第16話 女神様とのお出かけ
「お出かけだああああああ!」
ティアがまれにみるハイテンションだ。
「はしゃぎすぎてけがするなよ」
「分かってるよ! それは」
「それで今日はどこ行く?」
落ち着きのなさを隠せていないな。もう走り出しそうだ。
「そうだなあ……」
よく考えたらどこに行くかとか何も考えていなかった。さて……どうするか。
「私一つ提案いいですか?」
「ああ、構わないぞ」
「私、動物園行きたい!!!」
動物園か……確かにティアは地上の動物にも興味があるはずだしな。
「わかった。じゃあ行くか」
「うん!!!!!!!!!!」
ティアは! マークが一〇個付きそうな勢いで言った。本当凄いテンションだ。逆に尊敬するな。
「お出かけお出かけ楽しいなー」
「まだ目的地にすらついていないぞ」
「だって、楽しみなんだもん」
と言いながら、ティアは俺の腕をがっしりとつかんできた。
「おい、ティア、流石にそれはやめろ」
「いいじゃん!」
「いや、周りの目が……」
ティアは気にしていないだろうが、今ティアがしているのはまさしく彼氏にやるようなあれだ。えっ対ティアにはそんな気はないんだろうけどな。
「回りなんて気にしなかったらいいじゃない!!! ほらこんなふうに」
ティアが指パッチンをすると、不思議なことに、周りの俺たちを見る目が変わった。
「何をしたんだ? 今」
「周りから私たちが見えないようにしました。これなら雅夫さんも心配事なしに見れるでしょ」
「ああ。まあ。うん」
そうなんだが、なんか違うような……。
まいっか!
そして動物園のチケットを買おうとしたが……
「雅夫さん、なんでどんどん抜かされていくんですか?」
「お前のせいだろ。どう考えても」
あの謎の魔法? のせいで列に並べないのだ。
「雅夫さん、どうしましょう」
「どうしましょうも何も解除したらいいだけだろ」
「そしたら私たちが急に現れたことになって、騒ぎになるんじゃない?」
「じゃあ木陰に隠れて解除するか?」
「うん」
そして、木陰に行って、魔法を解除した。
「これでちゃんと並べますね」
「ああ、そうだな」
全く、列に並ぶのも一苦労だな。
「高校生二枚で」
と、無事チケットを買え、そのまま動物園に入った。
「わあ! 動物がいっぱいいる!!!」
「はしゃぎすぎて迷子になるなよ」
「分かってますよ!!」
と、子どもと大人の境界線にあるティアは目を輝かせながら動物を見る。
「この子可愛い!」
ティアが見つけたのは、レッサーパンダという動物だった。
「かわいい!」
すぐにティアはポケットからスマートフォンを取り出し、写真を撮り始めた。
「かわいい!」
もはやティアの口からはその言葉しか出てこないようだった。とにかくそのワードを連呼しまくる。
「お前、いつまで写真撮ってるんだよ。いい加減次行くぞ」
「待ってー! また取りたい!!!」
「ここで時間使ったらすべて回れなくなるぞ」
流石にもうすでにここに一五分いる現状だ。流石にここで時間を使いすぎるのは得策ではない。まだ一〇時とは言え、このままでは八時間程度すぐにたってしまう。
「はあ、まあ気持ちはわかるけどよ」
「わかってくれるのならいいじゃないの!」
「だからダメなんだよ。こういうかわいい動物を全部しっかり見られるようにしなきゃいけないじゃねえか」
「確かに。正雄さんの言うとおりか……」
「ああ、だから全部の動物をしっかりと見ながら行くぞ」
「うん!」
そしてしっかりと写真を撮りながら、進んでいく。しかし、本当動物はかわいい。ティアほどではないが、じっくりと見てしまう。このままじゃあ全部回れないかもと言う焦燥感で、若干焦ってしまうのがもったいないくらいだ。
「ねえ、かわいいかわいいかわいい!」
「お前はかわいい言いすぎなんだよ。ったく」
といいつつ、俺もしっかり動物に癒されてるけど。
「なんか、ここ触れるみたいだよ!!」
「お、触れるのか?」
動物ふれあいコーナー。文字通り動物に触れあえるコーナーだ。
「かわいい!!!」
そう言って、ティアは動物たちと、触れ合っている。この図良いな。まずティアがかわいいっと、だめだ、そう考えるのはただの裏切りだ。ティアと俺はあくまでもただの友達なんだよ。だが……
パシャリ!
音が出てしまった。俺はただ、これを写真に残したかっただけなのに。
「ねえ、正雄さん。それ盗撮だよ」
「すまん。つい……な」
「悪いんだと思うんだったら私にも写真ちょうだい?」
「ああ、良いけど」
「やったー!」
良かったどうやら許してもらえたようだ。それに交換条件も大したこともない。良かった。
「さて、私も取ってあげるねー」
と、ティアが俺に写真を出した。
「はいチーズ!」
ティアのその言葉に合わせて、俺はポーズを決めた。
「写真を撮るのはやっぱり楽しいのか?」
「うん。楽しい。てか、雅夫さんも取ってたじゃん。しかも、私の許可なしで……」
「それを言うな。弱い」
「弱いって言われても、全然罪の清算にはならないけど」
「罪の清算にならなくてもいいんだよ。俺がそれでよしと思えるんだったらな」
「なんかそれズルくない?」
「ずるくねえよ。謝罪はただという言葉があるだろ。それだよ」
実際。俺自身をだませてたら嘘とかは悪質じゃなければついていいとは思っているからな。
「まあ、別にいいけど」
と、ぼやきながらティアは動物の頭をなでなでとする。
「しかしかわいいなあ。こいつら」
「こいつらって、見てよ。この子には マーモンっていう名前があるんだから」
その言葉を聞いて、張り紙を見る。すると、確かにマーモンと言う名前があった。年齢はどうやら二歳らしい。
「こういうのもしっかりと見ているのか?」
「うん! もちろん」
ちなみに俺はほとんど見ない。まあ理由はシンプルで面倒くさいからだ。それよりはしっかりと動物の姿を目に焼き付けたい。
「ねえ、雅夫さん! 写真撮って!」
「ああ、良いぞ」
と、ティアにカメラを向ける。すると、ティアは蔓延の笑みで返した。笑顔が眩しい。正直言って可愛い。真っ直ぐに見つめるとこちらが緊張してしまう。
「はあ」
と軽く溜息をつきながら、写真を撮る。
「なんで今溜息ついたの?」
「お前の笑顔が眩しいから、その笑顔に耐えるためだよ」
流石に可愛かったからなんて言ったら変態のそれだ。まあ、そもそも一緒に暮らしてる時点で……と言う話だが。
「なんで笑顔に耐える必要があるの?」
おいおい、純真な眼差しでそんなこと聞くな。どう返したら良いのか分からねえよ。
「お前が可愛いのが悪いんだろうが」
「え? 私可愛いの?」
「ああ、笑ったらな」
「えへへへ」
ティアを喜ばしたようだ。なるほど、ティアはこう言う言葉に弱いんだな。
「さて、そろそろ次行くか?」
「もう?」
「まあ少し時間のゆとりはあるが」
「じゃあもう少し……あと五分だけ」
「分かった」
と、動物を触るティアを眺める。やはりこの感じ、女神様なんだなあとしみじみと感じる。
「あ!」
「どうした? ティア」
「この子、私の指をギュッと掴んだ。可愛い!」
「それは良かったな」
「うん! 動物を触ったの初めてだし」
「天界では触ってなかったのか?」
「触れないよ。だって天界に動物いないし」
「いないのか」
まあ確かにイメージ的に天界に動物がいるとは思ってなかったが。
そして次の場所へと向かう。
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