第4話
「美恋ちゃんはどこで降りるの?」
自分が降りる駅名を答えると、先輩も降りる駅名を口にした。先輩の最寄り駅は私の最寄り駅より5つも遠くの駅らしい。学校から1時間はかかる距離だ。
「ずいぶん遠くから通ってるんですね。」
正直な感想を言うと、先輩は柔和な笑顔を崩さずに答えた。
「そうだね、でも3年も通ってるからだいぶ慣れたよ。音楽聴いたり勉強してたりしたら割とあっという間。同じ沿線使ってる同じ高校の人あんまりいないから、美恋ちゃんが入学してくれて嬉しいよ。」
「この沿線田舎だから、あんまりうちの高校で使う人いないですよね。」
自虐気味に笑うとそうそう、と先輩も同調して笑ってくれた。その後も他愛のない話をしていると、私の最寄り駅に着くアナウンスが車内に流れた。
「あ、次だね。今日はありがとう、話せて楽しかったよ。」
「こちらこそ楽しかったです、ではまた。」
そう言って開いたドアから車外に出る。ホームを歩いていると、遠ざかっていく電車の中から先輩が手を振るのが見えたため、あわてて会釈をする。やはり今まで出会ったクラスの男子などとは全然違う、落ち着いている態度を思い出して1人胸が高鳴る。電車が見えなくなってしまっても、私はしばらくホームに立ったまま電車が向かった方向を見ていた。
翌日の昼休み、小春と中庭でお弁当を食べていると調理部の話題になった。今日の放課後になったら、職員室に行って入部届をもらい、親から印鑑や署名などをもらって明日提出することにしたのだ。
「部活するの楽しみ~!何作りたいって提案しようかなあ…。」
「私は不器用だから簡単なものからがいいなあ…。」
そうひとりごちると、小春が意外そうな顔をした。
「美恋、不器用なの?真面目だし何でもできるのかと思ってた!」
「そんなわけないじゃん!めちゃくちゃ不器用だよ、折り鶴とか折れないし、クッキー焼けば半生のが出来上がるし…。」
苦笑いをすると、小春が目を丸くする。本当に意外だったようだ。
「でもさ、料理の腕はこれから部活で磨けるじゃん?男を落とすならまずは胃袋からとか言うし!」
小春はそう言ってにやりと笑う。どうやら恋愛話が好きなようだ。
「小春は好きな人とかいるの?」
「いるよ!中学から付き合ってて、高校は別になっちゃったけど。」
恋人がいない歴=年齢の私は驚く。途端に小春が大人に感じる。
「彼氏いたんだ。小春かわいいもん、わかる気がする。一緒にいて楽しいし。」
「え~、ありがとう!美恋もかわいいよ!」
言いながら抱きついてくる小春を笑って抱きしめ返す。
「美恋は好きな人とかいないの?応援も協力もするよ!」
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