第33話
チケットやドリンクを購入してから、薄暗いシアタールームに入る。今人気の映画だからか、既に椅子に座っている人が結構いた。
番号通りの席に隣り合って座る。繋いだ手はそのままに、ひじ掛けにそっと置かれた。そのことをどうしても意識してしまい心臓バクバクで、映画の内容なんて頭に入ってこなそうだったけど、いざ映画が始まると映画の世界に入ることができて楽しむことができた。
2時間弱の上映が終わると、観客が立ち上がりシアタールームを次々に後にするため、出入り口付近が混雑し始めた。
「人いっぱいだし、もう少ししてから出ようか。」
深瀬先輩の言葉に私はうなずく。
「そうですね。この映画、原作の漫画を読んだことがあるんですけど、原作通りですごくよかったです!」
「そうなんだ。俺も原作読んでみようかな。」
そんなことを話していると、人もまばらになってきたので私たちもシアタールームを出る。窓越しの景色はもう薄暗くなっていて、楽しい時間はあっという間だ。
「そろそろ帰ろうか。最寄り駅まで送るよ。」
深瀬先輩と手を繋ぎながら改札までの道を歩く。本当に今日は会ってからほとんど手を繋ぎっぱなしだ。
「ありがとうございます。あの、お願いがあるんですけど…。」
「どうしたの?」
「深瀬先輩と写真撮りたいです。記念っていうのもあるんですけど、ツーショットは撮ったことないので…。」
勇気を出してお願いすると、深瀬先輩は笑顔で答えてくれた。
「もちろんいいよ。じゃあこっちの端っこで撮ろうか。」
駅ビルの端の方に移動する。自撮りをするために内カメラにして腕を伸ばしたものの、緊張で手が震えてしまう。
「す、すみません。緊張で手が震えちゃって…。」
「大丈夫大丈夫。じゃあ、俺が撮るよ。あとで送るね。」
そう言って深瀬先輩がカバンのポケットから自分のスマホを取り出す。
「いくよ、美恋ちゃん。はい、チーズ。」
パシャリと音が鳴った後、確認のために写真を見せてもらうと、自然な笑顔の深瀬先輩と緊張でぎこちない笑顔の私が写っていた。
「あ、ありがとうございます。」
「俺も美恋ちゃんとの写真欲しかったから。おっと、そろそろ電車来ちゃうからホーム行こうか。」
「はい。」
ホームに着くとちょうど電車が到着してドアが開いたところだった。あわてて近くの乗車口から乗り込む。
「あそこ座ろうか。」
車内は座る人で混んでいたけど、ちょうど2人分空いている席が見つかったため隣り合って座る。
「あ、離れちゃってたね。」
深瀬先輩はそう言うと、膝の上にあった私の手を取って自分の指と絡ませた。いきなりのことにドキッとして、また私の心臓は早鐘を打ち始めた。
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