第40話
「いや、おいしそうに食べるなあって思って。かわいいよ。」
「かわっ…⁉ここ、一応学校ですよ。」
どこで誰が聞いているかわからない状況でさらっとかわいいなんて言ってくるから心臓に悪い。
「正直俺はもう隠さなくてもいいかなって思うんだけど。美恋ちゃんは違うの?」
「深瀬先輩は人気ありますし、私なんかが一緒にいていいのか自信もないので内緒にしておきたいんです。」
我ながら卑屈で暗い理由だと思うけど、本音だ。深瀬先輩はパンを頬張りながら眉を下げて微笑んだ。
「そっか。美恋ちゃんがそう思うなら内緒にするけど、俺は美恋ちゃんがいいんだからね。」
「はい。ありがとうございます…。」
爆弾発言を涼しい顔でしてくるから心臓に悪い。顔というか身体中が暑くなり、手で扇ぎながらお弁当を口に運ぶ。
昼休みも後半に差し掛かった頃、昼食を終えたためそのまま中庭で文化祭について深瀬先輩から説明を受けた。去年もリーダーだった深瀬先輩によると、毎年結構な集客で忙しく、準備も大変らしい。
「なるほど、大体流れはわかりました。」
「そう?まあ、これからもわからないことあったら俺とか鈴木に聞いてね。」
はい、と返事をした途端予鈴のチャイムが校内に鳴り響いた。深瀬先輩と目を見合わせ、ベンチから立ち上がる。
「今日はありがとうございました。貴重な昼休みに…」
「そんなことないよ、一緒に居られて嬉しかったし。」
小声で深瀬先輩の気持ちを伝えられ、照れて何も話せずに渡り廊下を歩いていると、3年生のネクタイを緩く締めた制服姿の男子生徒が話しかけてきた。
「あっ、力!探したぞ、どこにいたんだよ。」
「悪い、部活のことでちょっとね。」
深瀬先輩の肩に手をかけた先輩は私の存在に気づいたようで、深瀬先輩の方を見ながら問う。
「誰?力の彼女?」
「部活の後輩。
「彼女」という言葉に否定も肯定もせずに深瀬先輩は私を紹介してくれた。
「怖がらせたつもりはねえけどさ。俺、
「梨野美恋です。よろしくお願いします。」
慌てて自己紹介をし、ぺこりと会釈する。真面目な姿がおかしかったようで、矢島先輩はにかりと白い歯を見せて笑った。
「美恋か。かわいいな!」
「えっと…」
突然の名前呼びとかわいい発言にどう返答したらいいのか口ごもっていると、見かねた深瀬先輩が声をかけてくれた。
「美恋ちゃん、もうすぐ授業始まるから教室戻ろう。また部活でね。」
「は、はい。」
2人の先輩に会釈をしてから自分の教室まで小走りで移動する。教室に着き、自分の席に座るとちょうど始業のチャイムが鳴った。深瀬先輩たちは間に合っただろうか。
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