ほっかほっか邸

 野ばらの家は寒い。

 それは隙間風もあるが、野ばらがエアコンの暖房が苦手な上に、ヒーターがないからだ。なので野ばらは、いつも着込んでいる。彼女なりのオシャレなんだろうが、センスが悪いのは仕方がない。

 今までオシャレをする環境たいかくではなかったのだから。

 ただ、それ故に心配なのは、氷点下もある東京教区で、野ばらが夏布団のまま寝ていることだ。初めてこの家に来た時も、寝具が無かったからとはいえ、ダンボールの上に寝ていたのだ。

 その上いつも同じ姿勢でいることが多いのに、眠る姿勢も同じだから、この前など一晩で、体の半分が浮腫みきって、指輪が鬱血していたくらいだ。

 心配だな、と、思ってその日は少し早く家に行った。


「…。」


 ガックリ、と、百合愛は頭を垂れた。

 野ばらは、ちゃんと桜桃子の持ってきた毛布をかけて、すやすやと心地よさそうに眠り。

 顔の横に置いてある手を見ると、指輪の位置が移動していた。その指は、素人目には細かった。

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