ふたり目11
ほどなくして高い城壁とそこに向かって列をつくる人々が見える。
馬はそのまま並ぶ人々を横目に進んでゆき、門の衛士に手を上げるのみで入城してゆく。
それなりの人いきれの中、馬上のまま大通りを進んでゆく。
「お、あれはエルフではないか」
織物屋のような店構えの前、創世記救世主のような男と酒・・・缶ビールにしか見えないが・・・を飲みつつ美少女が酒の飲み方についてクダを巻いていた。
「そのようですな。・・・気難しい奴らの筈ですが、あの姿は」
「酔っ払いにしか見えぬな・・・いや、面白いものを見た。さすが大都市、というところか」
ほどほどに人が多い中東の田舎、という風勢ではあるがそれなりに高い城壁と大通りに並ぶ店と屋台でかなりの賑わいを感じる。
・・・しかし、エルフか。
マジマジと目を停めては失礼かな、とすぐに外らしてしまった。
前世の、一人目の妻を思い出す。
(なんで日本人はじっと見つめた後、無表情のまま目をそらすの?)
そう、見続けたら失礼かなと思って、と言い訳したのが馴れ初めだった。
不躾な行動にその場しのぎの言い訳・・・フフ、ちょうすごいちから、など貰っていても、人間としての本質的なところは何も変わっていない。
(なら謝ればいい。お国の得意技でしょ?)
(金が欲しいのか。いくら払えばいい)
(すぐに腹を探ろうとする。島国では当然の礼儀ってとこ?)
(日本語が上手いな。嫌味迄使えるのか)
(私は最初、人として礼を失った行動だと咎めたの。それを脅迫だとすり替えたのがあなたよ。私への無礼は許されてあなたへの嫌味は許されないの?)
(はいはいわかりましたよすみません悪かったねごめんなさいもうしません。これでいいだろ?)
(なぜ?あなただけじゃない。この国に来てからずっとよ・・・なんなの!)
(あのなあ、そんだけ美人なら仕方ないだろう。なんで自分だけだって思うんだよ)
(・・・もう一回言って)
驚いたことに生国で日本のアニメを見続けて、自分の容姿にコンプレックスを持っていたらしい。
日本スゴイ系チューバーの方々かよ、とその時はスルーしていたのだが結婚して昔の映像やら妻の両親の驚き様など、他に現地の日常、常識を聞いて当時は非常に驚いたものだ。
「・・・いや。やはり私への忖度だったのだろう」
一国民が化粧やお洒落して歩けるのは日本だけだ、などとやはり盛りすぎであろう。
白人教徒だが韓国・台湾贔屓の二番目の妻も、化粧などは整形も含めあちらのほうが進んでる・・・とまで言っていたしな。
それに化粧の技法や道具などが進化し市民にまで降りたのは米国ではなかったのか。
(わたし、もう可愛くないから)
そう言い残し、二次大戦ドイツ軍兵士が塹壕で着ていたコートに某アンドロイドがしていたようなサングラスをかけ、出て行った。
「最後までかっこいい女だった・・・」
体がふわりと浮き、地に降ろされる。
「到着いたしました。あとはあのものが案内いたします」
「うむ、快適であった。・・・いえ、快適でした。お心遣い、ありがたく存じます。では」
胸に手をあて、それなりに気を使って馬を操ったであろう兵士を見上げると、強姦魔と疑ったことも含め感謝の眼差しで笑み、”あのもの”と現れた女性を先立たせてその後を追った。
ラケル。
あの日々の私が、この身を気遣う行動に気づくことができたら、彼女と続くことが出来たのかもしれない。
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00年代から太い並行眉が返り咲いて何事だと思ってたら・・・いや、眉程度しか弄らん男がアレコレ言えるハナシじゃあないですね。
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