人生イロイロ

 色々あって飛び出してきた田舎であるが、野ばらは月に一度、通院のために帰る。今回は野ばらの結婚の話もあったので、ついでに百合愛も呼び出された。まあ、一族の一大イベントだ。仕方あるまい。

 ちなみに百合愛はどこに泊まるのかというと、野ばらの恋人の家である桜桃子の家である。2人が付き合い始める前からの関係だし、何ならこの家でパーティを開くこともあったので、誰も気にしないし、何だったら古民家ならではのスカスカで襖の多い家からが聞こえてきても、百合愛は気にしない。というより、誰も気にしていない。3人の間に、かような恥じらいは感じる必要がないからだ。そう言うと良く乱交だのなんだのと言われるのだが、正味、なのである。

 最近は百合愛の恋愛観を、「アロマンス」だか「ノンセクシャル」だかとカッコイイ言葉で表現するらしいが、百合愛は百合愛で、一般感覚とは違う恋愛をしているので、そういう「なんとか理解しよう」という薄っぺらい態度は止めてもらいたい。

「ねーねー、挟さんは、野ばらのこと大事?」

「大事だよ。」

 体調を圧して病院に行った野ばらを待ちながら、百合愛は桜桃子の前で原稿しごと中である。中身はもちろんエロ同人である。

「じゃー結婚したい?」

「責任があることだからねえ…。」

「健全な体も健全な精神も毎月の収入も十分な貯蓄もない上に、これからもそれは見込めないとか、確かに私じゃなかったら引き裂いちゃうね。」

「そうなんだよねぇ。」

 でも、と、百合愛は大きく背伸びをし、2人が来る時だけ用意されるおかずを冷蔵庫に探しに行った。


「でも、良い恋人ヒトだよ、挟さんは。」


 野ばらが、誰にも理解されることがないと諦めていた「治療」に。

 恥も外聞もなく付き合って、無事野ばらはその治療を終えようとしている。


 それだけで、天に積まれた富が天秤から吹き飛ぶほどの価値が、野ばらにはあるのだ。

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