血で血を洗う闘い
むーん、と、野ばらと百合愛は、同じ啓蒙ポスターの前で唸っていた。
特に新しいわけでもないのだが、故あって「それ」に、関わりたいとずっと考えていたのである。
とはいえ、外に出歩くことも、野ばらに至っては関取の死体詰めが如きキャリーという名のダンプを片手で操っているが、2人の心身はボロボロなのだ。どれくらいか、と言われたら、消費税以外の税金を免除され、既に年金生活をする羽目になる程度には。
それゆえに。
安定した健康と体力が求められる活動は出来ないのだ。
「悔しいけど、今回もお祈りしかできないね…。」
「嗚呼金がねぇ。催促の電話が止まらねえ。」
そう言って、2人はそのポスターの前を離れた。
最早以外に思われることはないだろうが、彼女たちは保守と思われているカトリックの中ではかなりのリベラル派だ。自分達の信用した神父の言うことしか効かないし、例えその神父が禁止したとしても、自分達の信仰がやれと言うならそれを実行する。実の所2人のような信仰スタイルを貫ける教派は、あるにはある。
しかし、2人は惰性でも何でもなく、カトリックであることを選んでいるのだから、信仰とは理性で推しはかれないものである。
「ん?」
「どうしたの?また仕事?」
「仕事は仕事なんだけど…。お!?」
「?」
「百合愛! 一働きしようぜ!!」
「虫系モンスターの可愛い装備をたのむ。」
そしてその日の夜のこと。施設に帰った百合愛に、野ばらがスクリーンショットを送った。
『おくったどーーー!!!』
そこには、『献血ルーム雑用係募集受付完了』という文字が出ていた。
早速百合愛は、何も知らないフリをして、グループLINEに、献血所で働けるかもしれない胸を伝えた。
そう、百合愛も野ばらも、この血で血を洗う闘いに一矢報いてやりたいと、何十年も思い続けていたのである。
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