第16話 揺れてる
シンクにハマるまな板をGETしてから、魚捌きが止まらない。
「春を過ぎれば、楽しめるよ。まだ少し防寒必要だけどさ」
テレビで釣り番組を観ながら話し始める夫。
「ん?何を?主語はどこへ行った?」
私は、コーヒー豆を挽きながら、すかさずツッコミを入れる。
「あーごめんごめん、海!海釣り!」
「へぇ〜、船?」
「うん、船。まだ少し防寒必要だけど、楽しめるよ。一緒に行く?」
「えー?!無理無理!絶対酔うー」
私は、子どもの頃から乗り物は酔いやすい。
今でこそ、車や電車に酔わなくなったけど、船は無理だ。なぜなら遊園地の乗り物でも上下横揺れする乗り物は無理だから。
魔法の絨毯に乗ろうものなら、空中に吐かないように必死で、降りると、そのまま灰になりそうな勢い。
「そっか〜、じゃぁ俺行ってこようかな」
とスマホを見ながら、なにやらポチっている。
「よし!予約した!次の休みに船釣りに行ってくるね」
とニッコリしながら、こちらに親指立ててる。
爽やか君かよ!
「早っ!もう予約したのー?」
コーヒーをテーブルに運んで、椅子に座ると
すかさず
「ここ!これこれ!この船に乗るんだ」
とスマホを見せてくる。
私は興味ないけど、仕方ないから観る。
「何が釣れるの?」
あえて、いくらかかるかは聞かない。
船代と釣れた魚の値段を考えるのは無粋だろうと、知らない方が良い気がしたから。
「今回はシロギス船だよ」
シロギス・・・キス、天ぷら?私の頭の中は天ぷらと酒でホワホワしてる。
釣り日まで、ちょいちょい釣具屋に行く夫。
知らないうちにクーラーボックス、大きさの違うもの3個買ってた。既に2個あったのに。
「えええー!どこに置くのよ?置き場考えてから買ってよ!つか、なんでサイズ違いでこんなにあるの?」
驚いてガーーッと言ってしまった。
「いや、ほら!釣る魚によってさ、大きな魚だったら、こ、、」
喋ってる途中に、被るように私がキレる。
「は?大きな魚入るやつなら小さい魚も入るけど?わざわざ小さいボックス必要?」
そんな私のちょいキレに慣れてる夫は動じない。
「大丈夫、大丈夫。まぁまぁママ、ね、色んな魚釣ってくるから!ハハハ」
そして釣り日当日。
そこそこの数を釣って帰ってきた。
天ぷら、少しだけど刺身も食べれた。
キス以外は、野菜天ぷらだけどね。
呑みながら美味しく食べてると
「まだ、揺れてるんだよ。たぶん明日の朝まで揺れてると思う。昔さ小笠原行ったんだよ、片道25時間以上だから、帰ってきた時は3日くらい揺れてたような気がするよ」
と笑顔で話す夫。想像しただけで私は酔いそうになる。
そこから、カツオ船、カワハギ船と行く。
カワハギは凄く美味しくて、しばらくカワハギ船ばっかり行ってた。
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