第5話 酒のつまみ

包丁を使うようになってから、レパートリーが増えてきた。

相変わらず、果物ナイフだけどね。


カレーばかり作ってた夫。

でも、私は食べない。

味見はする。

次の日に残ってれば食べる。


なぜなら、私は夕飯ではなく「呑み」だから。

夜は晩酌するので、基本ご飯は食べない。

つまみが少しあれば良い。


どうやら、私に何か食べさせたいと思ったようで、つまみのレシピを探し始めた。


ベーコンとほうれん草のバター炒め

ジャーマンポテト

ポテマカサラダ(ポテトとマカロニ)

グラタン

野菜炒め

ピーマンの肉詰め


高カロリーなツマミが続くから、ちょっと困った。


んー、味は普通に美味しい。

目分量でササッと作る私と違って、まだ手際が慣れないから少し時間かかるものの、丁寧だから普通に美味しい。


でも、どうしよう。

私が、つまみは少ししか食べないのは知ってるはずなんだけど、「食べて欲しい」の欲求が強すぎるのか

「ママ、これ作ったから食べて」

が止まらない。

いらないと言うべきか、悩む。

こういう気遣いも、酒呑んでる時って面倒くさいんだよね。

円満になんとか止めたい。


私も作った料理を断られるのは嫌だしさー

楽しい時は尚更ね。


「ごめん、わたし、お酒呑んでる時は、つまみは少しで良いんだよね。食べちゃうとお酒が美味しくなくなっちゃうのよ」


言った!


「あ、ごめん。俺食べるから良いよ」

ちょっと、しょげてる。

「パパ!それ頂戴ーー」

と子ども達が食べ始めた。

「美味しーよーこれ!」

「良かった、まだあるから食べて良いよ」

褒められて、嬉しそうにニッコリ。


おお!子はかすがいってか!


次の日は、夫が遅出で帰宅は夜11時過ぎ。

なので、私が作るんだけど

油っぽいのも飽きたしと、お刺身にした。


刺身の柵を買って、切ったものと

刺身用の鯵が安かったから、タタキにした。


夫が帰宅後、お風呂に入って晩酌する。

「今日は刺身だね〜鯵のタタキ美味そう」

とビールを一口ゴクっと呑むと、刺身を食べ始めた。


「あ、骨。タタキに骨入ってた」

と夫が顔をしかめた。

「あ、ごめーん。骨入ってた?まぁ許せ」

と私は全く気にせず、てへぺろ。

「タタキは、どこで買ったの?」

「コープだよ。刺身用の鯵が安かったからさ」

「ママ、捌いたの?」

「そうだよ。鯵は、刺身にしたり、フライにしたりしてるでしょ?結婚した時から捌いてるよ」

「ホント?」


ちょっと、、あんた、自分で料理するようになるまで、そう言う事に無頓着だったのかい?

トゲトゲしたい。ちょっと虐めたい。

私の中の何かが出そうになると


「魚の捌き方、覚えたいなー鯵大好きだし」

とモグモグと食べながら喋る。

「食ってから喋りな」

「ふぉい」


夫の休みの日

買い物に行った夫は、【鯵】を買ってきた

3尾。

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