第1話 異常発生
音の聞こえて来る方角と距離を確認すると、フロアボスが出てくるエリアから聞こえて来ていた。
この様な状況でも、潜っている冒険者はいたようだ。
ギルドマスターからの依頼は調査だったから、スルーしても良かったが念のため確認に向かう。
音を立てずにフロアボスエリアに入ると、オークと闘っている冒険者パーティーを見つけた。
初級ダンジョンにいていい魔物ではない。
闘っているのは5人組のパーティーのようだ。
ダンジョンでの下手な助太刀は、得物の横取り行為と見なされる可能性がある。
ここは慎重に様子見一択だ。
異常が発生している可能性があるダンジョンに潜るだけあって、それなりに経験を積んでいるパーティーのようだ。
連携良く闘っていたが、盾役ジョブのタンクの盾が破壊されると一気に形勢が不利になった。
オークの振り回す棍棒に、5人が追い立てられる。
更に奥から追加の2体のオークが姿を現すと、完全に心が折れてしまったようだ。
我先に逃げ出す者がいないだけでも大したパーティーである…死なすにはおしい。
僕はダガーを取り出すと、3体のオークの前に躍り出た。
「助太刀します。しんがりを務めるので早く退却して下さい」
5人は突然現れた僕の事に驚いていたが、言われた通りに出口へと向かって走り出した。
僕は後方の安全を確保しながら、ダンジョン出口を目指した。
出口を出たところで冒険者パーティーと落ち合った。
感謝の言葉を伝えられたが、ギルドマスターの依頼の一環なので気にしないようお願いする。
その後、冒険者パーティーと共にギルドへと報告に向かう事にした。
冒険者パーティーはC級の中堅クラスだった。
普段だったら初級ダンジョンなど非効率にしかならないので潜らないが、異常が発生してると聞いて興味が出たらしい。
冒険者パーティーの報告を聞くと、ギルドマスターは調査が終了するまでダンジョンに入らないよう警告した。
冒険者パーティーが退席すると、部屋にはギルドマスターと僕だけになった。
「さてとベイカー、お前の意見を聞かせてくれ」
厳つい顔のギルドマスターが、更に顔を厳つくして聞いてきた。
「中層から危険度レベルが格段に上がってます」
「それはイレギュラーなのか?」
「いえ、残念ながら魔王の力が戻ってきている可能性の方が高いです」
僕はギルドマスターの前に戦利品を並べた。
「これは?」
「フロアボスのオーク3体分の耳と魔石です。中央ギルドへの証拠になるかと思って持ち帰りました」
「確かにこれがあれば、中級ダンジョンへの昇格が認められるな」
「ええ、間違いなく…」
「だが、これを1人で倒したのか?」
「それは内密でお願いします」
「ベイカーが訳ありなのは知っている」
「ありがとうございます。あと調査は中層までなので最下層のダンジョンボスまでとなると…」
「A級パーティーを中心としたクランを立ち上げないとダメか…」
「ええ、できれば早急に」
「忙しくなるな!頭が痛いわ」
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