第6話 魔法

 さて、この10日をどうやって過ごすか。

 ラックは悩んでいた。

 どうやっても今回と前回合わせても今の状況を打破する方法が思いつかなかった。

 ラックの残金3.500GPである。

 酸素ボンベ1ダース500GPである事から今残っている食糧と水で10日を切り詰めるのは不可能である。

 纏め買い割引で何とか安くしたのであるが、これ以上身体機能を低下させるわけにもいかない為、最低限の水分と栄養補給は必要である。

 この事から500GPを水と食糧に回したとしても酸素ボンベの補給できるのは三日分だけである。

 残り7日はシェルター内の酸素で生きていかないといけないと言う訳である。


(どうする。エレベーターはもう自動で起動しない為、奇跡を期待することは出来ない。魔力や信仰力を補充すると起動するらしいけど同じように死体が降りてくる訳にもいかない。貯金を切るしかないのか・・・)


 アブリウルスと一緒に降りてきた鉄やミスリーアダマンタイトが少量あるが、これは最後の最後に残しておきたい。

 ラックはエリクサーを最後まで取っておいてエリクサーを使わなくて良い方法を見つけようとするタイプだった。

 魔力と信仰力は転生してからずっと鍛えてきた。

 生き残る為に力はこの先必ず必要になるから転生してから考えていた。

 でも、有酸素運動みたいな酸素を使う運動はしてはいけない。

 そんな時にゴトンに魔力と信仰力の使い方が書かれていた。

 魔力とは自身の力に対して、信仰力とは星の力を使うものであり、最初に宗教信者が使うようになった為、信仰力と呼ばれ始めたらしい。

 偶々、祈り方が信仰力を扱う方法に合っていただけである為、神様は一切関与していないようだ。

 信仰力の基礎鍛錬は星の力を受け入れる器の強度を上げるの対して魔力の基礎鍛錬は己の力を自覚して発散させる事で量を上げるものだったが、発散させたら疲れて息が乱れ出すので息が乱れない程度に発散をやめてより魔力の操作力を上げていった。

 暗闇で暇していたラックにはこの二つの鍛錬は合っていた。

 この10日間、四六時中胡座をかいて鍛錬を繰り返していた。

 その為、初期ステータス特典がないので他の眷属に量で負けていても操作力は負けていない自信は芽生え始めていた。

 ラックが注目したのは魔法だった。


 魔法には定番の火・水・風・土・雷の五属性と光・闇の二属性に固有属性と呼ばれるその人ならではの属性の八属性があった。

 これは全世界共通のものであった。

 属性は魔法を使えば一発で分かるが、自分の属性をわからず使うと暴発して怪我をする可能性がある為、専用の魔道具などで調べることが一般的な安全な方法であるが、ラックには調べる術はなかった。

 でも、ラックが欲しいのは光、次点で火だった。

 灯問題解消と売り物開発にはこの2種が今、最適だと考えた。

 属性の数は人それぞれ違うが、大多数が一つの属性しか持っていない。


 (魔法で生じた火は酸素を消費しないみたいだが、何かが燃えたりしたら大惨事のため狙うは光。光を使うことで光合成も可能になって酸素を生み出すことができる。)


 植物自体はショップに売ってあるのだが、この暗闇に置いてもイタズラに呼吸されて酸素が無くなる為、買うのを見送ったのである。

 そもそも明かりさえあれば色々作業が可能になる。そうすれば無駄に積み上がっている砥石の使い道も思い浮かぶかもしれない。

 このまま暗闇に目が適応するのを待つよりも余程可能性はあった。


(問題は他の属性だった時、特に固有属性だった場合、マニュアルが一切ない。これが一番の問題だった。)


 固有属性以外の7属性はゴトンにそれなりのマニュアルが付随してあった。

 ただ固有属性はその人個人の属性である為、己で考える必要があるのだ。

 それに固有属性をこの暗闇ではどんな属性かを確認することは出来ない場合が多い為、ラックは魔法を使うことを渋っていた。


(と言っても、他に打開策はない。・・・・・・やるしかないか。)


 ラックは覚悟を決めて魔法を使う事にした。

 暴発しても最小限な被害で済むように魔力量は最低限にして魔法を発動した。


(・・・・・・・・・・・何?これ?)


 ラックの手にはスライムのような、ヘドロのような不快な匂いのしないドロッとした液体が溢れていた。

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