第4話理想というわがまま
夕方になって、孝俊くんがやってきた。
孝俊くんが来たのになぜか今日は寂しい。
「それで、今日はどこに行く?」
「私、クリスマスツリー見たいな。確か、駅の方にでっかりツリーあったんだ。」
「わかった、行こ。」
クリスマスには届かないけど、少しでもクリスマスの気分を味わいたい。そう思っていた。
ツリーはいろんな形の星で輝いていた。
「写真でも撮る?」
「うん、」
写真を撮った。でもその写真を見ることはしなかった。
「なんで?見たくないの?」
私が自然と顔を画面から離したことが気になったらしい。
「私、可愛くないし、写真の写り、全然よくないから。見たくない。」
「あ、ごめん、嫌なこと聞いた?」
「いいよ。別に。」
私は誰が見ても不機嫌だった。でも別に怒ってるわけじゃない。少し辛かっただけだ。
「カフェ入らない?この近くにいいところあるんだよ。」
そう、孝俊くんが言った。
「うん。入ろ。」
他に何も考えていないデート、結局最後は適当なのか、カフェに流れで入った。
適当にアイスコーヒーを頼んで、
私は急かすように話そうと思ってたことを話し出した。
「孝俊くん、私ね、昨日も言ったんだけどさ、今までさ、こんなことに付き合わせてごめんね。」
「なんで?別にこれが仕事だから。嫌だったらとっくにやめてたよ。」
「そんなのわかってるよ、でも、私は謝りたい。自分の理想ばっかり押し付けて、お金ばっかり使って、このままじゃ罪悪感と後悔で潰れちゃうよ。」
本当はこのままでいたい、好きってもっと言って欲しい、それが私の理想だ。
その理想はもう叶えられない、だから今こうやって謝っている。
「とにかく、もういいよ。暗い話は、もうやめよ!ほら、なんか食べようよ!」
「うん。ごめん。こんなに暗くしちゃって。」
「なんか食べたいものある?」
「じゃあこれ?とか、」
私が指さしたのは大好きなモンブラン。
「これを1つ?」
「うん...いや、でも、孝俊くんも好きなもの頼んでよ。」
「なあ、ミナ、これも理想の一つなんでしょ?ならやってもいいよ、なんでやらないの?やりたくないの?」
「そりゃあ、やりたいよ。でも、それを強要するのはただのわがままだから。いいの。」
孝俊くんは抹茶ケーキを頼んだ。
フォークは2つ、理想の形はそこにない。
ゆっくり食べることなんてなく、すぐに食べ終わった。
アイスコーヒーも気付けば無くなった。
外はもう完全に夜だった。
「ミナ、もう夜になった、そろそろ、行こう。」
「理想...理想の形、最後に忘れたいこと、」
「ねえ、行こ!早く!」
────孝俊くんは私の手を取って走り出した。
「ミナ、全部忘れさせてあげる、わがまま受け止めるから、理想を全部叶えるから、元気出して!」
「好き...だよ、孝俊くん。」
「ありがと」
私の最後の理想、わがままの場所は
─────イルミネーションの光の中
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