第6話 いわゆる恋バナで異世界の美意識の多様性に配慮したせいで、エルフに男性の趣味を誤解されました

 そんなことを知るはずもないのに、この巨乳のエルフは怪訝そうな顔で尋ねてきた。

「……ああいうのが趣味?」

「……いや、ちょっとトシが離れすぎてます」

「美しくはないな」

 ルイレムさんのネタを目にするときと同じくらい、絶句するしかなかった。

 本当にどうでもいいことなのだが、聞いてみた。

「逞しいのが好きですか?」

「私なら相手を選ぶ」

「充分細いと思いますが」

 そこで、ルイレムさんは美しい眉をあからさまにひそめた。

「団長じゃないの?」

「イフリエです!」

 それが聞こえたのか、当の本人がすっ飛んできた。

「僕に何か用? アサミ!」

 黒と亜麻色の混じった長い編み込み髪を揺らしながら、細身の少年が深い緑色の瞳で見つめている。

 呼んだわけでもないので返事に困っていると、イフリエはその目をルイレムに向けた。

「早く来て! もう待てないよ、僕も団長もお客さんも!」

 ルイレムさんは音もなく、炊事場を出ていく。

 ただ、微かな声が風となって、私の耳元を撫でていった。

 考えといてね、と。

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