第2話 女神様と学校

 翌日


「おはよう!」


 と、家から出るとそこにはすでに真里がいた。


「なんでいるんだよ」

「いやあね、友達との登下校も夢だったの!」

「そもそもなんで俺の家を知ってるんだ?」

「女神パワー的な感じ!」

「お金を生み出したり、家を特定したりなんて。もう何でもありなのかよ」

「もちろん。瞬間移動も時間移動もできますよ。とはいえ限界もありますけど」

「そりゃあ限界なかったらおかしいよな」


 まあ、それにしても十分チートだけどな。


「それより早く行きましょうよ!」

「ああ」


 しかし、相変わらずこいつは美人だ。そりゃあ女神様だから当たり前なのだが。昨日は新たなイベントの到来といった感じでそんな事を考える暇はなかったのだが。


「顔赤いよ? 大丈夫?」


 そんな事を考えてるとそのような事を言われた。恥ずかしいな。


「大丈夫だ」


 まさかかわいいと思って顔が赤くなってたなんて言えるはずがない。


「でも、顔が赤くなるって恋の感情って書いてあったよ」

「いや、そんな事はない」


 知ってたのかよ女神! 恋とか言われたらそんな感じに思えてしまう。


「まあでも私はしばらくはあなたから離れないから安心してよね」

「ああ」


 そんな事を言っているうちに学校に着いた。



「おはよう!」


 真里は早速クラスのみんなに挨拶をする。


「おはよー」


 と、学級委員長の大橋恵おおはしめぐみはじめとしたクラスメイトが返事をした。俺とは大違いだ。俺なんておはようなんて言うことなんて夢のまた夢なのに。


「それにしても二人もう仲良いねー。もう二人で教室入ってくるとはね」

「もう大親友ですよ。街も案内してくれますし」

「ならもう街に馴染んだ?」

「もちろんです。私が元いた場所とは全然違って良い感じです!」


 まさか元いた場所が天界とは思わないだろうけどな。


「それは良かった。私もこの街が好きだからさ。好きになってくれると嬉しい」


 ここ、だいぶ都会なんだけど。普通田舎とかで言う気がするんだが。まあ、ツッコむようなとこじゃないか。


「まあ私もこの街もう好きですよ。なにより、雅夫さんがいますし」

「なに? もしかしてもう恋仲?」

「違いますよ!」

「え? 私振られました?」

「いや、そうではないけどよ」


 ややこしい話にしないでくれ。友達だろ。


「さて、そろそろ席に移動する?」

「ああそうだな」


 そして大橋さんに別れを告げ、席に移動する。


「さてと今日も教えてもらいましょうかね!」

「そういや女神なのに知らないことあるのか?」

「だって女神と言っても下界のことをなんでも知ってるわけじゃないもの。それにクラスメイトに勉強を教えてもらうというイベントをこなしたいと言うのもあるし」

「あー、そう言うものか」

「そういうもの!」


 そして授業が開始された。


「ねえ、なんでここ4分の1になるの?」

「それは……」


 と、ガンガンと聞かれる。それに対し、俺も何とか説明をする。そもそも俺もちゃんとわかってるわけではないけど。


 そして昼休み


「なあ」

「なに?」

「そういやなんでお前なんも言われないんだ? 今更だけど」

「何が?」

「銀髪だから」


 そう、真里は明らかな銀髪のロングだ。なぜこれで目立ってないのか。そもそもうちの学校染めるのアウトだし。


「私の場合は女神だから許されるのよ」

「何だよそのよくわからない女神補正は」

「それに今私の力で私の髪の毛は目立っていないから」

「そういうもんなのか?」

「女神の力は万能よ。何だってできるもの」

「そうか」


 まあ、よく考えたらそんなことできないわけがないもんな。


「と言うか俺お前のこと何も知らねえな」

「そう?」

「だって女神のことあんま知らねえんだもん」

「お! 女神がなんだって」


 話していたら隣の席の山本達治やまもとたつじが女神について疑問を呈してきた。これは非常にまずい。真里にとって、自分が女神だと知られるのはあんまり喜ばしいことではないだろう。

