女神様との日々

第36話 悪魔王

　そして、ダランディアを倒したあと、こちらに沢山の悪魔が向かってきた。おそらく、私達をこのまま倒したいということだろう。

「雅夫さん、体力残ってる？」

「あんまりだな。ルティスは？」

「私も……でも、手は打ってある」

「え？」

　だが、ルティスのその手を聞く前に敵の悪魔がこちらに向かってくる。

「ハアハア、ギリだけどお」

　光の光線を数発悪魔に向かって放つ。だけど、この敵の数は中々蹴散らせない。

　これじゃあ、また体力が持たない……そう思った矢先、

　目の前にメティトをはじめとしたたくさんの女神が現れ、悪魔たちを薙ぎ払っていく。

　そしてあっという間にその場にいた悪魔が全滅した。

「流石だな」

「うん」

　これで、地上にいる悪魔はだいぶ減った。これでもう、天界側の勝ちで決まり。

「次はお前だ」

　メティトが雅夫さんに弓を向けた。

「ここに悪魔は生かしてはおけない。死ね」

「雅夫さん！！」

「ああ」

　雅夫さんは見事にその弓を手でつかみ、へし折った。

「今は争っている場合じゃないだろ」

「ふん、ダランディアを倒したことはありがたい。だが、逆に言えばこれで地上の危機は去った。もうお前の力を借りる必要はない」

「なんでよ！　なんで味方同士で戦わなきゃならないのよ」

「それはそいつが悪魔だからと何度言ったら分かる」

　それに対してメティトが率いる天使たちも「そうよ」「そうだ」と、メティトに肯定的なことを言う。

「私は、天界を敵に回しても、雅夫さんを守る」

「私も同じ考えだわ」

　そして私たちは、メティトに対して戦いの姿勢を取る。

「面白い。こい！」

　そう叫ぶメティト。でも、まだ悪魔は残って……

「とりゃああああああああ」

　その瞬間、地面が割れ、メティトを呑み込んでいった。私とルティスは間一髪で雅夫さんに回収されたが、メティトは間に合わなかった。

「流石に、全員は無理じゃったか」

　地面から声が響く。新手か？

「ディオビオ、戻ってくるつもりはないか？　私の息子よ」

　そこにいたのは悪魔王、悪魔の王様であり、雅夫さんの父親その人だ。

「そんなこと言っても無駄だ。俺はティアの味方だ」

「記憶が戻ったお前なら、今どちらに着いた方が得かは自明だと思うが。現に天界はお前の存在を認めてはいない。勝っても負けても終わりの状況で戦う方が愚かだと思うが」

「だとしても。ティアと一緒に入れたらそれでいい」

「愚か、実に愚か。お前に現実を叩きこみ、我のもとに戻してやろう」

　そして闇から悪魔が飛び出してきた。今まで見た度の悪魔よりも恐ろしい見た目をしている。普通にやってはこいつには勝てないと、一瞬で理解する。

　だめだ、これは勝てない。

　オーラが、禍々しく大きい。

「さあ、この場の全員を蹂躙してやろうか」

　ファイナルバトルだ。

「おりゃあ！」

　悪魔王、その腕の一振りで、山が吹き飛んだ。

「もう一振りじゃ」

　そして今度は町の方に飛んでいく。

「ふむ、地上久しぶりだが、なかなか動ける脳」

「シャインブレイド！」

　溜まらず私は光の剣を作り出し、斬りかかる。

　だが、剣は腕で食い止められた。

「この程度か」

　そう鼻で笑う悪魔王、正直ムカつく。

「ははははは。我が息子が選んだ女神というのはここまでの雑魚なのか？　実に残念だ」

「っくそ」

「吹き飛べえええ！！」

　その攻撃で、私は後ろ100メートル飛ばされ、た。幸い木はもうなく奈tぅていたので、叩きつけられることはなかったが、それでも痛い。

「今度は俺だ！」

　雅夫さんは闇の槍を手に取り、悪魔王にぶつける。私よりも善戦しているみたいだけど、でも明らかに雅夫さんが子ども扱いされている。

「弱いな。何をしていたのだ地上で」

「お前が記憶を消すからだろ」

「ああ、そうだな。だが、」

　雅夫さんの槍は悪魔王の握力であっという間にへし折られる。

「雑魚にもほどがある」

　そして、雅夫さんは悪魔王の腕で、地面に頭を押さえられる。

「お前が、こんなに弱いわけがない。さあ、本気を出せ！　息子よ！」

　高ぶっている。そう感じた。今なら背後の攻撃には気づかないんじゃないか？

　そう思った私は気配を女神パワーで消し、背後に回る。

　そして、機をうかがい。

(今だ！！)

　悪魔王に炎をぶつける。

「ふむ、痛いな。ハエがいるわ」

(効いていない！！)

　そこには、軽いやけどの跡があるだけで、そこまでのダメージを受けていない様子だった。

「悪いが邪魔をしないでもらいたい！」

「きゃあ！」

　再び向こうに飛ばされる。

　まずい、やっぱりだ。今までの相手とは違い、本当に強い。こいつ相手に勝てるのか本当に疑いたくなる。いや、疑いようなどない。

　私達じゃあ勝てない。そう、その全てが私にその事実を突きつける。

　実際、向こうでまだ戦っている雅夫さんもかなり押されている。もうかなりきついという事だろう。

　またダランディアの時みたいに、高火力で倒す？

　いや、無理だ。隙を作れるわけがない。

　どうしようもない？　いや、一つだけ手があるかもしれない。

　自爆だ。確かルヴィンもしていたあれの強化版だ。もちろんリスクだってある。私が死んでしまうというリスクが。

　でも、雅夫さんを守れるならそれでいい。

「ティア！」

　そう思った時に雅夫さんから話しかけられる。

「俺の全エネルギーをぶつける。そうしないとこいつは倒せないみたいだ」

「え？　それって」

「ああ、お別れだ」

　まさか私がやろうとしてたことを雅夫さんもやろうとしていたなんて。

　いや、考えてる場合じゃない。

「雅夫さん！　自爆なら私がやるから！」

「だめだ！　これは俺の仕事だ。俺にけじめをつけさせてくれ」

「まさかずっと罪悪感を？」

「当たり前だろ。お前を守らせてくれ」

　その瞬間雅夫さんの体が弾け飛んだ。そのまま光が悪魔王の体までも包み込み、大爆発した。

「……雅夫さん」

「驚いた、まさか本当に自爆するとは」

　傷は喰らってはいるが、悪魔王は生きている・雅夫さんの命を以てしても倒しきれていない。

　絶望が私を襲う。