第15話

一緒にはいたいけど、何を話せばいいのか、今まで何を話して過ごしていたのかさえ思い出せない。関係が変わったことで意識してしまう。

「帰りたくないな~。美恋ちゃんともっと一緒にいたい。」

深瀬先輩がいつもの笑顔で私を見て心臓が破裂しそうな言葉をささやいてくる。私の反応を見て楽しんでいるのか、いつもより口角が上がって笑っているように感じる。

「そんな…。明日は部活あるから会えるじゃないですか。」

緊張のあまり少し冷たい回答になってしまった。部活、でふと小春のことを思い出し、深瀬先輩に問う。

「このことって、小春に言ってもいいですか?」

「このこと?美恋ちゃんが告白してくれたこと?」

改めて言葉にされると身体が熱くなる。絶対私の反応で楽しんでる、確信犯だ。

「そう、ですよ!いちいち私で遊ばないでください!」

唇を尖らせながら抗議すると、深瀬先輩はごめんごめんと笑いながら謝った。

「小春ちゃんにならいいけど、あんまり広まると照れ臭いからそれくらいにとどめておいてね。」

「わかりました。小春にだけ報告します。」

その後はもうすぐ衣替えですね、夏は暑くて苦手なんだなどと他愛のない会話をしていると、ホームに電車がやってくるというアナウンスが響いた。電車がどんどん近づいてくるのを確認した深瀬先輩は、荷物を持って立ち上がった。私もつられて立ち上がる。電車がホームに止まり、ドアが開くと深瀬先輩は私の方を振り返った。

「じゃあ、また明日ね。今日はありがとう。」

「こちらこそです。また明日。」

深瀬先輩が手を振ってから車内に乗り込むと、待っていたかのようにドアが閉まった。遠ざかる電車に向かって軽く手を振ると、深瀬先輩も笑って手を振り返してくれた。電車が見えなくなっても、私はぼーっと電車がいなくなった後の景色を眺めていた。


家に到着し、制服から部屋着に着替える。課題に手を付けようと机に向かったものの、全く集中できない。シャーペンを持ったまま気が付いたら今日の出来事を反芻してしまう。

このままでは一生課題が終わらない。何とかかんとか頭を勉強モードに切り替える。誘惑となるスマホはミュートにしてベッドに放り投げた。

小1時間もすれば無事に課題は終わり、少し遅めの夕食をリビングで摂った。リビングから自分の部屋に戻り、明日の準備をしようとベッド脇の教科書類がしまわれた棚に近づくとちょうどスマホが点灯した。メッセージの通知だろう。スマホを拾い上げてベッドに座る。

てっきり小春からのメッセージかと思ってロック画面の通知をチェックすると、なんと通知主は深瀬先輩だった。急に心臓のドキドキが早くなる。

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