第32話 雅夫の正体
「よくぞここまで来たな」
そこにいた男が言う。まさに敵のボス、その男だ。だが、あくまでも日本侵攻組のボスなだけだが。
「だが、このテリトリーに入ってくること自体想定済みだ」
その瞬間ルティスの周りにたくさんの複製体が現れる。
「さあ、終わりだ!!」
その複製体が全員向かってくる。
「なあ、山本」
「ああ」
先程、窓が破られ、悪魔が入ってきた。そしてその瞬間俺たちに向かってくる。
「どうしたらいいんだよ、これは」
「俺にも分からないな。だが、一つ。助からないかもしれないことだ」
そう、誰も女神がここにいない今、俺たちの未来は暗黒だ。
「この程度のバリアに苦戦してたのか。デヴィンのやつは。やれやれ、韓国襲撃が思いのほか上手くいったからいいものの。さて、お前が雅夫だな。回収させてもらおう」
くそ、また俺が目的なのかよ。どうしたらいいんだ。
「山本逃げろ。俺がこいつを何とかする」
「そう言われたってお前にはこいつを何とかする方法とかあるのかよ」
「無い。だけど、今はそうするしかないんだ」
「ん? こいつをなんとかすればいいのか? 逃げたって、無駄だぞ?」
そして山本君の背後から針が伸びてくる。
「おい!」
そして俺は思わず飛び出す。すると俺の体は針に刺されてしまった。
「ぐふ」
「なんだと!? 想定外だ……」
俺が最後に聞いた言葉はそれだけだった。
「ここはどこだ?」
俺は思わず叫ぶ。気が付けばここにいたからだ。だが考える暇もなく……
「っいた」
体に針が突き刺さる。周りを見ると一面銀針の世界だった。
「おいおい、嘘だろ」
そう呟くも自身にかかる痛みがそれを物語っていた。この地獄から逃れたい。だが、逃れようとすると、針の山を移動するしかなかった。
だが、移動しようとするたびに体に恐ろしいほどの激痛がかかる。
「っくそ」
だめだ。痛すぎて移動が出来ない。そうまさに思った。くそ、ティア助けてくれ!
そしてその時俺はまたあることに気が付いた。ティアのことを覚えているのだ。
状況から考えれば今は死後の世界。ティアの話によれば死後は記憶が消える。なぜ記憶が残っているのだ。そう不思議に思っている。だが、それを思ったところでこの激痛の中それ以上のことは考えられない。
……あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。体が痛みで上手く動かせない。一瞬も痛みを消すことが出来ない。
なんでこうなったのだろうか、なぜ自分は地獄にいるのだろうか。俺は何か悪い事でもしてしまったのか。俺にはわからない。
そして、何とか必死の思いで針山を抜けると、そこは大きな鍋の中だった。そこに落ちてしまう。
「アッツ」
水は完全な熱湯だった。沸騰しているから一〇〇度はゆうに超えているだろう。
熱すぎて本格的に身動きが取れない。しかも最悪な事に針山とは違って出口がない。このまま一生ここなんじゃないかと思ってしまう。
あの脱獄半……ルヴィンとか言ったか。あいつの言葉からしても、ここでの苦痛は長期にわたって味わうことになりそうだ。
「よし!」
神様がそう言ったのが聴こえたのが最初の一声だった。
私は確か、ルヴィンの自爆に巻き込まれたはず……
「ティアよ。お前はルヴィンにやられた後、人間たちの手によってここに連れてこられ、今まで治療を受けていたのじゃ」
「そう……ってその雅夫さんは?」
「死んだ」
「え?」
嘘でしょ?
「彼は悪魔の侵攻の際に被害にあったのじゃ」
「じゃあ、生き返らせようよ」
「それは無理だ。死んだ人間は生き返らせることは出来ない」
「じゃあ、今雅夫さんはどこにいるの?」
「地獄じゃ」
「……」
地獄という事は、今雅夫さんは地獄の責めを喰らっているという事になる。
「助ける方法はないの?」
「無い」
「ならなぜ地獄に!!」
「雅夫、あいつは魔界からの使者だ。奴は記憶を消して、地上の情報を集めていたのだ。……本人が知らないうちにな。だからこそ、千載一遇のタイミングで悪魔が攻めてきたという訳じゃ。あいつは本当は悪魔なのじゃ。あの時は見破れんかったが、自動魂解析マシーンが解を出してくれた」
「……という事は、雅夫さんはその知らない罪で地獄にいる訳なの?」
「そうだ」
「私雅夫さんを救いに行ってくる!!」
「おい! ティア」
「私は、この世のルールをすべて破ってでも! 絶対に雅夫さんを救う!!」
そう一言って私は地獄に向かう。
「やれやれ仕方がない。メティト、ティアを捕らえろ」
「は!!」
そして私を追って、メティトが向かってくる。
なんで!?
急に怖いよ。なんで追ってくるの?
私は雅夫さんを救いたいだけなのに。
そして私は地獄の入口へと入る。雅夫さんを救うために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます