第7話 女神様と登校

「雅夫さん。話しよ!」


 考えていると、ティアが話しかけてきた。


「今か?」

「だめ?」

「だめではないが……」

「やったあ!」


 と、ティアが言うのと同時に「ザバ」と言う水の音がした。


「あまりお風呂の水減らさないでよ」

「わかってますよ」

「それで何の話がしたいんだ?」

「うーん……明日の予定とか?」

「部活見学のか?」

「うん。私は出来たら雅夫さんと一緒にできる系の部活がいいなと思ってるから、少人数のところが良いな」

「少人数か……将棋部とか、文芸部とか?」


 確かそこら辺の部活が4,5人しかいなかったはずだ。


「じゃあそこらへん見学する?」

「だな」

「それと、もう一つ行きたいところがあって」

「何だ?」

「映画館」

「なるほど」


 映画館か。確かにティアはこの世界に興味を持っていた。なら現代の創作物について知ることもいいことであろう。


「じゃあ明日行くか。見たい映画考えておけよ」

「わかった!」






「寝ましょうか!」


 と、お風呂を上がった後、二人でベッドに横になる。今のベッドの形状はダブルベッドだ。そう、俺があれこれと言う前にこういう形にされてしまったのだ。もう寝てしまった今、文句を言うわけには行かない。だが、隣に美少女が寝てるとなるとなんとなくドキドキとしてしまう。だが、こいつにはそんな男女と言う感情なんてない……なら俺もそう言う風に接するべきだ。


「じゃあおやすみ」

「ねえ、寝る前に明日の計画とかもう少し話そうよ」

「えーもう眠いんだが」


 もう十時だそろそろ寝ないと明日の授業に支障が出る。それに……


「お風呂場で結構話しただろ。あれじゃあ足りなかったのか?」

「だって、もっと話したいことがあるし」

「それはいいが、寝不足はいけないぞ」

「女神だから眠りコントロールできるからいいじゃん」

「そうはいってもだなあ」


 人間生活に身を置くとなった今、ティアが女神パワーで何とかしようとしていること自体よろしくはないことだ。俺は彼女の友達として言わなくてはならない!


「なあティア」

「ん?」

「女神パワーいったん封印しないか?」

「なんで?」

「人間が持っていない力を使ったってそれは人間じゃないじゃん。人間としていきたいんだったら人間独自の力で頑張らないと」

「そう言うもの?」

「たぶん」

「わかった。女神パワー我慢する」

「よしじゃあ寝よう」

「うん」


 と、眠りについた。納得してくれてよかった。



「おい! おい!」


 ティアの体をゆする。今はもう七時四五分。流石にうちの家が学校に近いとはいえ起きなければ遅刻の危険性のある時間だ。


「もう朝だぞ」

「うーん」


 起きる気配がない。困ったな。起きてもらわないと俺も遅刻の恐れがあるんだが。


「おい! ティア」

「もう朝?」


 ようやく起きたようだ。


「ああ、朝だ。早く着替えろ」

「はーい」


 まるで友達と言うよりも保護者みたいだ。ティアの体は十分大人だが、女神様だからか、全然心は自立してないみたいだ。女神の仕事とかよくわからんが、どうやって女神の仕事をなしえていたのだろうか。

 このぐうたら娘にそんなことが出来る感じはしないのだが。


「着替えました!」


 と、ティアが制服姿でこちらに来る。


「さあ、ご飯食べましょう!」


 と、ぱっぱと料理を運ぶ。


「お前急に元気だな」

「うん。だって早く準備しなさいって言ったの雅夫さんでしょ」

「そうだけど、よく働くなって思って」

「昨日は昨日の私で今日は今日の私!」

「ごめん……よくわからん」

「もう」


 と、二人でゆったりと食事をする。と言いたいが、もう時間がない。


「ティア……もう少し早く食べれるか?」

「え? これでも急いでますけど」

「もう少し早く頼む」

「わかった」



「二人で登校。楽しみだね!」

「ああ」


 なんとなく周りから見られてる気がするのは気のせいなのだろうか。……まあたぶんティアを見てるのだろう。てか俺この状況カップルに見られないか? ティアは思い切り俺の腕をぎゅっとつかんでるし。


「てかおい、早くいかないと遅刻しないか?」

「確かに。走ろう!」


 と、ティアは俺を引っ張っていく。


「おい!」


 と、俺もそれにつられて走る。


「着いたー!」

「おいおい、まだ二七分だぞ」


 急がされた割には早く着いた。


「早く着くのに越したことはないから」

「まあそうだが」

「おはよう! 長谷川さん!」


 と、山本君が真里に向かって話しかけてきた。


「私はあなたの友達ではありませんからね」

「分かってるよそれは。高塚君もおはよう」


 マジで、また真里は……。


「おはよう。後、うちの真里がすまん。……それで頼みがあるんだが」

「何だ?」

「山本君的におすすめの部活とかってある?」


 こういうのは他人に聞くのが一番な気がする。


「おすすめの部活? 二人で部活に入ろうとしてるの?」

「ああ。真里が部活に入ってみたいって言ってるから」

「それで言ったら……わからん」

「山本君でもわからないのか?」


 結構交友関係広そうだし何か知ってると思ったんだけど。


「ああ。あ、でも……長谷川さんが好きなものって何?」

「えっと、人間の文化を知ることとかですかね」

「じゃあ、え?」


 女神さまだもん。そりゃあ知りたいよな。だが、山本君は当然ながら意味が分かってなさそうだった。


「なんか、創作とかに興味があるんだってさ」


 と、何とか真里の代わりに説明をする。こりゃあ、通訳が必要だな、真理には。


「じゃあ文芸部とか?」

「まあそれもいいですね」

「じゃあ今日は文芸部に行くか!」

「あ、それと忘れてるかもしれないけど、再来週中間テストだから部活見に行くなら今週の金曜までだぞ」

「おう、わかった。ありがとう!」

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