嘘はきらい

 野ばらには地雷、というより、パニックになるセリフがある。

 それは「嘘ですよね」という言葉やニュアンスだ。

 細かいことは省略するとして、野ばらの既往歴はかなり特殊なため、症状が入り交じっている。走ることが出来るのに出歩くのに杖が必要なのはおかしいとか、オンラインの仕事でありながら、契約者とのメッセージの一行を読み飛ばしたことでさらし者になったりとか、言い慣れすぎて流暢に言える理由も全て言い訳くさいと言われたりする。

 対して百合愛は、「関わりたくない」という「態度」が地雷だ。自分に興味を持って欲しい、という意味ではなく、百合愛が持つ悩みや考え方はどう足掻いても抹香臭いので、それを煙たがったりすることだ。

 チラシ配りにしても、「結構です」は、全く動じないが、「宗教とか興味ないんで」と言われたコミティアで、思わず設営を飛び越えて襲いかかろうとしたほどだった。

 その意味で、2人がいつも集団から締め出される時の動機は、「情熱のかけ方」だということになっている。


「あ、起きた。言うて、もう寝る時間だけど。」

「ああ、おはよう…。今日は寝てばかりだな。」

「…いい夢見たみたいだね?」

 ドキッと野ばらが目を覚ます。

「なになに? 船越さんのドラマの夢十年以上ぶりに見たの?」

「…笑わないか?」

「笑わない笑わない。」

「ポケモンとFGOのキャラがこんがらがった世界で、即興芝居やろうとしたのに、ほとんどのキャストが意図を組んでくれなくて、文字通りの具合が悪い系構ってちゃんになってたんだけど。」

「うんうん。」

「メンバーが、ランサージャンヌと、ティーカップに載ってるジャックちゃんと、セイバーマンドリカルドだったんだ。」

「それはいい夢だ。」


 もウソうの世界である夢の中でも、そこでもから回っていても、きちんと意味を理解しようとしてくれる「役者」はいたのだという。

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