第59話 これって、監禁!?
「あの、柏葉くんは!?」
わたしは会場に入ると、目の前の山本に確認をした。誕生会が行われてるのは府内のレンタルスペースだが、わたしは入った時から違和感を感じていた。クラスの大半が参加する誕生会と聞いていたのに、参加していたのは山本佑樹達グループ数名だったのだ。
しかも、幸人を嫌っている上村渡もいた。これはおかしいと思ったわたしは、席に座らずに立っていようと思った。
「もうすぐ来るんじゃないかな。とりあえず座ってよ!」
「本当に柏葉君を呼んでるんですか?」
その言葉を聞いて、目の前の山本は他のメンバーに目配せをした。その態度にわたしの不信が確信に変わった。
「わたし、用事できたから帰るね!」
「ちょっと待ってくれよ、美由ちゃん。俺たちは君の味方なんだ。君たちの関係を教えてくれたら、手伝ってあげるよ。そのためも含めて柏葉くんも呼んだんだよ」
山本は入り口に回り込み、わたしが逃げるのを阻止しようとする。やばいけど、今逃げたら何をされるか分かったものではない。
「まあまあ、とりあえず美由ちゃん座って、座って……」
あまり幸人との関係を公にすることはできない。彼らもわたしが敵意を示さなければ無理やり何かをしてくる事もないだろう。仕方なく席に着くと、山本はなんでも食べてよ、とにこやかに笑った。
流石にここに出された食べ物は食べたくないし、飲み物も飲みたくもない。睡眠薬など入れられていたら、介抱すると称して犯されても不思議ではない。
「でさ、美由ちゃんは柏葉の彼女なの!?」
「……はい!?」
私たちの関係はどうなるのだろうか。私たちは友達ではあるが恋人ではない。そして、学校では揉め事を嫌う幸人から他人のふりをしようと言われている。
ここで言う答えは……友達ではない。
「席はお隣さんですが……それだけですが」
「……へえ、じゃあ友達でもないってことか」
どうせなら彼女と言ってしまいたいが、騒ぎになるのは幸人の本意ではないだろう。
「まあ、少しだけ気になる……かな」
「へえ……珍しいね。男の告白を全部断ってる美由ちゃんが、少しと言え気になってるとはね」
少しどころじゃないよ。わたしはアイビーのペンダントの花言葉を知っている。わたしから言うのは嫌なのでどこかで気がついて欲しいのだけどな。
「わたしが誰の関心を持っていようと、あなた達には関係ないと思いますけども……」
これを聞いた上村がわたしの顔に自分の顔を近づけた。思わず、わたしは深く後ろの席に仰反る。
「関係あるよね。だってよ、天使様って全く男に関心示さないくせに、柏葉の隣の席に座ってる時、何度もチラ見してるんだぜ、おかしいよな」
「わたしが誰を見てようと勝手だと思いますけども……」
「ふざけてるんじゃねえよ!!」
その言葉に上村が大声でわたしを威嚇した。
「まあまあまあまあ、渡やめとけ!」
「それより、誕生会と聞いたから参加したんです! 違うなら帰りたいんだけども……」
もうこれ以上ここにいたくない。このメンツで幸人を祝うなんて、あり得ない。
「ごめんね。当初、柏葉くんも誘ったんだけどね。今日は用事ができたみたい」
「そうですか……じゃあ、わたしはこれで……」
「あのさ、天使様かなんか知らねえけどよ。うざいんだよ! 何が単なる隣の席の人だよ! 嘘つくんじゃねえよ!!」
上村がわたしの右肩に手を置いて立とうとするのを制止する。まずいな……、この部屋は外に声が漏れにくい。
「まあまあまあ、渡の気持ちも分かるが、とりあえず気持ちを抑えてくれよ。俺たちは美由ちゃんに危害を加えるつもりはないんだよ」
要するに上村が脅して、山本がなだめる役か。
「力づくでしたいなら、抑えつけたらいいだけだからね。でもさ、できればそんな事はしたくはないんだよね」
私の顔に自分の顔を近づけてニッコリと微笑む。その冷たい笑顔の下に下心が渦巻いている。その顔を見て山本達がどうしたいのか分かってしまった。
「ちょっと、手洗いに行きたいのですが……」
逃げないとやばい。流石にトイレまで追ってくることはあり得ない。
「じゃあさ、スマホ置いて行ってよ」
「……はい!?」
「いや、スマホ置いていかないなら、この部屋から出さないだけだどさ。俺たちは美由ちゃんが失禁したとしても、別に構わないんだよね」
「うっわ、天使様の失禁シーンが見られるの。俺、カメラで撮影しようかな?」
「自分の立場を考えた方がいいぜ。裸にして写真ばら撒いてもいいんだよ。いやあ、無茶苦茶売れるだろうね。なにせ、あの天使様の裸だよ!」
これはヤバいよ。わたし、本当に馬鹿だ。お願い幸人助けて……。
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