第4話 人生運
闇の中を真っ直ぐ進める筈がなく、道中何もなく、壁に突き当たった。
ラックはそのまま壁伝いに音がしただろう方角に歩いて行った。
何か物を踏まない様にすり足歩いていた。
この暗闇で怪我なんてしたら手当ても何も出来ない。雑菌で炎症なんてしたら最悪死ぬ。
(やっぱり不便だ。)
酸素もそうだが、光がないのも不便で仕方がなかった。
恩恵によっていつか光が無くても見える様になるかもしれないが、五感の適応が一朝一夕で行われるわけがない為、年単位が普通だろうと考えて今は少しでもマシになれと目を凝らしながら遠くを見ていた。
暫く慎重に歩くと少し冷んやりとした空気が足元を流れていた。
その冷えた空気が流れて来る方向は音がした方だった。
もしや、シェルターが壊れたか?!地下シェルターと勝手に思っていたが、もしかしたら地上に出ている部分があったのか?と焦りだす心を落ち着かせて再び歩みを進めた。
(・・・?何かに当たったな。)
ラックが更に冷えた空気を感じた瞬間、足が何かに当たって歩みを強制的に止められた。
硬いと感じたと同時にサンタ靴に何か液が垂れたのを感じたが、そこはSSRのサンタ靴である。防水加工されていて沁みる事はなかった。
そのまま当たった物体に足をつけていると更に冷えた感触が増したのと液が増えてきている感覚から何か凍った物体だと気がついた。
手でも触ったところ自分の背丈以上の物体であり、手についた液を嗅いでみると微かに血の匂いがした。
そこからこれは生物であり、外から運ばれてきたと考えた。
この死体が壊してシェルター内に入ってきたとは思えなかった。
常に嵐の様な風が吹いているはずの外と繋がっているなら此処はとんでもない風を感じる筈であるが、実際感じるのは凍った死体から流れて来る穏やかな冷気だけだった。
その事からこの死体はこのシェルターに着いているエレベーターから運ばれてきたのだと考えたのである。
初期設備が何もないと言っても、このシェルターが地下だとするとエレベーターがないと地上に出る術が何もない。
それはつまりドアのない家と変わらない為、設備から除外されたのではないかとゴトンを開いて何かないかと見てみた。
すると、シェルターの説明文を見つけた。
そこにはこのシェルターは地下であり、エレベーターが初期設備とは関係なく備え付けられている事が書かれていた。
電力等のエレベーターを動かす機能がない為、普通は起動しないが、一度限り降りるだけなら可能な事が書かれていた。
それも無生物が一定量乗った時だった。
多分、クルが用意した救済処置ではないかとラックは思った。
嵐によって積もった鉄を一度だけ降ろす事で一度限りの金策として用意したのだとゴトンの取引画面を見て思った。
そこにはアブリウルスと生物の肉やら皮の買い取り値段と一頭丸々の買い取り値段、それに少しばかりの鉄とミスリーアダマンタイトがあった。
この少しばかりのミスリーアダマンタイトがこのアブリウルスの死因ではないかとラックは予想した。
シェルターに運び込まれた生物の説明がゴトンに自動に入るのか、空白しかなかった生物図鑑アプリにアブリウルスの欄が新たに付け加えられていた。
そこにはアブリウルスは通常地中に生活しているそうだ。
地上に上がるのは日暮れか夜明けの体が焼けない適度な時間僅かな時間だった。
その時に貯めた熱を使って地中の氷を体内で溶かして水にして発電器官で生じた電気を使って水を電気分解して酸素を確保するらしい。
この酸素の無い星でどうやって生きているのかと思っていたら、電気分解で水から酸素を作っているんだとラックは納得した。
アブリウルスは皮膚が硬質化していて鉄の嵐をものともしない肉体を持っていたが、そんな時にミスリーアダマンタイト鉱脈がこの星に生まれた。
ミスリーアダマンタイト鉱脈がある山脈は全てがミスリーアダマンタイトであるわけがない。
鉄の嵐で表面の山が削れて嵐の風圧で鉄の嵐に中にミスリーアダマンタイトが混じる様になったのだ。
そして、運悪くミスリーアダマンタイトの弾丸に当たってしまったアブリウルスは内部からミスリーアダマンタイトという外来の鉱毒に侵されてジワジワと死んでしまったのだ。
絶命したのがたまたまエレベーター近くだった為、降下してしまったのだ。
(本当にガチャ運以外は運良いよな。ワシは・・・)
前世から続く己の運にラックは改めて呆れていた。
そんな己の運に感謝してラックはアブリウルスを丸々一頭売って金に変えた。
ゴトンには15.000GPの入金があった。
色々処理がされてなかったせいで、買取値段が下がっていた。
GPとはゴッドポイントの略である。
(酸素ボンベ(一本1時間)10日分程とちょっとしかならないな。)
暗闇でアブリウルスを解体処理出来なかった事が悔やまれていた。
生肉等は鮮度が落ちると値段が更に下がると判断した為、即売りに出したが、金属は保存が効くと思った瞬間、酸化という言葉が頭の中を通り過ぎたが、ゴトンには酸化鉄という文字があり既に酸化済みの鉄達だった。
つまり、この星は宇宙から見たら火星か木星みたいに見えるだろうなとラックはこの星の姿を想像していた。
(食糧と水は口に入れる時に買うのが良いな。酸素ボンベは取り敢えず2本買って1本無くなったら一本買い足す方法でいくか。)
食糧も水も酸素ボンベも大量に買ってもこの暗闇の中では何処かにあるのか分からなくなる為、欲しい時に欲しい分だけ買う方法でいく事にした。
ただ酸素ボンベは何かあった時のために予備の1本を持っておく事にした。
(これで何もなかったら10連まで貯めることが出来るな。次は最低保証じゃないことを祈りながらどう言う進化を進むか考えておかないとな。)
一日一日を貴重に使わないと生死に関わる上、生存率を上げるためにクルの恩恵は重要な要素であるとラックは考えた。
そして、進化には意志も多大な影響を及ぼすと書いてあった。
どう言う方向に成長したいかと言う具体的な理想も大事だとラックは予想したのである。
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