第114話 Believe(14)
拓馬はななみから詩織が倒れてしまったことを聞き、呆然とした。
「ケンカしちゃったの? おねえちゃん、すっごくくるしそうだよ。 たーくんもいってあげて、」
ななみは必死に訴える。
拓馬は携帯をぎゅっと握って、目もぎゅっとつぶった。
ゆうこたちが何も言ってこないのは
やっぱり自分たちのことを気遣ってくれているからで。
「ななみ・・電話してくれてありがとな。 ・・ありがと、」
ななみの問いかけには答えずに小さな声で言った。
「でも。 やっぱりおれも行かれないよ、」
「え、どうして?」
どうして、の言葉に
答えられるほど簡単なものじゃない。
「今、おれとおねえちゃんは・・ちょっとお別れしてるんだ、」
小学生のななみにもわかるようにそう言った。
「おわかれ?」
「どうしてもね、おねえちゃんと結婚できないんだよ。 おねえちゃんは、お花の先生の大事な大事なひとり娘だからお嫁にもらえない。 おれも、じじの仕事を続けなくちゃいけないから・・おねえちゃんの家の人にもなれないんだよ、 だから。 彼女にはもっともっと相応しい人がいる。 おれじゃなくても、」
ななみに言いながらも
拓馬は自分に言い聞かせた。
「きらいになっちゃったの・・?」
もう泣きそうなななみの声に
「嫌いになんかなってない。 今も、大好きだよ、」
彼女のことを忘れようと思い過ごしてきたけれど
こうしてこの言葉を口にしてしまうと
想いが溢れる。
好きなのに
おわかれするの?
ななみはまだまだ幼すぎて
このころの拓馬の気持ちはわからなかった。
詩織はそれから二日ほど高熱で寝込んでしまった。
ベッドから起き上がれるようになったのは
入院から3日が経った頃だった。
拓馬は仕事前に彼女の入院する病院までやってきてしまった。
病室の前まで来たものの
やはり入って行くことができない。
ドアの向こうに彼女がいるのかと思うと
たまらない気持ちでいっぱいになる。
そんな拓馬を病室に訪れようとした千崎が見かけた。
何度も何度も病室の前をウロウロする拓馬の動向を見守った。
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