第89話 海辺デート

「ねえ、今日はどこ行こうか!!」


 美由と彩芽の嬉しそうな表情に比べて、俺は落ち込んでるように見えるだろう。もちろん、家に帰れば詰問されることが確定しているからだ。特に美由推しの姉さんに知られたことがまずかった。


 俺もどこかで伝えないといけないと思っていたよ。でも、これだけ早いと話がまとめきないよ。


「ごめん、わたしのせいだよね」


 俺は隣を歩く美由の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「美由のせいじゃないよ」


「本当かなあ? それにしては落ち込みすぎてるような……」


 そもそも、この決断をした時点で、姉や両親と対峙しないといけないことは分かっていた。そんな大それたことを決めているにも関わらずなんの準備もして来なかった俺の責任なんだ。


「海岸に行こっか?」


「寒くないか?」


「わたしたちがいるから大丈夫だよ!!」


 さっきのように暖めてくれるつもりなのだろう。


「それに三人で考えたら、いい案が浮かぶかもしれないし……」


 美由も彩芽も俺の決断に責任を感じてるらしい。


「じゃあ、行こうか」


「うんっ!!」





――――――――





 寄せては返す冬の海。水面が光に照らされてキラキラと輝く。


「思ったより寒くないな」


「わたしたちのおかげだよ」


「そうかもな」


 俺の左腕には美由が手を回し、右腕には彩芽が手を回す。女の子のいい匂いがするし、人肌最高だね。


 クラスの連中がこのことを知ったら、きっと羨ましがられる事だろう。いや、もしかしたら、美由推しの生徒達に言いがかりをつけられるかもしれないな。


「幸人、暖かい?」


「……うん、暖かいよ」


「わたしはどうかな?」


「彩芽も暖かい」


「良かった……」


 以前は、ここにいれば、必ず彩芽がやってきて勇気づけてくれた。


「覚えてるか? いつも俺が困ってると彩芽はここに来てくれたんだよね」


「忘れるわけないよ!!」


「実は数日前、彩芽と会った時も、ここにいたんだ」


「……そうなんだ。知らなかった。ごめんね」


「謝る事じゃないよ。その時は美由が来てくれたし……」


「本当に幸人は好かれてるよね」


「……だろ!!」


 彩芽はそう言うと海をじっと見つめていた。


「本当にこんな日が来るなんて、思わなかった。わたしね……川口に……」


「辛い事は、言わなくていい」


「……ごめんね。わたし、本当にバカだったよ」


 隣に座る彩芽の肩が震えているのがハッキリと分かる。


「大丈夫。結果オーライだよ。このままずっと囚われたままじゃなくて良かった。助けられて良かったよ」


「ありがとうね。本当にふたりのおかげだよ」


「彩芽が俺のこと嫌いになってなくて、本当に良かったよ。俺はそのことで誰も信じられなくなってた。そんな時、美由に会ったんだ」


「幸人、ごめんね。わたし、人間不信の理由を知らなかったから、最初から幸人の心に土足で踏み込むようなことをしたかもしれない」


「大丈夫だよ。美由のおかげで救われた」


 俺は左隣に座る美由の大きな胸を見た後、右隣に座る彩芽の胸を見た。


「触って比べてみる?」


「えっ、いいの?」


「……エッチ……」


 お言葉に甘えて、と思ったが流石にそれは失礼すぎたか。


「ごめん」


「違うんだよ」


「そう、違うの」


「雪とは触るのに確認なんかしなくていいんだよ」


 そしてふたり声を揃える。


「触りたい時に触ればいいからね」


「えっ!?」


 そんなこと許されるのか。付き合ってる恋人同士でも超えてはいけない一線というのがある。間に受けて触ったら、そんなつもりじゃなかった、と泣かれることもあると聞く。


「もう一度、確認するけど、そう言うつもりじゃなかった、とかないよな」


「そんなことわたし達が言うと思う?」


 俺は左隣の美由の胸を服の上から揉んだ。そういや、前も触ったか……。


「服の上からじゃ、分からないよね」


「ちょ、ちょっと!!」


 そう言うと俺の手首を掴んで、シャツの下に招き入れる。


「美由……それはあまりにも……」


「……嫌かな?」


「以前、他の男子にしたことあるの?」


「あるわけないでしょ! わたしも恥ずかしいんだからね!!」


「じゃあ、わたしも……」


 彩芽も美由に対抗して、俺の右手首を掴んでセーターの中に突っ込んだ。少し汗ばんでるのが分かる。


「緊張してるのか?」


「あ、当たり前でしょ!」


 川口で慣れてるのかと思ったが、そうでもないらしい。俺の表情に気が付いたのか、彩芽は目を逸らした。


「そうだよ。エッチはしたよ!! だけどね、こんな自分から、誘ったことなんて一度もないからね!!」


 そのまま、ブラジャーの中に引き入れた。


「あっ、彩芽ちゃん、ズルい!!」


 そう言うと美由も掴んだ手首をそのまま胸に招き入れる。


「どう?」


「なんか山頂に固いものがあるよ」


「ちょ!! ちょっと、そこは……だめ」


 俺は美由の山頂のそれをコリコリすると、途端に呼吸が激しくなった。


「もしかして、ここ、弱かったりする?」


 寒いはずなのに、額から汗がすっと流れ落ちた。


「……バカっ」


 それにしても美由の丘は、なだらかなカーブを描き山頂に続いている。山頂は周りがデコボコしていて、その真ん中は丸みを帯びた柔らかな突起がついていた。


「ピンクなのかな?」


「バカっ!」


 流石に覗き込むわけにもいかないが、恐らく使い込まれてるわけがないから、ピンクなのだろう。


 突起は弾力があり、手で摘むと少し大きくなった。


「ちょ、ダメだって……」


「ダメなのか?」


 不同意性行為と言ってたっけ、一応聞いとかないとな。


「ダメ……じゃないよ」


 女の子って不思議だよな。ダメがダメじゃないこともあるらしい。もう一度、突起を摘むと、あっとか、あんっとか、声を出した。


「感じてる?」


「……感じてない」


 不思議だよな。ここで、感じてると言われると、男は嬉しくない。


「わたしも、同じことして大丈夫……だよ」


 右に座る彩芽の方を向くと、して欲しそうな顔をしてる。女の子の大丈夫は、して欲しいだったりするんだ。


 本当に難しい。


 こちらは美由の胸よりも、ずっとなだらかな丘だった。


 それでも、小高い丘の頂上は、デコボコしていて、その真ん中には美由と同じ突起がついていた。


 摘むと微妙にあんっと色っぽい声を出す。


「感じてる?」


「……そんなこと……ない」


 その割にはえらくはあはあ、と息が苦しそうだ。


「大丈夫? 病気じゃないよな?」


「……バカ」


 うーん、病気ではないらしい。


「ピンクかな?」


 使い込まられていたら、ピンクじゃないかも知れない。


「幸人の想像にお任せするよ」


 うーん、見ないことにはなんとも言えんよな。


 そんなことを考えながら、時間だけが過ぎて行き、気がついたら夕方だった。いや、これ、なんの解決にもなってないだろ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る