第12話 趣味が料理って尊敬
焼き鳥は半年くらい、毎日のように続いた。
卓上の串焼き機?炉端機?みたいなものを買い、換気扇下で焼いてる。10本焼けるかどうかの小さな焼き機だけど、気分は焼き鳥屋さんで楽しいらしい。
実を言うと、最初は「卓上炭火焼き機」を購入した。これでテーブルの上で焼けると思っていた夫。
「ママ!これ買っちゃったよーー!」
テンション高く、卓上炭火焼き機を見せる夫。
すかさず私に
「でも、これ家の中じゃ使えないよ」
と言われ
キョトン顔
「え?なんで?卓上だよ?」
と箱に買いてある卓上の文字を指で刺す。
「それ、炭焼きでしょ?家の中ススだらけになるじゃん」
目を丸くして
「たーしーかーにー」
と夫は納得したようだが、【卓上】の文字を指している。
「それはさ、キャンプとか屋外で使う時に、テーブルに乗せて使えるんじゃないの?」
「あーーーー」
と声を落とし、箱を持って凹んでいた。
この焼き鳥は15年経った今でも焼いている。
継ぎ足したばかりの新しいタレで焼き鳥を食べると
「ん?タレが若いね」
なんて言っちゃうくらい、家族も散々バラ焼き鳥三昧だった。
砂肝の捌き方をYoutubeで覚えて、やるようになった。どんどん早くなり、無駄がなくなり、
砂肝の銀皮、縁側と、普通お店では、なかなか食べられないものまで焼くようになった。
「砂肝ーーー!」
砂肝焼いてると、家族で争奪戦するくらい好き。
最初は、硬くてイマイチだった砂肝も
15年の今、下手な店より大きくて柔らかい。
臭みとかあろーものなら
「これやだ」
とハッキリ言われる 。
焼き鳥を始めた年の誕生日プレゼントは
【小さくて先が鋭角な出刃包丁】
砂肝は我が家のレギュラーメニューになった。
次は「ハツ」だった。鶏の心臓。
あるあるなのが、食べるとハツ独特の臭みがあって噛んだ瞬間、顔が歪む。
ハツ独特というかホルモン独特というか。
臭みの取り方を検索しては試して、今は臭みなしの柔らかいハツ。ハツ元も食べれる。
焼き鳥大好き家族だから、飽きもせず食べている。近所の焼き鳥屋より美味しい。
でも、たまには、お店で食べたいよね。
後片付けしなくて済むしさ、
家だと、パパは焼きっぱなしだから、キッチンで飲みながら焼いて食べてる。
焼き鳥した後の片付けは、網洗ったり、綺麗に油汚れを取らないと。ベタベタさせようもんなら、そこからどんどんハードにベタベタしていきガビガビになるしね。レンジフードカバーなんて真っ黒になるから張り替えなくちゃだ。
それでも楽しいらしく、焼き鳥機は二代目。
夏は
夫が焼き鳥を焼く
私は厚揚げときゅうりの和物やサラダ
小さめおにぎり、乾き物お菓子を用意し、ベランダへ
夕暮れのベランダは、エアコンいらず。
風が涼しく明るいけど日差しはない。
キャンプ用のテーブルや椅子を広げておく。
5時過ぎくらいにシャワー浴びて、つまみとビールを持って、いそいそとベランダへ行く。
夕風が気持ちよく、冷えたビールが美味い!
学校から帰ってきた子ども達も、バタバタとベランダへ来る。
「ずるーーい!」
「早く手洗って、自分の飲み物持っておいで」
夏場は、ほぼほぼベランダご飯になった。
夫がいない日は、焼き鳥がない。
普通の晩ごはんをベランダで食べる。
家の中で食べるより美味しいらしい。
外の空気ってなんだろね?リラックス出来る。
だんだん手慣れてきて、発泡スチロールのクーラーボックスに氷とピール、グラスと炭酸水を入れて、片手にウイスキーの瓶を持ってベランダへ。
風呂上がりのスッピンでも誰にも見られないし
よれよれTシャツ着てても大丈夫だし
「ハーーーーーッ」
と椅子に座り、息を吐くように声をだす。
ピールをグイッと飲めば
「んまーーっ!」
と、1人だって爽快にテンション上がる。
子ども達に、もっと色々と食べさせたい!という欲求が日に日に強くなる夫。
オーブントースターで焼くだけの、簡単レシピをいくつも見つけては作るようになった。
茹でたマカロニと炒めたベーコンをグラタン皿に敷き詰め、トマト缶に少しのコンソメ入れて上からかける。更にピザチーズを散らして焼くだけ。
適当に調味して焼くだけだけど、子ども達には、まぁまぁウケが良い。
スーパーで売ってる300円くらいのピザに乗せて焼いたりもしてた。2度美味しい。
特に手が込んでなくても良い。簡単でパパッと食べれるもので良いというのは私も大賛成!
とはいえ、料理は相当楽しいらしい。
こんなにハマるとは思わなかった。
検索してレシピを見て作ると言うことを覚えたら、私に聞く必要ないから、自分の作りたいものを作るのがノンストレスなのだろう。
本人も
「料理なんて、ママので十分満足してたし。今でも満足してるよー。でも、自分で作って喜んで貰えると楽しくなっちゃって。だんだん欲がでてきてさー、【めちゃ美味い】とか言わせたい、焼き鳥が店で食べるのより美味い!って言われた時、ほんと嬉しくてさー」
快感フレーズってやつね!
お世辞抜きの「美味いっ!」が欲しい!
「美味しいーって言われると嬉しいよねー
でもさ、冷凍庫の中、鶏肉だらけなのは困るなー。お弁当用の材料とか買ってこれないの」
「ごめんごめん。じゃぁ、冷凍庫のこのスペースはパパが使って良い?」
深い引き出しの半分のスペース。
「んーオッケー。あと真ん中の薄っぺらいスペースは絶対にダメ。急速冷凍できるスペースだから、お弁当のおかず作り置き用でぃす」
「じゃぁ、その上の引き出しスペースは?」
「そこは、ちょっと加工した肉とか、冷食とか入れときたいのよね」
「わかった、じゃぁわかんなかったら聞くよ」
なんとか冷凍庫スペース問題は解決しそうだ。
とりあえず、今パンパンだから、しばらくスペース空かない。
スペースの話したら、夫が仕込んだ唐揚げとかは深い引き出しに入れる。たまに
「あ、明日の弁当のおかず、ないじゃーん」
と落胆する私に
「パパ唐揚げ、使っていいよ」
と分けて貰う。
ん?夫は夕飯用に仕込んでるらしく量が多い。
「じゃぁ、今夜はパパ唐揚げ食べて、お弁当用にいくつか貰うわ」
だんだん、私が夕飯作る日が減ってる気がする。楽チンで良い。その分、休みの日は、しっかりと作るようになったかも。
ヒバ手抜きだったのになぁ。
『ママのご飯より、パパが良い』とか言われたら、なんか悔しいし。
夫の料理欲は、まだまだ収まらない。
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