ふたり目7

三人目は手早く頭を潰した。

サッと素早く打ち下ろせば、小気味よく弾け割れるのだ。


あ~~~~ぎもぢええ~~~~~


二人目の仕儀は私個人の感興を得るためにというよりも、女と兵士達へのデモ、実演劇だ。


兵士は五人。


もちろん、三人の男と同じようにヒザを抜いて・・・正面から押すなり蹴るなりで逆折にする・・・機動力を奪い、道の端に手を千切りながら並べる。


動的な描写は勘弁願いたい。


泣きわめく者もいるが、敵意や使命に燃えた視線を送り続ける者もいる。


そういえば、前世で妻と一緒に読んでいた転生モノに、衛士のお父さんがいた物語があった。

目の前の兵士達の家族を想像し、涙が沸き、溢れてゆく。


左で女がわたしにとりすがり何かを言っている。

それなりに快い音ではあるが、それはどうでもいい。


五人の頭を潰し、快楽を得た。





「・・・う逃げられません、戻らぬ兵を不審に思い、すぐに増援がくるでしょう。それを斃しつくそうとも、更なる増援が来ます。城の全てがあなたを許さないでしょう。そしてこの城を落とそうとも、州軍が、国軍が、王軍があなたを・・・」



快楽の余韻から覚め、女を向く。


そうだ、おやつが・・・まだあったのだ。


私は女の言った通りの顔をしているのであろう。

天使のような、菩薩のような、緩く優し気に笑んだ顔に。



私は手ごろな石を二つ拾う。



「州の師団は三千か?国師は?王師は??まあ、私自身がこの大きさだ。たとえ押し寄せたとしてとても効果的な攻撃を受けるなどということはあるまいよ」


それより、と女に手にした石を見せる。


「私にはそれらを、いや、城も含めて全てを灰燼に変えるアイディアがある、といったら?」


女は答えない。

まなじりを決し、黙すのみ。


美女だな。


「わたしはネット小説が大好きでね、そこはヒトを大量に虐殺するアイディアに溢れており、主人公は自由気ままに悪を設定し様々な技法により人を滅ぼしてゆく様が爽快に描かれていた」


「その石が、なんだというのです。わたしを打って殺すのですか」


なぜこの女は、私がこんなに欲しいと思っていた質問を返してくれるのだろう。


「そう、原人は石器をそのように使ったね。では、私の前世の人間はどう使っていたと思う?」


「無駄な御託はいりません。殺すなら殺せばいい」


「聞いてくれ、この二つの石を、合体させるんだ。溶かしたり、砕いたりせず一瞬にね。普通は出来ない。前世でも出来なかった・・・ああ、つい先ほど言ったことと矛盾するね、すまない。軽い原子同士を対消滅させるのが精いっぱいだったと聞いているよ。だがこちらの世界なら・・・」


手に持った石を見、視線を宙へと移し今見たばかりの石を頭の中で描く。


石は宙へ出現し、空いた手に落ちた。


「ほれ、このように。驚きだね?わたしも驚いた」


できちゃう。

出来るとなると、途端に不安が頭をもたげ始める。

失敗し、いらぬ恥をかくのではないかという不安が。

前世の強い呪縛である。

精神的不能回路。

まあ、コレがあるから誰もが集団でそこそこ安全安心に暮らせていたのだからあまり文句を言うべきではないのであるが・・・


城壁の上・・・辺りでいいかな。

翻る旗の儀仗の先端でよいか・・・あそこにこの両手の石を出現させよう。


目をこらし、両手の石を構える。


「うまく行かなくても、笑わないでくれよ」


言い訳から始める異世界無双伝説。回復感謝系もあるよ!

いかんいかん。

川を背に陣を敷く気で、強気のセリフを言わねば・・・


「フフフ・・・城壁など私を前に、意味をなさないことを教えてあげよう」


最低でも穴くらい開いてくれますように・・・




両手の石が消える。


周りの全てが光に消えた。




あれ~~~?

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