吹き抜ける冬風にぬくもりを求める 前編

『マーティンボロー テ テラ ピノ ノワール

 2021

 マーティンボロー ヴィンヤード』


 NZのピノ・ノワールの素晴らしさを世界に広めたパイオニアである。

 国立土壌局が実施した調査でブルゴーニュとの気候的・土壌的類似性が認められ、その調査を担当したデレック・ミルヌ博士が、1980年に設立したワイナリーだ。

 他にも、環境に負荷のかからないブドウ栽培、ワイン醸造を心がけているらしい。


 このワインは知名度を得たピノ・ノワールであるが、比較的若木で様々な区画から造られるカジュアルなスタイルなのだそうだ。


 御託は程々に、実際に開けてみよう。


 ラズベリーなどの甘酸っぱい華やかな香り、味わいは渋みもほぼ感じること無くソフトな口当たりだ。

 ベリー系のフルーティさ、軽やかでスルスルと飲めてしまうタイプである。


『とりもつラーメン』


 山形県新庄市名物・愛を「とりもつ」ラーメンとして自治体で猛アピールしているそうだ。

 僕はそんなものとは無縁仏ほどかけ離れているが、作ってみようじゃないか。


 その名の通り、良く煮込んだ鳥モツをあっさりめの醤油ラーメンにトッピングした御当地グルメである。

 牛や豚に比べれば癖は少ないが、それでも好き嫌いは出やすいと思う。


 作り方は、とりあえずとりもつ煮から始めなければならない。

 煮込んでから一晩寝かしてからの方がより本格店の味になるそうだが、そんな手間をかけずとも作りたてでも十分に家庭料理としては楽しめる。


 クックなパッドで調べたレシピを元にお手軽に鶏ガラスープの素を使って、調味料を混ぜ合わせてラーメンスープを作る。

 麺を茹でて刻み青ネギとメンマをトッピングして、とりもつ煮を加えてあげれば完成だ。


 実食


 あっさりめの醤油ラーメンであったが、とりもつの煮汁も加わっているからか味わいにコクが出ている。

 とりもつもスープで薄まること無く、コリッとした砂肝やレバーの血のような癖のある味わいも十分に楽しめる。


 ではワインと合わせてみよう。


 これが意外やちゃんと合う。

 軽やかでシンプルな果実味のある若いピノ・ノワールであったが、とりもつの鳥獣の味わいによって僅かに熟成された深みを感じる。

 野性的な味わいへと変化しているが、これもまたワインの進化でもあることだろう。


 若さ故の溌溂したワインも出会う料理によって深みある味わいをもたらす。

 人間とワイン、例えられることが多いが、実に納得できることも多い。


 人もまた出会う相手によって何を想い、何を感じ、何をしていくのか。

 それによって、熟成された深みのある人間に成っていくのだろう。


 再び学生となったあの頃の僕は、青き春という甘酸っぱい幻想をやり直そうと、ただぬくもりに飢えていたのかもしれない。

 若さは、いや、男はいつまでも幻想を求めてのたうち回る生き物なのだ。

 だが、それもまた深みのある人間となるために必要な熟成期間なのだろう。

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