3ベージ
【よろこんで。】
ハトからの返事は、すぐにきた。
そのひとことに、どれほど救われたことか。
顔も本当の名前も知らない、ハトのことを《友達》と思うのに時間はかからなかった。
ハトもまた、ホームページという自分の部屋を持っていて、その部屋は彼の気持ちで溢れていた。
優しくて柔らかい文章、だけど、どこか切なくて悲しくて…。
きっとこの人は私よりずっと大人で、色んな気持ちを抱えて生きているんだろうな、と、そう思った。
そして、とても忙しい日々を送っているようだった。
『ハトさん、どうして私の生活が素敵だと思うのですか?』
そう、私が尋ねると、
【素直に素敵だと思ったからです。】
と、ハトは答えた。
『どこが素敵か、私には分かりません。
私は仕事をしていません。家に殆ど閉じこもっていて、友達も少ないです。日々に変化がないように感じてしまいます。それに私は…。』
と、文字で言いかけてやめた。
【ちぃさんの日々流れる時間が綺麗で、羨ましく思いました。僕は慌ただしく仕事をしています。毎日ゆっくり自分を振り返る時間もないまま過ごしています。虚しいなぁって感じてる時に、ちぃさんの出来たてのホームページを見つけました。
読んだ本の感想や、観た映画のこと、大好きなアーティストのこと、車椅子で散歩したこと。
とても羨ましく感じました。僕の心の癒しなのです。仕事だけが大切なことではないと思います。ちいさんらしく生活をしてください】
そして、メールの最後に、
【また明日。】と、ハトは言ってくれた。
顔も名前も、お互い住んでいる場所も知らないのに、知っているのはメールアドレスとURLと、ハンドルネームだけ、
文字だけの会話なのに、私の心と顔は笑顔でいっぱいだった。
友達ができた!
その日の夜は嬉しくて、ひとつも眠れなかった。
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