第10話
「いいよ、これからよろしくね。」
交換しながら話しかけると、島田君はにかっと白い歯を見せて笑った。
「こちらこそだよ、1年3人しかいないみたいだし。」
「あっ、私も交換させて~!」
いつの間にかそばに来ていた小春も島田君と連絡先を交換する。私はその間に鈴木先輩にも連絡先を教えてもらう。
「そろそろ下校時刻だから連絡先交換し終わったら帰ってね~!」
鈴木先輩の言葉にあわてて帰り支度をして、小春と共に家庭科室を出る。少し歩いて家庭科室と距離ができてから、小春が待ってましたとばかりに話し出した。
「美恋、深瀬先輩と個人連絡出来るね!よかったじゃん!」
「連絡先は教えてもらったけど、する理由がないよ…。何かきっかけがあれば話は別だけど…。」
「きっかけはまあ、作っていこうよ!せっかく同じ部活と沿線っていう共通点もあることだし!」
小春の言葉になけなしの勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。
「後でよろしくお願いしますのスタンプでも送ってみようかな…。」
「いいじゃん!ちょっとでも踏み出すのが大事だよ!頑張れ!」
まだ送ってさえいないのに、想像しただけで私の心臓は早鐘を打ち出していた。今からこんなので私、心臓持つかな…。
駅で小春と別れてから、1人ホームに立って電車を待つ。送るスタンプを吟味しようとメッセージアプリを開くと、ちょうど通知が来てスマホが短く震えた。そして通知の内容を見て心臓が飛び出そうになった。深瀬先輩からだ。
震える指でトークルームを開くと、1通のメッセージが届いていた。
『右見てみて』
指示通り右を見てみると、深瀬先輩が隣の乗車口の列に並びながら小さく手を振っていた。まさか本人がいるとは思わなくて、驚きとドキドキで身体が沸騰しそうになる。あわてたことで手汗がにじむ指でメッセージに返信をする。
『お疲れ様です、びっくりしました』
「直接話さない?」
いつの間にかすぐそばにいたずらっぽく笑う深瀬先輩が立っていた。再び鼓動が早くなってどうにかなってしまいそうになる。内心心臓バクバクだけど平静を装いながら深瀬先輩に話しかける。
「普通に声かけてくださいよ、ほんとにびっくりしました。」
「ごめんごめん、せっかく連絡先交換したからメッセージ送ってみたくなって。」
きっと深瀬先輩は何気なく言った言葉だろうけど、自分が特別なんじゃないかって勘違いしそうになる。ホームに電車が滑り込んできたため、ぞろぞろと動く人の列に従って私達も電車に乗り込む。今日も自然と2人で帰ることになりそうで、まだ電車のシートに座ってさえいないのに、今からワクワクしている自分がいる。
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