第7話 ダークマター
期待と危険を感じながら発動した魔法はよく分からない液体だった。
一瞬、水属性かと思ったが、流石にこんな変な液体な訳がないと否定したが、一筋の望みにかけて水属性とどんな形か分からない闇属性の説明ページを読んでみてもこんなドロドロである事は一つも書いていなかった。
つまり、これはラックの固有属性なのだ。
(・・・ワシの固有が、これか。)
固有属性ならせめてカッコいい感じの属性が良かったと、若かりし頃の男心を目覚めさせながら嘆いていた。
(いや、嘆いていてもしょうがない。このドロっとしたものをどうするか?)
両手を合わせてみたらこの液体は両手にくっ付くほどの粘性があった。
それと暗闇の中なのに、この液体が黒い事がハッキリと分かるほどのドス黒さがあった。
闇をも暗く包みそうな程の液体にラックは自分で出してながら生物として危険本能が悲鳴をあげていた。
(な、なんだ?)
サンタ服が汚れたり、燃えたりしたら嫌だった為、ラックは魔法を使う前に手袋を外していた。
だから、この液体がサンタ服に偶然付くまで気が付かなかった。
液体がついた瞬間、サンタ服から溶けるような音がした。
慌てて液体を消そうとしたが、よくよく見てみるとジューと音を出しているのは液体の方だった。
(まるで熱した鉄板の上に水を垂らしたみたいに音を出している。)
このサンタ服はただの服ではない。
聖なるサンタ服である。
魔や邪のものを寄せ付けないどころか少しぶつかっただけで滅する効果が付与されているのだ。
つまり、ラックの固有属性には魔や邪に関するものが含有しているものだと言う事である。
(魔や邪か・・・使い道がねぇな。)
魔や邪と言うものは対象者がいてこそ使うものである。
人もいないこの地でどう使えと言うのかラックには思いつかなかった。
ワンチャン戦闘には使えまくるものかもしれないが、外で活動できる方法がないのに戦闘全振りの属性が出ても仕方がなかった。
(それにワシの人生はそんな魔が連想できるものではなかったんだが、人は見かけによらないということか?)
固有属性は先天と後天から生まれるものであり、眷属や転生者の場合、前世が大きく反映されるのだ。
ラックの順風満帆な人生からしたら聖に連なる属性になっても良さそうと自分ながらラックは不思議がっていた。
(まぁ、検証することも今、考える事でもないな。頼みの綱の鉱石を売るか・・・・・・)
ラックがここまで渋っているには理由があった。
ラックの人生経験から安心感は精神安定には不可欠であり、この明日をも知れぬ状況の中で危機的状況を打破するための貯金が足りるか分からないが、残っていると思うだけでも安心感は一定水準維持出来るのだ。
ラックにとって背水の陣はあまり好きではなかった。
(仕方がないか・・・うん?)
ラックはショップを売るかと思った瞬間にショップの売却リストに見知らぬものが存在した。
(ダークマター?)
その項目をタップするとダークマターの説明が出た。
ダークマター
ラックの魔法によって空気中に漂う二酸化炭素と謎の液体Aと反応して新しい物質が産まれた。
この物質は聖に属するものの効果を過剰に促進と威力を上げる効果がある。
但し、この物質はまだ研究中であり、危険な可能性が大である。
(・・・つまり、この説明はさっきサンタ服に当たった時に分かったことを書かれているのか。)
ダークマターの説明で分かったことはこの液体は今の所大気と反応する事によって別の物質に変化させる性質を持っているという事である。
問題はこれは鉱物や生物にも適応されるのかが重要だが、検証方法がない。
鉄やミスリーアダマンタイトを使って価値が上がるなら良いが、ゴミと化してしまったら最悪すぎるため、それをすることはできない。
(ダークマター100GPか。今の魔力量からしたら500が限界か。息を切らすわけにはいかないから。一日300にしておく方が良いな。)
有酸素運動より疲労感は今の所少ないが、100GP分だけでもそれなりの疲労感があった。
疲れ果てて酸素を無駄使いするわけにはいかないため、ここは300GPに抑える事にした。
このままの成長率で成長出来たらなんとか一日の酸素ボンベを賄えるくらいのGPを稼げると確信した。
ただ問題もあった。
(酸素と反応したら本末転倒だな。)
酸素を稼ぐために酸素を消費していたら意味がない。
酸素ボンベ1ダース稼ぐのに1ダース以上の酸素を消費していたらいつか尽きる。
この魔法を操作して二酸化炭素や酸素以外なものとしか反応しないようにしないといけない。
(そこはワシの腕次第だな。魔法の研究はしないといけないな。だが、この貧困を打破する希望が見えてきたな。)
ラックはダークマターを全て売って魔法の研究を始めた。
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