第4話
そうこうしている内に全ての組で帰りの挨拶が終わった。
廊下には人が溢れて、朱莉は女友達に背後から抱きつかれる。
「ねぇねぇ、あのイケメンが狙ってる人」
コソコソ話しても俺たちに聞こえてるんですよね。
博和の横腹を肘でつついてやった。
ほら、ファンサービスしてあげなよ。
普通の男だったら、恥ずかしがって困る所なのに
「あれ、久しぶり、髪切った?」
の三拍子で女をキャッキャキャッキャさせた。
朱莉はつられて跳ねて、後から来た女の群れと一緒にどこかに消えた。
最後に「連絡しなさいよ」と俺への恫喝は忘れない。
博和はともなく絶えぬ女生徒と『バイバイ』手を振り合っている。
楽しい会話の端々、青春ってイケメンと美女にしか約束されてないのだろうか。
さて、俺の背後には。
「榊原、明日の放課後、生徒指導室な」
担任の石田の太い指が優しく肩に乗った。
俺はこの喧騒で会話の内容は聞こえなかった。そう言うことにしよう。
黙って逃げようとした俺の代わりに博和が口を開く。
「わかりました。僕が責任を持って、生徒指導室に連れて行きます」
「おお、博和か。サッカー部の最後の大会に気合が入ってるそうじゃないか。そんな中、榊原が迷惑かけてすまんな」
「いえいえ、これも良き親友の役目ですから」
殴り倒していいですか。まさか俺が本気になる日が来るとは。
もしも『博和』という株があったなら迷わず買っていた。
それほどまでにコイツはちゃっかりしている。
今だって俺が窮地に立たされたのを良い事に自分の評価を上げやがった。
疫病神であり、彼女のような振る舞いをする、裏切り者の良き親友に一言言いたい。
「絶交な!」
一斉に視線が集まった。やはり博和と一緒にいると良いことがない。
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