くついでに村も守っているうちに村から守り神として崇められる様になったカブトムシである。

 兜丸の死後、社も建てられた。


 Z R

 ダークグサ ヤーミ

 恒星の光も届かない星に自生しているダークグサはその圧倒的な生命力から宇宙人からは特定侵略外来生物として指定されている。

 ヤーミは植物として必要がないほどの知能を持って産まれ育った。

 その狡猾な戦略によって幾つもの惑星の環境を滅ぼした個体である。

 長い年月を過ごす内に人型の肉体を持ち人との対話も可能になったが、それは植木鉢サイズの肉体では不可能な事だった。


 G R

 無敗皇帝 トナカイRX リルリルドール

 無差別競馬において雌でありながら全種族雌雄混合レースで生涯無敗記録を叩き出したトナカイである。

 その圧倒的な脚から繰り出される速度は光にも届くとされ、水面、空中共に走る事が可能。

 雌にも関わらず雄に敗北を味わわせる巨大かつ立派な角を持っている。

 その美麗な肉体から引退後もアイドルトナカイとして生涯、妹のラロラロドールと共に愛され続けて亡くなった。


 完璧女帝 トナカイRX ラロラロドール

 無差別競馬の雌限定レースにて無敗。

 しかし、生涯最後のレースにて無敗皇帝であり、姉であるリルリルドールに敗北して唯一の黒星をつけられてしまったが、姉以外には負け知らずだった。

 姉をも超える美麗な肉体は種族とはず相手を魅了した。

 知能は並の人間を超えて姉共に言語を完璧にマスターしていた。

 生涯、全ての雄を支配し続けたラロラロドールの姿は正に女帝。

 生涯最後の現役、引退含む人気投票では連敗に期していた姉に僅差で勝利を遂げ、トップの人気でその生涯を終えた。


(・・・すげぇ奴らだけどどうしよう。結局、こんなに忠誠心が高い理由が分からない。)


 説明を読んだら何か分かるのではと思っていたラックだったが、その答えは此処には書いていなかった。

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