第2話 似たもの同士!?
「なぜ、結城さんがここにいるんだ!」
俺はあり得ないと思った。馬鹿か、俺なんかのところに走って来て何の意味があるんだ。陽キャは陽キャとつるんでおけばいいのだ。
「だって、さっき話の途中でしたよね」
「えっ、途中だったっけ!?」
俺はあれが途中だったと言う認識はない。他の男たちと友達になったのだから、俺の出番は終わったのだ。俺はそう認識していた。もう過去と同じ轍は踏まない。仲良くなって期待して告白して、裏切られるのも懲り懲りだ。
「さっきお隣同志になったのですから友達になりましょう、って言いましたよね!!」
「だから、あれは……」
あれは挨拶程度の意味しかなかったはずだ。美由が俺にこだわる理由など全くない。俺なんかを追いかけなくても、陽キャでイケメンな男たちが美由を追いかけてくれるだろう。
「わたしにとって、大切なお願いです!」
美由は生真面目な性格なのかもしれない。一度言ったことだが途中で横槍が入ったから、ここまで追いかけてきたのだ。
「俺に拘らなくても、沢山話しかけてくれただろ。俺みたいに人に興味を持たない奴のことなんて忘れて彼らと仲良くした方がずっとチヤホヤされるし、君にだって得だろう?」
そうに決まってる。もし、過去の女のように俺を騙そうとしてるのなら、近寄らない方がいいし、もし万が一にも俺のことを考えてくれてるのなら、そのための力を他に回した方がよっぽど効率がいいのだ。
「得じゃないです!!」
「どうして?」
「じゃあ、なぜ柏葉さんは、わたしとお友達になるのを避けようとするんですか?」
「えっ」
「わたしはたくさんの人と仲良くしたいし、柏葉さんとだって友達になりたいです。それではいけませんか?」
「でも、……俺なんかが友達だったら、きっと結城さんのクラスでの評価が下がってしまう」
「どうして?」
「だって、俺はどこをどう見ても隠キャで、結城さんはどう見ても陽キャだから……」
「その区別って誰がつけてるんですか?」
「おいおい、誰が見ても俺は隠キャだろ。顔だって特別カッコ良くもないしさ」
「そうかな? わたしはカッコいいと思うけどな」
「えっ!?」
俺は思わず美由をじっと見てしまう。美由は慌てて視線を逸らした。
「それはさておき、まあいいでしょう。百歩譲って柏葉くんは普通の男子だったとしますね。じゃあ、なぜわたしが友達になったら、わたしの評価が落ちるんですか?」
美由はキョトンとした表情で俺を見た。俺にそんなことを言わせるつもりなのか。目の前の少女は純粋なのか、それとも小悪魔なのか分からない。それでもここまで言われたら言わないわけにはいかなかった。
「それは……結城さんが魅力的な女の子だからだよ」
視線を逸らしてそれだけ言う。ここまで言わないと分かってくれないのだろうか。俺は足早に家への帰路を急いだ。
数歩歩いた時、背中をトントンと叩かれる。きっと俺は顔が真っ赤になってるはずだ。女子に魅力的なんて言うなんて告白してるようなもんだ。
「そんなことないですよ。わたしも普通です。でも、柏葉くんがそう思ってくれるなら、それは少し嬉しいかもしれませんね」
それは過小評価しすぎだろう。あれだけ大勢の男子が美由目当てで来てるんだ。それに今の発言なら、俺がそう思っているとさえ思われかねない。
「いや……、一般論だよ。顔立ちは整ってるとは思う。でも、別に好みのタイプとかそんなんじゃないからさ」
ここまで言って辛い言い訳に聞こえるかもしれない。それでも俺はそう言わざるを得ない理由がある。
「そっか。それはちょっと残念かも……」
本気で残念そうな声がしたので、俺が振り返ると美由が悪戯そうな表情をしていた。なんだ、結局自分が可愛いの分かってるじゃん。
「まあ、いいや。で、さっきのお友達の話、オッケーしてくれますか?」
「そこまで直球で言われたら、流石に断れないが、一応聞くがお友達になりたいと言ってきた男達ともお友達になったんだよな」
「そう思いますか?」
その表情はどちらにでも取れる表情だった。
「まあ、他の陽キャ達とは学校で仲良くやってくれたらいい。俺はなるべくなら、学校では仲良くしたくない」
これを聞いて美由は少しガッカリとした表情をしたが、その表情はすぐに消えた。
「まあ、いいや。異性だから学校で近づかれるのは恥ずかしいかもしれませんね。嫌なら、学校では他人のふりをします。それで譲歩するので、お友達になってくれますか?」
「なぜ、そこまでして、俺と友達になりたいんだ?」
「そうですね。一言で言うときっとわたしとあなたは似てるんです。だから、お友達になりたくなりました」
「はあ、意味わかんねえぞ」
なぜ可愛くて陽キャで学園一の美少女と寡黙で冴えない普通メンが似てるんだよ。似てるところ探すより、違うところ探した方が遥かに多いだろ。
「訳わかんなくてもいいです。きっと、そのうち分かりますからね」
そう言って数歩スキップして横に並ぶ美由。その後は言葉少なに家路を急いだ。美由とはどこかで別れると思ってたんだが、そういうこともなく俺と同じマンションの前までやってきた。
「あれ、お前、なぜ俺のマンションまで来てんだよ」
「あれ言ってなかったですか? わたしも今年から柏葉くんと同じマンションで一人暮らししてるんですよ」
「はあっ!?」
て言うか、なぜ俺が一人暮らしなのをこいつは知ってるんだ!
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