第34話 美由の弱点!?

「このホテル、露天風呂、あるらしいよ」


「えっ、凄いですね!!」


「後で入りに行きましょうか?」


「うんっ!!」


「幸人くんも行くよね!!」


「えっ、ああ……男と女は別だけどな」


「そんなこと分かってるよっ!」


「あっ、もしかして、幸人。私たちの裸想像してた?」


「姉さんの裸はいいです」


「おっ、おおおおっ、大胆発言来たよ。美由ちゃんどう思う?」


「ええええっ、そんなの困るよっ」


 どうしてこんなことになってると言うと、川上先輩はあれから、食事の後、会議があると言っていなくなった。


 このホテルは川上先輩が社長になってるそうだ。高校生社長か、確かに凄い……。


 そして、俺は201号室、美由と姉さんは301号室になった。なぜ隣じゃないのか悪意さえ感じるよな。川上先輩は美由ちゃん達の部屋には行くなよ。絶対だぞ、と俺をわざわざ呼び出して連呼してたな。


 そして、俺はもちろん201号室ではなくて、なぜか301号室にいた。俺がひとりだと可哀想と美由が寝るまではこの部屋に居ようと提案したからなのだが……。


「なんか困ってるよ。ほらほら、幸人はどう? もう一押しかもよ!!」


「えっ、そんな……わたし、まだ男性恐怖症だとと思うし、でも……その幸人くんなら……手を触れても大丈夫だったし……もしかしたら……」


 なんか話が変な方向に行きかけていて、俺は焦った。


「違う違う違う!!……そう言う意味じゃなくてさ!!」


「どう言う意味なんだよ?」


 姉さん頼むから放っておいてくれないかな。ただでさえ、美由は男性恐怖症で、しかも俺がいい加減だから、弁当作ったり、俺に世話を焼いてるだけなんだからな。


「姉さん、それ以上言ったら、元の部屋に戻るからね」


「ごめんね。幸人……くん。わたしが変なこと言ってね」


 美由は悪くない。悪いのは全て姉さんだ。


「いや、美由さんは悪くないよ。そうじゃなくて、美由さんは俺のことを頼りない弟のように見てるかもしれないけど、一応男なんだよ。だからさ、ちょっとは……その、気をつけた方がいいよ!」


 それを聞いて美由は顔を伏せて真っ赤になってしまった。


「ごめんね。なんかとんでもないこと言ってるよね」


「いや、美由さんが優しい天使みたいな娘なのは分かってる。でも、みんな優しいとは限らないからね。優しい殻をかぶって、本当は欲望の塊みたいな男も多いから、美由さんは、その……気をつけた方がいいよ」


 あえて言わないが、それは川上先輩あなたのことだよ。


「だってさ。美由ちゃん……どう思う?」


「想像通り、幸人くんは優しい人ですよ」


「だよねえ。女心は全く分かってないみたいだけどね」


「そうですねっ、……あっ……」


「ああっ、美由ちゃん今のどう言う意味かなあ」


「なんでもないですっ!!」


「本当に!? じゃあ、昔話とかしてもいい?」


「ちょっと、沙耶香さん!!」


 なんか、美由が無茶苦茶焦ってる気がするが気のせいかね。


「それ以上、言ったら泣きますよ!!」


「ごめん、ごめん。美由ちゃんの反応があまりにうぶで可愛くてね」


 姉さんが美由の頭をなでなでした。なんか、こう言うのいいな。


「そんなことしても騙されませんっ!!」


「ごめんってば。じゃあ、どうすればいい?」


「もうちょっと優しく頭撫でてもらえれば……、いいです」


 美由は顔を真っ赤にして伏せた。なんだろう、この小動物みたいな可愛さ。


「幸人、覚えておくといいよ」


「なっ、なにを?」


「これが美由ちゃんの撫でられポイントね」


「何を言い出すんだよ」


「この娘、頭撫でられるの大好きだから覚えておいたらいいかと」


「それは姉さんみたいに心許した相手の話だろ。俺は異性で、美由さんは男性恐怖症で、それに俺なんかに撫でられたら、迷惑だと思う」


「うーん、そうかなあ。美由ちゃんはどう?」


「どうって!? 何のことですか?」


「またまた、知ってるくせに! そりゃ、幸人に撫でてもらいたいかだよ」


「ちょっと!! 待った!!!!」


 301号室の扉がバタンと開いて川上先輩が入ってきた。て言うかマスターキー持ってるんだよな、こいつ。一番持たせてはいけない奴に思えるけど。


「あれ、川上先輩、会議終わったの?」


「ああ、あんなのはすぐ終わる。それよりもだな……、なぜ柏葉くんがこの部屋にいるんだね」


「だって幸人だけ一人なんて可哀想だからさ」


「彼は一人が好きなんだ!」


 そう、俺の部屋は川上先輩と相部屋ではなく、俺一人の部屋として用意されていた。本当にこいつはつまらない奴だ。


「それとさ。なぜ、自分の部屋に一度も入ってないんだ?」


「うん!?」


 こいつはもしかして俺の行動を監視してるのか?


「一人じゃ可哀想だと思ったからね。一緒にこの部屋にいたらいいかな、と思ったんだよ」


「駄目でしょう。こんなやつを野に放っては。 美由ちゃんに何かあってからでは遅いんですよ!」


 川上先輩はそう言って美由の手を取った。本当にこいつは成長しないのな。


「だから……」


 俺は美由が男性恐怖症と伝えようとした時に美由が手を振り払った。


「えっ、なぜ!!」


「わたし、言いましたよね。手を触れたりできないって!!」


「あっ!!」


「川上先輩のそんなところ!! わたし嫌いです!!」


 言った。美由がとうとう言った。案の定、川上先輩は消し炭のようになっていた。


「ただな、結婚前の男女が同じ部屋にいるのは間違いが起こってはならない。俺も同じ部屋には入らないから、柏葉くん、君も入るのはやめたまえ。これはルールだ!!」


 消炭になりながらも、それだけやっと言った。美由は言いたいことがいっぱいあるようだが……。


「なら、俺は部屋に帰るよ。その代わり川上先輩もそのマスターキーで勝手に入ったりするなよ!」


 それだけ言い残して……。


 後ろから美由の待ってと言う声が聞こえる。この方がいいんだ。美由も俺のことを考えてくれてるが、そんな気遣いはいらないんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る