ひとりめ2
「ぁぁぁ・・・・・さむィ・・・」
同じ声が聞こえる。
木枯らし的な修飾表現を使ってしまいたくなるくらいに息も枯れている。
全身とボロの汚れが無くなったことにより真冬の朝、布団を削がされたような寒さを感じて青色吐息といったところか。
え、なにこれすごい。
奇麗になれ~、てパタパタやったら奇麗になったてことは、死ねつったら殺さなくても死ぬのか?
・・・・・
「・・・若返れ~」
パタパタパタ。
「フウッ、クッソ寒ぅううううぁああああああ!!!!!!!」
突然老人が白い息と共に絶叫を上げながら飛び上がり両腕で全身をさすりながら定置疾走を開始した。
・・・いや、白髪が亜麻色のしなやかな頭髪になり、白いボロから覗く二の腕は青白く魚のように滑らかに艶やいている。
そしてその両腕に押し上げられ激しく震えている、小さな果実のように瑞々しくはちきれんばかりの二球の物体。
少女だ。老人が少女になってしまった。
しかも前世地球にも存在した白い種族の。
あぶない、死ね死ね~とかやんなくてほんとよかった・・・
と、いうよりも。
もし男性で若返り年齢が肉体の絶頂期で停止していたら、私は殺されていたのでは?
シッシッ、と野犬を追い払う様の差別的感情表現を手で動作してしまったのだから。
等々、恐々としながらも静かに元老人少女の横を通り過ぎる。
通りすぎながらも視界の端で少女のヘッドが私の動きを追うように旋回しているのがとても怖い。
「ちょっと!あんた!ここにいけ好かない男が立ってたろう、どこ行ったんだい?!」
「え、知りません。ぼく急ぎますので、それじゃ」
緊急退避!緊急退避せよ!!
「なんだい、貴族みたいな喋り方して・・・令嬢様気取ってんのかいケッタクソ悪い」
そう、白い種族からは我々は男でも女性のように見えるらしい。
美術やエロ同人などで少しでもデッサンを齧れば、額の広さとアゴ周り骨格のバランスで全人種共通に女性男性を判断できるのだが、死にかけた老人が往来で倒れている世情である。そのような文化的かつ科学的な知見と観察眼を持てというのも酷な話であろう・・・
「じょうちゃん待ちなって!」
なにか肩へやわらかなものが被さるが、無視して歩みを早める。
「あああああ!!!!!いだっ!」
僅かに振り返ると転んでいた。
すぐに視線を正面へと戻し、歩み続ける。
前方凝視にて最大船速!
すみやかに婆少女より退散せよ!
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