地下アイドルから声優目指しましたがオーディション落ちて異世界旅芸人一座も追放されて、魔人美少年とバディ組んでリベンジしました
第17話 貧乳のおかげで美少年の代役は務まりましたが、未だ去らぬピンチに気付いて脱出を図ります
第17話 貧乳のおかげで美少年の代役は務まりましたが、未だ去らぬピンチに気付いて脱出を図ります
こうして、私はイフリエの代わりに「呪われ御子」として舞台に立つことになった。
太陽の光の下で倒れたイフリエは、上手と下手をつなぐ宿屋の廊下で文字通り日陰の雑用係に回ったが、役目から外されたのを気にしている様子はない。
「いい天気で、舞台と稽古が続いたし……それに、女王の城との行き帰りは歩きだったから」
あの華奢な身体では無理もないが、その代役が務まる私のスリーサイズは考えたくもない。
しかし、異世界にもそういうアイドルを推すファンだって、いないわけではないのだ。
公演の日には舞台の前に陣取った若い男女から、ホーソンと対峙する私への声援が飛んだ。
「アサミ! アサミ!」
その声を受けて剣を縦横に振るうと、魔神を演じるホーソンは、普段の鈍重さからは想像もつかない軽やかさでかわす。
やがて、手に汗握る観客の前で呪われ御子が魔神を破ると、客席は熱狂の渦に包まれる。
初演は大成功だった。
だが、興奮したまま床に就いた男が、また魔神に魅入られると狼男になるおそれがある。
それを避けるために公演は昼間の1ステージに限られていたが、それでもやはり出待ちの列ができた。
その中から、聞き覚えのある声がかかる。
「たいへんな人気で結構なこと。興奮冷めやらぬ若者たちが、あちこちの酒場に集っているそうです」
お忍びで様子を見に来た女王タウゼンテだった。
その配下はすでに街のあちこちで、魔神に魅入られる者がいないか監視にあたっているのだろう。
「じゃ、また……あの夜みたいなことが?」
心配になって聞いてみたが、タウゼンテは自信たっぷりの笑顔で、きっぱりと言い切った。
「たとえそんなことになっても、魔神の名が唱えられない限りは、私の兵の力で抑えられます」
その名前を尋ねると、お忍びとは思えない威厳たっぷりの眼差しで睨みつけられた。
「誰かが唱えたら、最後です」
長いものに巻かれる主義のホーソンが、これに気付かないわけがない。
どたどたとやってくるなり、卑屈な笑いを浮かべた。
「ええ、もちろん、逃げも隠れも……」
その背後をすり抜けてきたのは、ルイレムさんだった。
「……これを」
囁きと共に握らされたものがある。
それに気付いた私は、こっそりと宿屋の中へ向かった。
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