3初お目見え

「 ふふ〜ん♬ふふふ〜ん♬


飲んでもぉ〜飲まれるなぁ〜が酒の嗜みぃ〜♬ 」



上機嫌で歌いながら石鹸で泡立てた頭をゴシゴシと洗う。


1日の最後に浴びるシャワーは心も身体もリフレッシュできる俺の至福の一時!


そのままわしゃわしゃわしゃ〜!と頭を擦っていると、フッと一瞬変な浮遊感を感じたが、" 今日は本当に疲れてたんだな〜 " 程度にしか感じなかった。



そして、そろそろ頭を洗い流そうと、目を閉じたまま目の前にあるはずのシャワーのコックに手を伸ばす────……が、ない。


コックがあるはずの場所でスカスカと手を動かしたが何も手に当たらない。



「 んん〜??何だ何だ〜?? 」



不思議に思いながらパチっと目を開けると、目の前には岩の様に固まったまま立ち尽くしているやたら綺麗なイケメンお兄さんと、目と口を限界まで見開いている黒い変なローブを着ている集団と剣を持ったイカつい男たちの姿が目に飛び込んできた。




?????!!!




驚きすぎて目を見開き口をパクパクしていると、やがて頭の泡がつぅ────……と下に落ちてきて目にべちゃりとくっついた。



「 ぎゃあぁぁぁぁ────────!!! 」



目に走る激痛に大絶叫を上げゴロゴロと地面を転がりまわると、今更ながら自分が全裸である事を思い出したが痛くてそれどころではない。



その為、シーン……と何の音もしないその場で固まってしまっている沢山の人達に向かって力の限り叫んだ。



「 誰か水────!!水持ってこぉぉ────────い!! 」





◇◇◇



いや〜痛かった痛かった〜。


びっくりびっくり!



結局正気を取り戻した黒いローブの人達が水がたくさん入っている大樽を持ってきてくれたので、現在はそこに顔をつけてリラックスタイム中。


まだ俺、裸なんだけどね!


ハハハ〜と笑うとボコボコと気泡が口から出て擽ったくて顔を上げれば、固まったまま突っ立っているイケメンと気まずそうに顔を背けるその他大勢の人達の姿が・・



「 あ~……。


その……とりあえずなんだっけ?


その聖女焼酎ってヤツは~…… 」




「 ……聖女召喚です。……聖女様? 」



やっとイケメンが喋ったと思えば最後は疑問系で、それにぷぷーっ!と吹き出すとイケメン君の表情は更に硬くなっていく。


それを見兼ねたのか後ろにいる太っちょおじさん、確かザイラスという男がベラベラと喋り出した。



「 古来より国が危機に直面した際には、異世界より清らかで美しき乙女を召喚し国を救って頂いてきました。


その乙女を聖女と呼び、国を救って下さった後も当時の王と共にその命尽きるまで国の為に尽力し────…… 」



「 ……めちゃくちゃ失敗してんじゃ〜ん。 」



ズバッと告げてやると、ザイラスは一瞬黙り、その後カッ!!と目を見開いて怒鳴り出した。



「 そんな筈はございません!!


我が国きっての魔法のスペシャリスト達が集結したのですぞ!!


それこそ歴代を凌ぐ程の聖女が──── 」



「 ほらほら、下見てみろよ。ウィンナ〜。


俺、男。失敗の確たる証拠ぉ〜。 」



ウィンナー通じるかな〜?と思いながら自身の下半身を指差すと、周りでブブッ!!と吹き出す声が聞こえた為、どうやらこの訳のわからない世界にもあるらしい。


ウィンナーが。


俺の世界のウィンナーと同じヤツ〜?と想像しワクワクしていると、ザイラスは白目を剥いて沈黙してしまった。


微妙な空気の中、どうしたもんか……と悩んでいたその時、イケメン君……レオンハルトという若造が突然マントを脱いでフワッと俺に着せてくれた。



「 ……大変失礼致しました。聖女様。


皆の無礼はこのレオンハルトが代わって謝罪しましょう。


貴方様は我々を救う救世主様なのです。


どうか悪き存在を打ち破る力をお貸しください。 」



レオンハルトはキラキラ顔面をフルに使い、思わず手を差し伸べたくなる様な表情のまま軽く頭を下げた。


その旋毛あたりを繁々と見つめながら、レオンハルトという男を俺は上から下までジロジロと不躾に見た。


平均身長の俺よりだいぶ高身長にそれなりに鍛えている体格、それに女顔負けの世にも美しい顔。



俺と違って随分とモテそうな男だこと〜。



第一印象はコレ。


そして続く第二印象は────



俺は頭を下げているレオンハルトの胸辺りを人差し指で指した。


驚き顔をあげるレオンハルトと真正面から視線を合わせて、俺はニヤッと笑う。




「 お前、凄い嘘つき野郎だな。


程々にしないと何が本当か分からなくなっちまうぞ? 」




< 超聴覚 >


新型人類の能力の一つ。


簡単に言えば凄く耳が良いという能力だが、人の心音や血液量などから相手の嘘を見破る事も出来るという優れものなのだ。



目の前のレオンハルトからは微力だがこれらの乱れが感知できて、それからして嘘をついている事、そして────



僅かしか乱れがない事から嘘をつき慣れている事が分かる。




指を指されたレオンハルトは酷く驚いた顔を見せたが、直ぐに見惚れる様な笑顔を見せた。



「 ……嘘とは一体何のことでしょうか?


聖女様が何か不快を感じる様な行動をしてしまったなら申し訳ありません。 」



「 ……そうか。余計な事を言って悪かった。



ん〜……とりあえず聖女様は辞めてくれないか?


俺は大樹。まずは話を聞かせてくれ。


それからどうするか決めるからさ〜。 」



着させてもらったマントに対しお礼を告げ、そのまま腰に巻くと笑顔のままレオンハルトの眉がピクリッと動く。



それに気づかない振りをして、俺は話を聞く為歩き出したレオンハルトについていった。


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