第44話 本当の気持ち!?

「おいしいね」


「うん、確かにうまい」


 俺はダイナソーパークを出て、少し色々ショップを回ってから、ハンバーガーショップに入った。


「でも、これ高いよな。ハンバーガーセット1300円は高すぎるぜ」


「うーん、でもこの分量あるから仕方ないよ。あっそうだ、半分あげるね」


 美由は自分の食べる前のハンバーガーを半分に割って俺に渡してくる。


「えっ、そんな量でいいのか?」


「ハンバーガーのカロリーを馬鹿にしちゃダメだよ。かなり、多いんだよ」


「そうなのか?」


「ほら、ここ。ソースとかマヨネーズとかたくさん入ってるでしょ。家でハンバーガー作るならこんなに入れないもの」


「本当だな」


「……そうだ。今度、ハンバーガー作ってあげるね」


「ハンバーガーも作れるのか?」


「あれは簡単だよ」


 頬杖をついて俺をニコニコして見てる。


「それじゃあ、俺が一人半分食べて太らないかなあ」


「大丈夫だよ。幸人ならそのくらい食べてもね。男の子だからさ」


「でもさ、それで俺が太ったら嫁の貰い手、違う……婿の貰い手がなくなるかもよ」


「かもね……」


 そう言って目の前の美由は、けらけら笑う。


「おいおい、洒落にならないぜ! まあ、もともと貰い手なんかないけどな」


「そうかな?」


「クラスの女子とか全く俺絡んでないんだぜ。陽キャグループの長谷川大和たちメンバーにはたくさんの人が集まってるのによー」


「まあ、どっちかというと陰キャだもんねえ」


「だろ! クラスの勢力図見ればわかるけどさ。大和と大和好きな女子たちのグループと、天使様と天使様ファンの男たち」


「むーっ、天使様って呼ばれたくないんだけどっ」


 そう言うと美由は頬を膨らました。


「でもさ、天使様とか美由ちゃんとか言われて嬉しそうに相槌してるじゃん」


「わたしは幸人と違って強くはないからね」


「俺も強くはないぞ」


「強いよ、ボッチで誰にも声をかけられなくても、一人でいるもん」


「それは強いんじゃなくて、人間不信なだけでさ」


「今でもそうかな!?」


「うーん、ちょっとはマシになったかもな」


「良かった……それに後ろの彼も幸人に話しかけてるよね」


「あいつはよくわからんやつで、たまに話しかけてくれるんだよな」


「いいじゃん、クラス唯一の友達だよね」


「美由ちゃんは友達じゃないのかよ」


「えーと、わたしのはちょっと違うかな?」


 えっ、俺はじっと美由の顔を見る。美由は明らかに照れて顔を赤らめていた。


「なっ、ななななんでもないんだよ!」


「まあ、そうだよな。美由ちゃんはクラスでは他人だからな」


「そう言う意味じゃないんだけどね。じゃあ、話しかけてあげよっか?」


「いや、いい」


「なんでよ!」


「そんなことしたら美由ちゃんの地位まで危なくなるぜ」


「わたしはそんなつまらないものに固執してませんよ」


「でもさ、夏休み終わったらまた騒ぎになるぜ!」


「なぜ!?」


「クラスに学年トップ10が張り出されるらしいぜ」


「あっ……」


 美由は口を押さえて驚いた表情をする。


「頑張りすぎたかな?」


「いや、頭のいい美由ちゃんもカッコいいぜ」


「幸人がそう言うなら、もうちょっと頑張ろうかな」


 美由は最後のハンバーガーを食べ終わるとこちらを見てニッコリと笑った。


「さあ、次のアトラクション見に行こうよ!」


 俺も最後のハーンバーガーを食べると立ち上がる。


「そうだ! 幸人が太っちゃって誰にも相手されなくなったら、もらってあげよっか」


「うん? なんのことだ」


「なんだろうね」


「なんだよ、それ」


「なんでも、ない話だよ」


 はあ、もらってあげようとか何のことだよ。えっ、さっきの太ったらの話の答えなんか。えっ、えええええっ。何よ、それ。


「おいおいおいおい、今の話……」


「しーらないっと……」


 美由はそう言ってこちらを振り返って、手を差し出す。


「えっ、ちょっと……」


「今日はいいでしょ。お友達だよね」


「あっ、ああ……」


 異性のお友達は手を繋ぐのだろか。最近の高校生は進んでるな、などと脳内は暴走しまくりで、考えがまとまらなかった。


 それにしても今言った言葉は何なんだよ。もしかして、俺に……、いやあるわけない。相手は学年1美少女の天使様だぜ。


 そうだ、これはモテない俺に対する同情だ。と言うか美由の人に気をつかう性格治した方がいいと思うぜ。俺だから冗談だと分かるが、他の男子が聞いたら好意があるのかと勘違いしてしまうぞ。


「なあ、美由……ちゃん?」


「うん、なーに幸人」


 美由は呼びかけにニッコリと笑った。


「前から思ってたけどもさ。美由、お前は人のこと、気を使いすぎだ!」


「そうかな!?」


「うん、そこまで行ったら、もう介護のレベルだぞ!」


「うーん、よく分からないけど、そうなのかな?」


 美由は上目遣いで俺をじっと見る。


「ちょっとは自分の気持ちを優先しろよ!」


 美由はそれを聞いて、ハッと自分の口を押さえた。


「結構、優先してるんだけどね!」


「優先してないだろ!」


「してまーす!」


 そう言って走りだす。おいおい、こんな所で走ったら迷子になるってさ。いや、迷子はないか。俺は慌てて追いかけた。てか、怒って逃げたんなら追いかけない方がいいのか。わけわかんねえ、けど。けど、なんか知らないけど追いかけないといけない気がした。


「おいおい、なぜ逃げるんだよ!」


 美由は追いつくくらいのゆっくりとした距離で逃げていた。俺は慌てて美由の手を取る。


「分かってないの、幸人の方だよ!」


 何でだよ。何を分かってないんだよ。

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