瞳を閉じろ
晴れの舞台は、努力が実った結果になった、とだけ言っておくことにする。
しかしそれよりも、興味深いことがあった。
イベント会場からタクシー乗り場にいく、僅かな歩道との隙間、その本当に1歩手前に、パレスチナのデモ隊があった
「イスラエル軍によるパレスチナ人の虐殺を止めてください!」
「文学を愛する人たち、日本から声を上げましょう!」
???
イスラエルって、「どっち」のことだ???
パレスチナ人? そんなもの外国人がつけた名前だぞ。
「ねえねえ、イスラエルってどっちのことを仰ってるの?」
「???」
「歴史の話? それとも現代の話?」
「現代の話です今の話です。」
「ふうん。どこからいらしたの?」
「日本全国からですどこからもです。」
「声を上げるならアンソロジーを企画するわ。リーダーはどなた?」
「リーダーとかいないです皆自発的なんです。」
「ところでここでデモをする許可は警察に貰ったの?」
「あの…デモをするのに…警察の許可はいらないんです…。」
「あ、そう。ところで隣の貴方は黙ってるけど、どこからいらしたの?」
「え。」
「あの、僕が―――。」
「私は彼女と話してるの。ねえ、どちらから?私は矢追町から来てるの。どれくらいの―――。」
「そんなこと聞く権利、権利は―――。」
「奥様、私は彼女と話してるの。ねえ、貴方はどこからこの地区まで来たの?」
「???」
「個人情報、個人情報…。」
なるほど。だいたい分かった。
「と、言うことがあったんだよ。」
『迷惑極まりないわね。もう仲直りしてたのに。』
「アンソロ誘って、お前の世界観で論破して欲しかったわ。」
『別に構わないけど、そいつの瞳、どんな瞳だった? 本当に怒ってた?』
「ひとみ。」
『見たことあるでしょ。目の前が真っ黒に塗りつぶされる程の強い怒りの瞳と、その心の激しさを。』
「…茶色かった。コンタクトレンズしてるみたいで、肌も土気色で顔も角張ってた。
「ね? 文字通り色眼鏡で見ているのよ。」
素人は黙っとれ―――。
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