第6話

振り向くと、出口からちょうど鈴木先輩が出てきたところだった。ドリンクとソフトクリームが乗ったトレイを手にしているから、私たちと同じようにテラス席に座ろうと思ったのだろう。

「先輩!もしよかったらここ座りますか?」

小春が先輩を手招きすると、鈴木先輩はお言葉に甘えて、と小春の隣の席に座った。

「いや~、相席させちゃって悪いね。放課後は結構混むからさ~。」

先輩は溶けないうちにソフトクリームを食べながら言う。すると、何かに気づいたように私の背後に視線を送った。そして持ち前の通る声で叫ぶ。

「力ちゃん!かわいい後輩が相席してくれたから座れるよ!」

その言葉に心臓が跳ねつつ再び振り返ると、手にドリンクを持った深瀬先輩が立っていた。四席あるテーブルに座っているので、必然的に深瀬先輩が私の隣に歩いてきて確認をとってくる。

「本当にいいの?」

「だ、大丈夫です。深瀬先輩も一緒だったんですね…。」

「そうだよ!次は何作ろうか相談しようと思ってね!」

鈴木先輩の話を聞いている間に、深瀬先輩は私の隣に腰を下ろす。ふわりと清潔感のある香りが漂ってきて、隣にいることを否が応でも意識してしまいドキドキする。ごまかすようにドリンクを飲んでいると、目の前に座る小春がニヤニヤと私の方を見ていた。

「小春ちゃんは何作りたい?」

鈴木先輩がテーブルの上にノートを広げながら小春に問う。小春はパンケーキを切り分けていた手を止め、少しの間考えて答える。

「やっぱりお菓子ですかね!作るの好きなんですよ、ケーキとか。」

「いいね!美恋ちゃんは何かある?」

「えっと…、私はあんまり器用じゃないので、簡単に作れるものからスタートしたいなって思います。」

なるほどね、と言いながら鈴木先輩はノートにメモをとっていく。するとその様子を見ていた深瀬先輩が口を開いた。

「やっぱり最初だし、あんまりハードルが高くないお菓子にした方がいいかもね。混ぜるだけとか焼くだけとか。」

「じゃあ、ホットケーキとかどう?」

「いいと思うよ、今度の部会で提案してみよう。」

まだ正式に部員となったわけでもないので、先輩2人が話し合っている内容を聞くこともなしに聞きながらアップルパイを食べ進める。小春も同様にパンケーキにぱくついていた。

私たちが食べ終わると、鈴木先輩が話を振ってきた。

「高校生活はどう?だいぶ慣れた?」

「まだ4月だからあんまり慣れないですよ~、朝の満員電車もきついし。」

小春が泣き言を言うと、鈴木先輩がわかるわかると同意した。どうやら2人が通学する列車はとてつもない乗車率らしい。田舎を走る沿線に乗る私はまだそこまでの電車に当たったことがないためよくわからない。

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