第3話 女神様とカラオケ

「じゃあ今日の放課後の計画を立てましょう!」

「もう?」

「うん。だって行きたい場所ここなんだもん」


 そう、真理はカラオケのアプリを見せてきた。なるほど、てかもうスマホ持ってたのか。そう言うのは早いんだな。


「予約とかは?」

「うんもちろんした。私は夢だったの。友達と一緒にカラオケに行くことがさ!」

「ならかなえてあげないとな」


 そして放課後


「夢のカラオケ、カラオケ。カラオケ!」

「お前急に精神年齢低くなるよな」

「だってカラオケとか夢のまた夢なんだもん。喜ばないなんてことあるはずがないよ」

「それは良かったな」

「うん。ところで私は下界の曲とか知らないから、教えてくれない?」

「ああ、いいぞ」


 とはいえ、人気の曲か。俺もよく知らないんだよな、世間の流行とか。勘で言うしかないか。


「これとかか?」


 その曲は街頭とかでよく流れている人気バンドの曲だ。主に好きな人への恋心を唄った曲として、歌詞がとくに有名だ。俺は好きなわけじゃないが、流行と言われれば、これを選ばざるを得ないだろう。


「じゃあ歌うね」

「おい、音程とかわかるのか?」

「女神だからね、大体はわかるよ」


 そして真理は歌いだした。


「君を好きになってどれくらいたったのだろう。木に惹かれる前のことはもう思い出せないや。俺の感謝はただお前がこの世に生まれたことただそれだけさ……」


 歌声がきれいだ。初見なはずなのに、音程もほとんどあっている。流石は女神さまと言ったところだろう。つーか俺この後に歌うのか……はずくね。


「愛を君に伝えたい、君とはじけたい、君と花火を見たいただ願うほど他人任せはないということは知ってるからさ。今すぐ君に言うよ。俺といてくれと」


 そして真理の歌が終わった。


「どうでした?」

「最高だよ。良かった。素晴らしい」

「お世辞じゃありませんよね」

「当たり前だよ。お、点数出るぞ」

「難点だろ」


 そして点数が出た99.426だ……高校生が出せる点数じゃねえだろこれ。女神歌うま!


「この点数っていい感じですか?」

「いい感じに決まってるだろ。今すぐ歌手になったほうがいいレベルだわ」

「そうですか。それは良かったです」

「ったく、流石は女神様だなという感じだよ」


これがテレビで歌ってても全く違和感ねえし。


「……ところでさあ、今更だけど、お前の本名って何だ?」

「本名? 長谷川真理じゃなくてですか?」

「ああ」


ふと気になった。


「それならソフィルティアですよ」

「ソフィルティアか……長くね?」

「だったらティアと呼んでくれたら」

「ならそうするわ。ティア」


と言うが少しだけ恥ずかしい。真里、いやティアの本名を知ってるのが俺しかいないという事実に少し特別感を感じる。


「もっと呼んでください!」

「おい、あまりねだるなよ。ったく」

「いいじゃないですかー。けちー」

「それよりも俺も歌うぞ」


 と曲をすぐに入れ、歌が始まる。アニソンだ。カラオケでアニソンは禁止だと、昔の漫画とかでは言われているが、こいつはそんな理なんて知らないだろうし、大丈夫だろう。


「伝説を作りし、今。希望を連ね悪夢を貫き未来をつなぐ。闇に生まれ獣が今育ちゆき……」


 そう、この中二感の若干ある歌を歌っていく。ちなみに真理、いやティアは目をキラキラとさせてこの曲を聴いている。もしかしてティア……中二病だったりするのか? いや、まあこいつだったらあり得る。


「未来をつなぎ、闇を照らし、革命を果たし、王となる。それこそ運命のつなぎし道だ!」


 唄い終わった。今思ったが、下界に来てから聴かせる二曲目がこれでよかったのか? 世間から中二過ぎ! とネタにされているこの曲を。


「最高最高最高です!」


 まあ分かってたけど、好評みたいだな。


「なんかこう……かっこいいです!」


 中二病はみんなそう言うんだよ、この歌詞を聞いてな。


「それは良かった」


 まあ女神だしな、新しいものに惹かれるのは自然の理か。てか俺も中二感のあること言ってるし。


「今度はデュエットしません?」

「たぶん釣り合わねえ」


 今画面に表示されてる点数は82.279およそ十七点差あるのだ。カラオケで十七点差はもう絶大な差だ。


「私、天界で見たんです。友達とはカラオケでデュエットするものだって」


 知らねえよ。そんな決まりは。ただ、まあ俺もしたくないわけじゃない。それにいい点数が出た時に俺も喜べるからな……逆に俺が足を引っ張ったという見方もできるが。


「じゃあやるか!」

「はい!」


 と、二人で選んだ曲はデュエットが出来る曲として、ミュージカルの曲にした。所謂王子役とプリンセス役のデュエットだ。


「君のことを今でも夢に思う。           あれは幻だったんだろうか。

 あなたが今も夢に出てくる。            あなたは実在するのかしら。

 君に会うことが出来れば   ほかには何も願わない。 もう幻だっていい。        

 あなたに会うことが出来たら ほかに願うことはないわ。        もう、夢でもいい。

 愛を伝えたい。

 愛を伝えたい。」


 と言った感じで上手く歌えた。相変わらずミュージカル感のある曲だ。別にこの曲は持ち歌ではないが、デュエットならこの曲と選んだ曲だ。だが、十分気持ちよく歌えた。


「楽しかったですデュエット」

「それは良かった」

「夢だったので!」


 と、笑顔で二かっと笑う。あ、かわいい。そして点数は九一点だった。九〇点台なんて初めてだ。

まあティアに大分引っ張ってもらってるな。


 そして一〇曲くらい歌ってカラオケはお開きとなった。


「今日は、いえ、今日も楽しかったです」

「それは本当によかった」

「明日はどこに行きましょうかね」

「もう明日の話か?」

「ええ。もう毎日が楽しいですよ。雅夫さんのおかげで」

「それは俺としてもうれしい限りだよ」

「ふふ」

「じゃあまた明日ですね」

「ああ。また明日」

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