第10話 デートの約束!?
「それにしても、良かったね。熱も下がったようだし、今日安静にしていたら、ゴールデンウイーク明けには学校に行けるよ」
そうか昨日からゴールデンウイークに入ってたんだ。
「今日の恩返しは、きっとするからさ」
「大丈夫だよ。わたしが勝手に世話を焼いただけだからね」
勝手に世話を焼いたなんてあり得ないよ。美由のおかげでどれだけ救われたか分からない。
「そう言うわけにはいかないよ。何かお礼がしたい」
「じゃあさ。これ一緒に行かない?」
美由はテーブルに映画のチケットを置いた。
「友達と一緒に行く予定だったんだけどね。急に予定が入ったらしいんだよ。柏葉くんが良かったらだけれども行かない?」
いや、それは川上先輩と行くべきだろ。もしかして、川上先輩が忙しくて、俺を誘ってるんだろうか。
「川上先輩、忙しかったりするのか?」
川上先輩はクラブ活動で忙しいのだろう。もし、そうであるならば、友達の俺が代わりに行ってやるべきなのだろうか。
「えっ!? 柏葉くん、知ってたの? そっかそうだよね。手紙だって渡してくれたし。うん、このチケットは川上先輩からもらったものだよ。いらないって言ったんだけどね」
やはり、川上先輩は美由と行くためにこのチケットを買ったが、クラブ活動に出なくてはならなくなったのか。
「川上先輩の代わりでいいなら、ゴールデンウイークは暇だしついていくよ」
「良かった。女友だちと行こうかと思ったんだけどね。でも、そうなったら川上先輩の気持ちを無にしてしまうよね」
なんだか良くわからないけれど、クラブ活動で忙しい川上先輩の代わりが俺に務まるか分からない。ただ、看病してくれたお返しができるなら、俺は問題ない。
「俺でいいなら、大丈夫だよ」
「じゃあ、今日は安静にして、明日熱がないなら、映画館に行こうよ」
「うん、分かった」
ただ、本当に俺なんかでいいのだろうか。映画のチケットは恋愛ものなので、俺なんかと行くより本来は彼氏と行くべきだとは思う。
「それじゃあ、明日。シネコンのある三条名店街前で待ち合わせしようか」
「えっ!? 待ち合わせするの?」
「その方が、……その……良いかな、と」
「俺はどちらでもいいけど」
「じゃあ、10時でいいかな?」
「分かったよ」
「そ、それじゃあ、行くね」
洗い物は後でまとめて洗うからつけといて、とそのまま部屋を出て行ってしまった。顔が少し赤かったように見えたが気のせいだろう。
「デート、かな」
彼氏持ちの女の子と一緒に映画を見に行くだけだ。決してデートではない。
「本当に俺なんかで良かったのだろうか」
一枚手渡されたチケットを手に取りじっと見る。川上先輩も日にち指定なんてしなければ良かったのにな。
それにしても、川上先輩は大人だな、と思う。俺なら独占欲が強いから、絶対他の男と行かせたりなんてしない。
「本当に男の俺が一緒に行って良いのだろうか」
美由は川上先輩に俺のことを言ってないような気がする。明日、デートの時にちゃんと聞くべきだろう。
熱は下がっていたが美由に必ず病院で診てもらって、と言われたため救急病院に行った。病院はかなり混雑していて、薬をもらうまでかなり時間がかかったが、診察結果はインフルエンザなどではなく、ただの風邪だった。
「良かった。明日出かけるのに問題なさそうだ」
美由にお世話になりっぱなしではダメだと、昼は外食にするからと美由にラインを送った。美由からは調子が良くなったからと言って、ぶらぶらしてたら、ダメだよと注意された。
「本当におかんみたいだよな」
心配してくれるのは嬉しいが、彼氏持ちの女の子なので、今後はデートなどはしないようにちゃんと言おうと思う。
今日言うのは楽しいデート? に水を差してしまいそうだから、明日会った時にちゃんと言おうと心に誓った。
――――――
「熱は完全に下がったみたいね。良かった良かった」
「あのさ、流石に年頃の女の子が男の部屋に来るのはダメだと思うんだよな」
「それ、ちゃんと自炊できるようになってから言うことだよ。わたしには、手のかかる弟みたいなもんだから、気にしないでいいよ」
いや、男の部屋にいると知ったら川上先輩が嫌だろう。俺は喉まで言葉がでかかったが、これを言ってしまったら、明日の映画の予定に水をさすことになってしまう。
「俺は気にするけどな」
「なら、ちゃんと自炊できるくらいになってくださいね」
美由を見ると悪戯っぽい表情で笑っていた。
「いや、俺が自炊できるわけないしさ」
「良くまあ、それで一人暮らししようと思ったもんだよ」
「姉にも言われたよ」
「お姉さんには、どう言ったの?」
「自炊くらい一人暮らししたら余裕でできるようになるよ、と言った……かな?」
はあ、と溜息が聞こえてくる。
「やっぱり手のかかる弟だよ!」
いや、まあそこは否定できないけどさ。でも、それではダメだ。明日、ちゃんと言おう。そう思って美由の作ってくれたオムライスを口に入れた。
「すげえよ。ふわふわでとろとろだよ!」
「良かった。気に入ってくれて」
その笑顔がやけに可愛く、俺は内心ドキドキした。
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