第31話 避難
ルティスが戦い、メティトが弓で援護する。二人の戦闘能力は格段に強いと素人の俺でもわかる。メティトが弓で、ルティスのこぶしに合わせて打って、その合わせ技で大ダメージを与えていく。
このメティトという男は、ティア並みに強いとおもった。
ちくしょう、もっと早くに来てたらティアはあんな目にならなかったかもしれないというのに。
戦闘の方は、完全に圧倒という形となっていた。本当に先ほどまでの苦戦は何だったのやら。だが、それも当然と言えるだろう。単純に数が倍になったのだから。それにだ、漫画などでよくある一+一は二以上の力を発揮する理論が通用されている。
五倍くらいにはなっているだろう。
その力で悪魔は倒れた。しかし、そこに三体もの悪魔が近づいてくる。
「なんでこんなにいるの?」
「おそらく、好機とみて前線力を送り込んだのでしょう。日本だけではありません。イギリスやフランス、ドイツやインドその他多種多様な国に送られています。他のみんなはそこへの対処に回されることでしょう」
「ということは、ここは私達二人でやらなければならないという事ね」
「はい」
それを聞いて、俺は無力感を感じた。
所詮ただの人間でしかない俺にはこの未曽有の危機に何も手助けができない。おそらくそれは、人間全員に言える。某柔道チャンピオンも、自衛隊も、総理大臣も、大統領も誰も役には立たないだろう。
俺は……どちらかと言えば知ってる側の人間だ。ティアの彼氏だし、ルティスとも知り合いだし。
なのに、俺には何もできない。その無力感が俺のすべての感情を破壊しまくる。
「あ」
そこに、一体の悪魔がやってきた。
「高塚君は、学校に避難して! そこにバリアが張ってるから!!」
そう言って、ルティスは学校の方を指さす。
確かに今の俺には何もできない。とりあえず言われた通り物がけに隠れて学校に向かう。
「はあはあ」
数分後、全速力で走りまくった俺は無事学校へとついた。
そして中へと入っていく。
その中も悲惨な光景にあふれていた。おそらく、ガラスの破片が地面に散らばっており、地面に血がついている。つまりここも襲撃されたという事だ。
バリアが張っているから大丈夫と言っていたが、ルティスにはそんな暇はなかったはずだ。
他の女神がいるのか?
そして中に入っていくと、一つ電気がついている教室があった。そこに入っていくと、四〇名くらいの生徒が入っていた。
「君は高塚君?」
「ん? てことは、山本君?」
そう、そこにいたのは山本君だった・
「良かった生きてたんだな?」
「ああ」
「ん? 長谷川さんは?」
「……真里は重傷を負っている。さっきの爆発に巻き込まれて、だ」
あくまでも事実。
「そうか。それでなんでここにいないんだ? もしかして病院とか?」
「……違う。今彼女は天界にいる」
「どういうことだ?」
流石にこんな地獄になってしまった今、黙っているわけには行かない。
「真里は、ティアは女神なんだ」
そして今の状況の説明を山本君にする。天界の仕組み、ティアと地獄からの脱獄囚との戦い、それに応じて悪魔が今攻めてきたという事。そして今までのティアが起こしたことなどなどだ。
「なるほど」
山本君は、そう頷いた後、
「この状況は悪魔と女神による陣取合戦と言う事か」
「そういう事だ」
「……ということは残っている浩美とメティトと言う神官に頼らなくてはならないという事なんだな」
「ああ。残念ながらな」
俺たちには何をすることが出来ない。
「漫画みたいに、なんか特殊能力に目覚めたりすりゃあいいんだが」
流石に現実でそれは夢物語過ぎる。
「まあでもここは安全なはずだ」
「そうだな」
俺達は戦いを見守ることしかできない。
「ルティス! 大丈夫か」
「ええ。なんとか」
その頃ルティスとメティトはたくさんの敵の数にかなり追い込まれている。
そもそも悪魔自体戦闘能力が高いのだ。そんなものが一気に出てきた訳だから二人で抑えるのにも限界がある。
ティアが今いないというのが痛すぎる。
天使には戦闘能力がない=一兵卒が居ないという天界の不利な点が顕著に出てしまっている。
このままではジリ貧になることは二人にとって明らかだ。
「インフィニティアロー」
メティトの手から無限とも言える弓が出てきた。その矢で悪魔にダメー日を与えていく。
広範囲殲滅技だ。
「なら私も!」
ルティスは闇の槍を複数個生産して突き刺していく。
それにより悪魔たちは傷を負っていく。
だが、その悪魔の死体を踏み越えて、新たな悪魔が来る。
先程から全く数が減らない。二人はその光景を見て違和感を感じた。
「ルティス」
「ええ」
先程から同じ顔の悪魔が多すぎる。それが彼女たちが感じた違和感だ。
もちろん、同じ顔の悪魔しかいないという事はないが、どこかに別の分身を生み出す悪魔がいる。その本体は別の場所にいるといて、ここで消耗戦を仕掛けて体力が弱ったところでとどめを刺す作戦だろう。
そんなことは合っていいはずがない。さっさとつぶしに行かなければ。
「行きましょう」
そして二人は元凶倒しに向かって行った。敵の数自体を減らすために。
二人はそのまま進んでいく。方法は簡単だ。悪魔が来る方を進めばいい。何しろ、顔の同じ悪魔は全員同じ方向から来ているからだ。
そこに向かえば、必ずそこに行ける。目的の場所へ。
「
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