 さて、どう言い訳するか。隣を見てみると、思った通り、真理は慌てている。よし! ここは俺が何とかしよう。


「真里ってかわいいよなあっていう話をしてたんだ。女神みたいにさ」

「か……かわいい?」


 隣で真里が明らかに照れているが、無視しよう。むしろ照れていたほうがこちらとしてはやりやすい。


「なるほどなあ。確かにかわいいな」

「あ……ありがとうございます」


 見るからに照れてる。褒められ耐性とかはない感じなのか。


「しかし、本人の前でそれ言うって女たらしの才能あるよ」

「女たらしの才能が?」

「ああ。お前顔結構いいしな」

「お……おう」

「確かに正雄さん顔いいですもんね」

「おう」


 俺も人のことを言えないみたいだ。俺も結構顔が赤くなっている。まさか顔をほめられるとは思っていなかった。そもそも俺は顔に自信なんてないんだし。


「お前ら試しにくっついてみたらどうだ」

「くっつかねえよ。俺たちはあくまでもWINWINの関係だ。俺は友達が出来てうれしいし、こいつは町の案内人を得られてうれしいしと言うだけだ」

「なるほどな……ってお前友達欲しかったのか?」

「……ああ」

「お前いつも一人で寝たふりしてるから孤独が好きとかいう一匹狼だと思っていたぞ」

「え・ そんなふうに思われていたのか?」


 それはショックだな。一匹狼とか中二病みたいじゃん。


「ああ、少なくとも俺にはそう見えた」

「まじかあ」

「まあじゃあ俺とも友達になるか?」

「だめです!」


 その俺にとって喜ばしい提案は真里の手によって撥ね退けられた。意味がわからん。


「なんでだよ!」


 と、山本君が突っ込んた。俺も同じ気持ちだ。


「正雄さんは私の物です。他の人には渡しませんから」

「え?」


 俺、物扱いされてる? どういう……ことだ?


「トイレ行きましょう」


 と、真里は混乱してる俺たちを置いて、すたこらとトイレに行く。


「おい! ちょっと待て」


 とりあえず今出来ることをと、真里を追いかける。


「すまんな山本」


 忘れず、謝罪も残して……その場を去る。


 真里は女子トイレと男子トイレの入り口の間の壁にもたれかかっていた。


「急にどうしたんだよ!」

「……嫌だったんだもん……」

「え?」

「雅夫さんを取られるのが嫌だったんだもん」

「いやでも、別に俺が離れるわけじゃないぞ」

「だって、私一人の者じゃなくなるじゃないですか」

「……あのなあ真名……俺は別に誰のものでもないぞ」


 はあ、まあ天界から来たから仕方ないか。おそらく真里は不安になったのだろう。今の真里にとって下界で一人きりになる不安感、それと理解者である俺が消えることに を恐れていたのだろう。だから無意識にダメですなんて言ってしまったのだ。


「……」

「ただ、一つ、俺は真名のことが友達として好きだ。だからもし、山本と友達になったとしても、俺はお前への扱いは変わらねえし、それに友達のほかにも親友ってあるだろ。俺たちはその関係になったらいいんじゃねえのか?」


 真里の不安を無くそうと、優しく語りかける。


「そう言うものなんですか? 人間の友達関係って」

「まあ、俺はボッチだからわかんねえけど、そう言うもんだろ。友達って。まあお前が嫌なら断っておくけど」

「じゃあ……とりあえず……断ってください」

「ああ」


 俺の言葉は響かなかったようだ。


「……という訳ですまん山本。真名が嫉妬するからとりあえず友達にはなれない。ただ、身勝手で悪いがチャットアプリでつながってくれないか?」

「ああ、いいぞ。お前も色々大変だな。もし長谷川さんがメンヘラになりそうだったら言うんだぞ」

「ならないと思うよ」


 そう言って真里の隣の席に戻った。


「上手く断れましたか?」

「ああ」


 ちなみにチャットアプリで山本君とつながったのは念のため内緒だ。ただ、真理があんなことを言ったのは下界に来て日が浅いからだろうし、慣れてきたら大丈夫だと信じたい

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